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グレイの生徒会執事記_8(:灰)


View.グレイ



 私の力不足によりバレてしまったヴァーミリオン様達の今日の仕事。

 そしてバレてしまった事によってメアリー様が何故か怖いのは謎ではあるのだが、このままいけばメアリー様とヴァーミリオン様達の間で軋轢が生まれそうな予感がする。私の力不足が原因ならば、今からでもフォローか軌道修正するのが今の私の仕事であると直感した。

 生徒会の平和のためにも、どうにかしてメアリー様の怖さを鎮めなければ!


「メアリー様、バレてしまった以上は正直に言いますが、ヴァーミリオン様達は好いているメアリー様に対して自身を高めるために娼館街へと男になりに行ったのです。陰で力を蓄え女性に良い格好を見せたいと言うのは男の醍醐味と聞きます」


 多くの女性と逢瀬を繰り返すカーキー様曰く、「好きな女性の前では、良い男ってのは弱さを見せず格好つけるものなんだぜハッハー!」との事だ。

 陰で努力をして、好きな女性の前では強く振舞う。私もアプリコット様の前ではそう思う時もあるので、その言葉には深く納得したものだ。


「メアリー様。ヴァーミリオン様達のプライドを守るためにも、敢えて気づかぬふりをして、あまり触れないでいてくださるとありがたいのです……!」


 今回のヴァーミリオン様達は男になりに行った……つまりメアリー様の居ない所で男を高めようと女性の扱いを上手くなろうと女性と触れ合いに行ったのだ。まさに陰で経験値を積みに行ったのだ。同じ男として、その醍醐味を守らなくてはいけない!


「ええと、ごめんなさい。別にグレイ君が心配するような事はありませんから、大丈夫ですよ。そもそもグレイ君は“男になりに”に関して勘違いをしていると思います」

「え、そうなのですか?」

「はい、恐らくは――」


 メアリー様から話を聞き、私が何故「男になりに」と思ったかを説明し、メアリー様は納得したような表情になると説明を始めた。

 どうやら娼館街へと男になりに行くというのは、私が昔貧民街や前領主に居た時に見たような経験をした男性を指すらしく、あまり吹聴すべきものではないとの事だ。……むぅ、そうなると私が男になりにと行った時のヴァーミリオン様達の反応も頷けるというものだ。

 あれ、そうなると……


「女性と遊びに行った訳で無いと分かっているのに、メアリー様は何故怖いオーラを出されていたのです? 他の女性に目を向けようとしているからと嫉妬した訳ではないのに……?」

「怖いオーラ……」


 メアリー様はヴァーミリオン様があくまで仕事で行ったのは知っているだろうし、彼は自制心の強く、妄りに女性達と関係を持とうとする御方でない事は知っているはずだ。なのに何故あのような反応を示したのだろう?


「別に嫉妬している訳では無いんですよ。ヴァーミリオン君が仕事の内容を言わなかったのは、やましい事を隠すためでは無いと理解しています」

「では何故?」

「先程の怖いオーラ……笑いは、ちょっと揶揄ってやろうと思っただけです」

「それはもしや……相手が悪い事をした訳ではないけど、ちょっと後ろめたいと感じていると分かった上で、それを揶揄って相手の反応を楽しみたい感じなのでしょうか」

「そんな感じですが……よく分かりましたね?」

「母上が父上によくやられてましたので。好きな相手の反応を楽しむ、イタズラ心に溢れた表情で」

「ふふ、なるほど。ヴァイオレットはそういう所がありますからね」


 それなら納得できるというものだ。あれは メアリー様なりのイタズラ心に溢れた笑顔だったわけだ。確かに思い返せば母上と似たような笑みだったな、と思いもする。

 もしや女性は好きな男性に対してイタズラ心を発揮させるものなのだろうか。……困ったな。アプリコット様に今のようなメアリー様のような感じで迫られたらどう反応すべきか分からなくなってしまう。今からでも対策を立てるべきなのだろうか。そうなると父上かこれから揶揄われるだろうヴァーミリオンに対策を話し合うべきかもしれない。


「……って、あれ? グレイ君、先程からの会話なのですが」

「はい、なんでしょう?」


 と、私がどうしようかと悩んでいると、紅茶に口をつけようとしたメアリー様の動作が止まり、私に疑問顔で質問をして来た。


「もしかしてですけど、“私がヴァーミリオン君を好き”という前提で話していませんか?」

「え、それはそうですよ?」


 だから私は疑問に思ったのだ。

 メアリー様が好きなヴァーミリオン様が、娼館街へと他の女性と関係を持とうとしに行ったのではなく、仕事で向かっただけだと分かっているのに何故怖いオーラを放っていたのか、と。

 初めは好きな異性がなにかを隠そうとしている事に怒っていると思った。だがそれは違っていた。

 そして好きな異性が自分ではない別の異性になびこうとしていると考えたのならばあの怖さも嫉妬という事で納得するのだが、それも違ったので何故かと思ったのである。

 とりあえず、どちらにしろ……


「メアリー様はヴァーミリオン様が大好きなのですよね?」


 と、いうのは当たり前の事であると思うのだが。


「………………ふふふ」


 え、なんだろうその笑いは。なんだか先程とは違う意味で怖い。


「グレイ君、一つ教えておきましょう」

「は、はい、なんでしょうか?」

「人というのは……隠していると思っていた真実を突きつけられると、時に暴れる生き物なのですよ」

「……なるほど」


 何故かは分からないが、メアリー様の言葉には強制的にでも納得させるようななにかがあった。

 ……この件についてはあまり触れないようにしよう。


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