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アングラーズ_3


「はむ……はむ……あつ、っ」

「大丈夫ですかヴァイオレッ――熱っ!」

「もぐ……私は大丈夫だが、クロ殿こそ大丈夫か? はい、水だ」

「ありがひょうごひゃいます……ぷはっ。ふぅ」

「ふふ、あまり食べ急がないように……と言いたいが、私も気持ちは分かるよ」

「この熱さは熱くてもがっつきたいですよね。なんというか、経験と味を同時に食べている感じが凄くします」

「む、その表現は良いな。確かにそんな感じだ」


 魚の下処理を簡単に終わらせ、串をさして火で焼く。焼き終わってそのまま食べれば熱さで火傷をしてもおかしくはないと分かってはいるのだが、分かっていても止められない魅力がある。

 得難い経験がある。とでも言うのだろうか。それほどまでに俺とヴァイオレットさんで釣った魚を焼いて食べると言う行為は美味しく、そして楽しい物であった。

 あとはむはむしているヴァイオレットさん可愛い。俺を萌で殺すレベルに可愛いくて困る。いや、困らない。


「しかし、小骨ならそのまま食べられるほどなんだな」

「種類にもよりますが、気にならない程行けますね」

「だが流石に内臓は苦いな……」

「ですね。お酒のつまみには良さそうな感じはしますが、ちょっと“うぇっ”ってなります。食べますけど」

「ふふ、うぇっ、か。可愛い表現をするな、クロ殿は」

「む」


 無意識に表現してしまったが、可愛いと言われるのはちょっと複雑である。この場合の可愛いって俺が先程思った可愛いとは違う、子供っぽいと言われているような感じの可愛いだからな。

 ……まぁそれでヴァイオレットさんが笑ってくれるならそれでも良いか。可愛い子供のようになる男を目指してやる! ……それは流石になんか違うか。


「しかし、ここに川があるのは知っていたし来た事もあったが、こんなに魚が釣れるモノだったんだな。皆も調子よく釣っている」

「まぁ一部釣りなのかどうか分からない奴らも居ますがね」


 教会組と子供組とかはまだマトモに釣りをしている。ロボも……一応釣竿で釣りをしているのでマトモではあると思う。どっから出してんだっていう疑問はあるが。

 クチナシ義姉さんは深い所に潜って手づかみで。

 ブルストロード兄妹はなんかよく分からん方法で魚を察知し捕獲している。

 オーキッドは釣竿で釣ってはいるのだが……餌に喰いついた瞬間、餌の場所が「ブゥン!」と空間が歪んだ後、何故か次の瞬間にはボックスの中に魚が入っている(そしてウツブシさんが生で食べている)。

 シュバルツさんは己が美しさで魚を惹きつけ捕獲している。……比喩ではない。本当に何故か魚が惹きつけられているのである。

 トウメイさんは川に入ると周囲の水が弾かれるので、その要領で魚を端に追いよせて行きそのまま陸に打ち上げさせる。結構エグイ。なお、本人もエグイと思ったのか今は周囲の釣りを見て楽しんでいる。

 肉屋夫婦は……うん、あの夫婦釣れないから飽きて他の連中が釣った魚を捌く事にシフトしたようである。主に捌くのは大工集団が上空から襲来した魚を迎撃……釣ったやつのようである。


「時に今更ですけど、空からやって来る魚の集団を釣るってなんなんでしょう」

「もうそういう物として受け入れるしかないと思うぞクロ殿」

「理解するのをやめたら負けだと思うんですが」

「理解するのをやめるんじゃない。受け入れたほうが楽になるという話だ」

「それってようするに、」

「魚は飛ぶものだし、鳥は泳ぐものかもしれない。常識にとらわれず今あるものを受け入れる事が大切だぞ」

「なるほど、勉強になります」


 ようするに「目の前で起きているんだからそれを否定するな!」という事だろう。俺のような頭の良くない男にはそれで充分かもしれない。多分説明されても分からないだろうし。

 それより俺は焼いて塩を振っただけの魚が美味しいと言う事さえ分かれば良い。おいしい。


「もぐ、もぐ……ゴクッっと。では昼食も終わりましたし、釣りを再開しますかヴァイオレットさん?」

「ふむ、それも良いが、その前に他の者達の釣りを間近で見て行かないか?」

「それは構いませんが……急にどうされたのです?」

「午後からの釣りをもっと楽しむために多くの知識を手に入れ――アングラーとしての一歩を踏み入れるためだ」

「ふ、なるほど。それならばやるしかないですね。アングラーになるためにも、多くの知識を得に行くとしましょうか!」

「うむ、では行くぞクロ殿! ……あ、その前に火の後始末をキチンとしてからだな」

「ですね」


 一部の釣りの方法はともかく、シアンとかマゼンタさんとか調子よく釣っているし、神父様も意外と言ってはなんだが結構釣り上げている。あの辺りの話を聞きに行き、午後からの夫婦での釣りの技術の向上を目指し、アングラーとして高みを目指すとしよう!!


「ねぇ、エメラルドお姉ちゃん」

「ブラウン。言っておくが、あの夫婦が何故あんなにテンション高いかは知らんし、アングラーとして高みを目指しているかなぞさらに分からん」

「だよねー。多分一過性(いっかせー)のものだろうけどねー」

「だろうな。……それとヴァイス、遠慮せずに魚の血を啜りたかったら啜れば良いぞ?」

「な、なんの事かな? 僕は別に産卵前の魚や交わう前の魚が美味しそうと思っているだけだよ?」

「……お前、魚にまで処女性や童貞性を求めてるのか……?」

「ち、違うから!」


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