グレイの生徒会執事記_4(:灰)
View.グレイ
「あれ、今日はグレイだけで――なにかあったのかな?」
「あ、ティー君。少々クリームヒルトちゃんとフューシャちゃんと私めでくんずほぐれつをしていた所、机の上にあったカップが爆発四散し、その対応をしたら椅子が粉々に消失しただけですよ」
「うん、聞いても分からないな。ともかくそれで片づけをしている感じか。手伝うよ」
私は先程起きたちょっとした事後の後処理をしていると、二人きりの時などはフランクに話すようになったティー君が生徒会室にやってきた。
最初は何故か座る部分だけが砂となって消失した椅子の片づけをしている事に疑問に思ったようだが、特に聞いても分からないと悟ったのか、気持ちを切り替えて片付けを手伝おうと袖を捲くろうとしていた。
相変わらず王子という立場であるにも関わらず、積極的に色んな手伝いを進んでするので「王子の中で一番親しみやすい」という評判の御方である。行動に迷いもないし、恩着せがましく感じさせない所は素直に尊敬出来る。
「ありがとうございます。ですがもう終わりなので平気ですよ。……あ、疲れを癒すために紅茶を淹れるつもりなのですが、ティー君も要りますか?」
「お、それは丁度良かった。是非貰おうか」
とはいえ、その申し出も今の私には不要だ。そもそも私は被害が無かったのですぐに終わる生徒会室の掃除をしていただけであるので、壊れた物を袋に入れてすぐに捨てられるようにした後は精神を安定させるために紅茶を淹れるだけなのである。
「しかし“丁度良かった”とは、ティー君も疲れていた感じですか?」
「そうだね。ほら、居たでしょあの思春期研究者の女性」
「あの思春期研究者の女性の……対応ですか」
「うん、そんな感じ。……油断すると怠けようとするから、色々と大変で……」
おお、普段は明るく爽やかなティー君が珍しく精神的に疲れて落ち込んでいる。そしてその所作が何処か先程のヴァーミリオン様を彷彿とさせる辺り、半分ではあるがやはり血の繋がった兄弟といったところか。
「あのヒト、優秀なのは確かなんだよ。彼女の古代技術に対する知識と知恵は相当なものだし、彼女が居ればあのワクワクする古代技術を再現できるかもしれない。となると私も出来れば国に協力して貰って罪を帳消しにしたいところなんだけど……」
「それを相手も理解しているからこそ、怠惰な生活を要求してくるし、手続きをティー君に任せようとして来る、という事ですか」
「うん、そういう事――って、よく分かったね」
「ティー君のお疲れの御様子を見れば分かりますよ。ヴァーミリオン様と同じように無茶ぶりされている表情だ、と分かるので、大体想像つきます」
「ヴァーミリオン兄様……ああ、あの御方か……うん、あの御方の相手と比べるとマシ……いや、どっちもヤだな……」
おお、大抵の相手には爽やかに良い所を探して褒める事を欠かさないティー様が珍しく嫌そうな表情をされている。そんなにもナデシコ様や思春期の研究者女性の相手が嫌なのか。これはうんと美味しい紅茶を淹れて少しでも癒されてもらうとしよう。
「あ、それとグレイ。しばらく生徒会室に居る?」
「はい、その予定ですが」
「じゃあ悪いんだけど、紅茶を飲んだら私はすぐに行かなきゃならないから、この資料をアッシュさんに――」
「それならばこちらの資料をアッシュ様より預かっています。中にある資料を付け加えれば学園長の許可証として認められるそうです」
「あ、そうなのか。ありがとう」
「それとこちらの資料なのですが、訂正の場所があるらしいので注意が必要とのことで――」
お湯が沸くまでの間、私はアッシュ様に頼まれた事をティー君に伝え情報共有をしておく。流石に紅茶を淹れたり掃除をしているだけでは生徒会メンバーとしてはよくないので、こちらの業務もキチンとしないといけない。
「――なるほど。ありがとうグレイ、助かったよ」
「いえいえ、お役に立ててなによりです。では紅茶を淹れますね」
「それもありがとう。……しかし、グレイはなんと言うか……」
「? なにか?」
「……いや、私より三歳も下なのに対等に仕事が出来て凄いな、っと思っただけ。流石はクロさんの所で執事をやっていただけあるよ」
「執事というよりは秘書ですがね」
まぁ、執事か秘書かは微妙なラインではあるのだが……執事のようだと言われても不思議では無いと思っている。事実今の私はバーント様とアンバー様を参考に動いている所がある。
「って、あれ。カップ多くない? 4つ……?」
「え? ああ、これは――」
私の用意したカップの数に疑問を抱くティー君。
そういえばティー君が来てからまだ彼女達は――
「おーい、グレイ君。悪いんだけどなにか羽織る物を――」
と、私が説明をしようとした所で。
生徒会室から繋がる隣の資料室の扉から、クリームヒルトちゃんが扉を開けて出て来た。
――上半身が、下着だけの状態で。
「――ティー、君」
「――クリームヒルト、さん」
先程のトラブルの際に服が破れたため、フューシャちゃんと共にどうにかして資料室で縫おうとしていたのだが、どうやら上手くいかなかったようである。なにせ器用に繊維がギザギザに解れていましたからね。アレは父上でも直せるか微妙なラインで――おや、クリームヒルトちゃんとティー君の顔が赤い。クリームヒルトちゃんの方は今までにないくらい恥ずかしそうに、少女のような表情で――
「き、」
「ごめんなさい、見てませんから!」
「――! あ、あはは、それって見て無いと言えない言葉だね――ともかく失礼!!」
そしてクリームヒルトちゃんは勢いよく扉を閉めた。
……よく分からないが、やはり私が上着を貸したほうが良かったかもしれない。そう思う私なのであった。




