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乙女ゲームの登場キャラとは


 謎の女性であるメアリーさんの事は気になるが、今考えても仕様が無いと思い切り替える事にした。

 それよりもまずは、これからの学園生活に影響が出ないように、貴族としてこの交流会を乗り越えられるように頑張るとしよう。ついでにその最中に観客席に主人公(ヒロイン)を探せば良い。確か小柄であったと思うので見つけにくいとは思うのだが、金髪(に近い色)であったはずなので、髪の色を頼りに探せば見つけやすいはずだ。


――と、それよりも先に軽めに挨拶をしておくか。


 探すよりも前に他の新入生代表達に挨拶をするとしよう。

 ……切れたナイフのような攻略対象(ヒーロー)達ではあるし、今まで接してくる相手は権力狙いの相手ばかりで挨拶すらも嫌がるかもしれないが、しないよりはマシだと思う。挨拶は大切だからね、うん。


「クロ・ハートフィールドと言ったか」

「え。……ヴァ、ヴァーミリオン殿下!?」


 と、思っていたら向こうから話しかけて来た。しかも一番面倒――気難しそうなヴァーミリオン殿下だ。

 え、なに。俺なにかやっちゃった!? いや違う、そんなネタ系転生系主人公のような言葉を発するような事はまだしていないはずだ……!


「なにか私に御用でしょうか……?」

「先程、あの女に話しかけられていたな。なにを聞かれていた?」


 あ、俺がなにかやった訳ではなく、なにかされたから話しかけられたのか。

 ……え、だとしてもなんでだろう。あのメアリーさんとやらになにかあるのだろうか。


「以前私と彼女が会った事あるような事を言われました。しかし生憎とこちらに覚えはなく、少々困っていたのです」

「そうか」

「はい。……えっと、彼女がなにか?」


 俺が答えたは良いものの、ヴァーミリオン殿下はぶっきらぼうに「そうか」と言っただけなので聞いてみた。この程度なら別に不敬じゃない……よな?


「なにもない。ただ聞いただけだ」


 ちくしょうお前は乙女ゲームに出て来る「親しいキャラ以外にはとことん冷たい愛想もくそも無いキャラ」かなにかか。……まさにそうか。

 皆にそれなりに接しはするが、不必要には愛想を振りまかないし、自分を語るような事は親しき者以外にはしない。そんなキャラだったな。


――確か婚約者にもそんな感じだったんだよな、この王子。


 まぁ、あの悪役令嬢はそう接するのも分からないでもないような性格だったから仕様が無いのだろうが。


――そういえば、あの悪役令嬢には気を付けないとな。


 記憶の限りでは、あの悪役令嬢はとにかく酷い末路しかないのだが、性格とかは「とにかく近寄りたくない、関わりたくない」と思わせる様なものであったはずだ。彼女には関わらないように気を付けないと。


「そうですか。ではお互い新入生代表としてこの交流を頑張りましょう、ヴァーミリオン殿下」


 とりあえず今はこちらから挨拶する事無く、挨拶が済んだ事を喜ぶとしよう。なにせ一番話辛かった相手だったからな、この殿下。


「そうだな。互いの健闘を祈るよ」


 ヴァーミリオン殿下は俺の頭を下げた挨拶に対し、先程よりは愛想はあるが、相変わらず愛想の少ない様子で他の代表生が居る所へと去っていった。

 ……さて、俺も後追うとするか。そして他の人達に挨拶を――


「新入生代表側はまずは初めに、クロ・ハートフィールド学園生、前に!」


 ……ああ、うんそうだよな。

 こういった類の戦いって最後に最も優秀な者達同士の戦いを持ってくるだろうし、最初に代表としては一番格下の者を持ってくるものだよな。となると俺になる訳である。


「はい!」


 挨拶は出来なかったが、まぁこの状況なら挨拶無しで戦いの場に着いても不敬には当たらないだろうと、むしろ喜ぶべきと思う事にした。……まぁこの中で一番最初に戦う事になる緊張はあるのだが。


――さて、相手は魔法が得意な相手かな。


 俺の成績を事前に知っているのなら、相性の良い遠距離魔法が得意な生徒が相手してくるだろう。遠くから狙撃とか、大規模魔法での攻撃とかの前では俺は無力だからな!

 それならそれとして戦いようはあるのだが……ま、とりあえず相手を見てからにするか。

 出来れば攻略対象(ヒーロー)の一人であるエクル・フォーサイスでなければ良いんだが。エクルが相手だと俺はイケメンにやられるモブ雑魚キャラでしかないからな! ……自分で言っていて悲しくなってきた。


「では次に生徒会代表は――」


 さて、悲しさは置いておくとして、一体誰が相手だろうか。

 あの乙女ゲーム(カサス)で存在は確認されているけど、影が薄くて名前も出ていない生徒会長(現在副会長)とかだろうか。

 まぁ、多分あの乙女ゲーム(カサス)には出て来ないようなキャラだろうな――


「――プラチナブロンド・フォン・アンガーミュラー学園生、前へ!」

「コヒュー、シュコー……フフ、この古代義出の義手を持つ私に勝てるかな、新入生!」


 ……なんか、出た。

 前世で言う所の義手……というよりは未来技術の機械腕のような両腕を持ち、口元が同じく機械のマスクで覆われているような、貴族用の制服に身を纏った男性生徒。なんかマスクから漏れ出る声は「改造されましたぜ!」的な呼吸をしている。

 右腕にはこれはまた異形のでっかい刀を持っていて、乙女ゲームというよりは男性向けアクションRPGに出て来そうだと言わざるを得ない。なんか精神を改造されてヒャッハーとか言い出そうな見た目である。


「では、護身符を持ち、所定の場所につけ!」


 い、いや、落ち着け。

 彼も伝統あるアゼリア学園の学園生、しかも生徒会メンバーだ。きっと最初の印象が驚くだけで、きっと心優しき善良な生徒のはずで……


「フ、フゥーハハハ! さぁ、戦いに飢えているだろう【星屑の血刀】……今から一緒に相手を蹂躙しような……!」


 怖ぇよちくしょう、なんで俺の相手がこんなんなんだよ! もっと乙女ゲーム的なキャラを出してくれよ! いや、乙女ゲームはそんなに知らんけども!


プラチナブロンド・フォン・アンガーミュラー

両腕が古代技術で出来た義手をしている男子生徒。

口元も機械のようなマスクに覆われており、改造されて戦闘兵にされたかのような雰囲気であるが、後輩にも慕われている笑顔が素敵な優しき生徒。ただ戦闘になると命を刈り取るような雰囲気になるだけである。

ちなみに家名が同じだったりするが、ロボとは関係無い。


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