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学園の歪み


 権力無しに多くの生徒を誘っては断られ続けるが、評判は一切落ちない所か女子生徒にも慕われ続けるという謎のカリスマ性を持つ先輩のカーキー・ロバーツ先輩。


 怪我と見るや否や興奮して生徒を診るため一年生には苦情もあるのだが、二年生以降には「良い先生だよ。性格は困るけど」と慕われている(?)、グリーネリー先生と二大巨頭なアイボリー・アレクサンダー養護教諭。


 初日に学園付属の教会に勤めるスノーホワイト神父様に一目惚れをした、制服のスカートにスリット入れ、覗く健康的な足とその親しみやすい性格から多くの男性陣を勘違い、あるいは恋に落としているある意味魔性な同じクラスの教会関係者生徒シアン・シアーズ。


 痩身、右手に包帯を巻き、空いた時間には薬を調合したり自分で実験をしたりしては怪しげに笑うため、同級生に遠巻きに見られながらも何処かお人好しな部分もある不愛想な同じクラスのエメラルド・キャット。


 なんか土に埋まって野菜の気持ちになろうとしている(マーキュリー)組の男子(名前を聞くと野菜の名前を答えるため未だに名前を知らない)。


 マッサージ好きで俺の「筋肉の感触に惚れた」とか言って揉んで来ようとして来る(ヴィナス)組の女子同級生。


――こいつら、何処に隠れていたんだ……!?


 なんというか、「あの乙女ゲーム(カサス)でなんで言及も存在も確認されていないんだよ!」と言いたくなる様な濃い学園関係者ばかりである。……むしろ濃いからこそ出た瞬間「なんだコイツら……」ってなるから出ないようにしていたかもしれない。

 ……そこは置いておくとして。俺にとっての問題はそこではない。いや、問題というより困った事と言うべきか。


「しかしクロ様はモテモテですね。なんだか色んな方々に懐かれているじゃないですか」


 そう、今アプリコットに言われた通り、なんだか上述の奴らを含めた色々“濃い”奴らに懐かれている……というか、相手をする事が多い。

 カーキー先輩には夜を誘われるし、アイボリー先生には肉弾戦を好む生徒で擦り傷が多いためよく絡まれる。シアンには相談を良くされるし、エメラルドには他の生徒への仲介役や同行役を頼まれるし、野菜を貰って感想を聞かれたり、マッサージで揉まれたり、プラチナブロンド先輩とはロケットパンチの実現に向けワイワイやった。

 あと、「ククク」と笑う謎の生徒に亜空間に連れても行かれた。あれはなんだったのだろう。

 ……その他にも色々あるのだが、なんかこの一週間で俺の立ち位置が既に「困った奴らの緩衝材」的なポジションに収まっている気がする。正直収まりたくはないのだが今更どうする事も出来ないような気もするし、楽しいと言えば楽しいので構わないとも思う。


「クロ様の魅力が皆様に伝わっている証拠ですね!」

「ふ、ありがとうグレイ。グレイはいつも良い子だなぁ……」

「アプリコットさん、何故私めは撫でられているのでしょう?」

「させておきなさい。それも仕事です」

「はぁ、分かりました?」


 ただちょっと精神的には疲れるので、このグレイの笑顔で癒される位は良いだろう。……ああ、本当に可愛いなぁグレイ。最近実の弟のカラスバは「兄さん、もっと勉強頑張ってください」と言って遊んでくれなくなったから、弟のように可愛いグレイの存在がありがたい。というかカラスバ元気かな。実家で両親の相手をしてストレスたまってなきゃ良いが。


「ところでクロ様。これからクリームヒルトさんと約束でしたか?」

「ん? ああ、模擬戦だよ。五時間目の休み時間の後に約束をしたからな。闘技場のBで」

「なるほど、放課後の闘技場ならば我達が行っても問題無いですね」


 学園には従者制度という物が有り、生徒は従者を連れて学園に通う事が出来る(従者には従者専用の寮が存在している)のだが、生徒でない従者は立ち入りが制限されている事が多い。

 例えば学園の校舎内は朝と放課後を除けば従者は許可を取らねば立ち入り禁止だし、今言った闘技場も校舎に含まれるので従者が入る場合は事前申請&許可が必要だ。ただBの方は従者も使用できる“校舎ではない闘技場”である。

 アプリコットに聞く限りでは、仕える相手がおらず暇な従者が身体を動かすために使う事が多いとか。


「ちなみにですが、互いの主人の力関係がもろに従者にも出て、それが模擬戦という形で披露される事もありますよ」

「うわぁ、マジか……」

「??」


 グレイは理解していないようだが、まぁ……“そういう事”だよな。何処の世界にもそういった事は起きうるという事か。


――実際、(ルナ)組でも似たような事は起きているっぽいしな。


 実力が全てでクラスが決まるこの学園だと、出自を問わず成績のみで上位のクラスに入る事が出来る。ただ俺みたいなあまり権力の無い貴族や、コネもなにもない平民が下手に上位のクラスに入ると“問題”が起きやすい。表向きは平穏を装っても、いつどこで足の引っ張り合いや陰湿な行動が牙をむくかは分からないのである。

 それはあの乙女ゲーム(カサス)でも存在していて、主人公(ヒロイン)……クリームヒルトが最初に直面する学園の歪みとも言えるものであり。


「平民如きが闘技場を使わないでくれる!?」


 ……今まさに、起きている事でもある。


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