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アングラーズ_1


 今日はとても良い天気だった。


 日はさしているが暑くもないし、直接見なければ眩しくも無い。

 吹く風は肌を撫でるように優しくて、枝が揺れて葉っぱ同士が触れ合う音が心地良い。

 雲は少なく、何処までも続くような青空は時間を忘れて見ていたくなるほどに澄んでいる。

 昨日の夜のお酒と睡眠不足が原因で頭がちょっとだけ痛かったのだが、このような天気の良い日に外にいると、不摂生による頭痛など忘れてしまうほどだ。

 そんな天気の良い日に、俺は外で深呼吸をしつつ――


「ヒャッハー、魚だ魚だ! 魚屋なんぞに負けない魚の肉裁きを見せてやるぜ!」

「まずは魚を釣ってから捌く事を考えましょうアナタ」

「おう、そうだな妻よ。だがその刃物はなんだ?」

「捌くための包丁百種ですわアナタ! これでどんな魚も捌け切れますわよ!」

「流石は俺の妻だぜ!」


「ロボ嬢、聞きたいのだが、その状態で魚は取れるのか?」

「心配は御無用デスクチナシ君、ちゃんと取れマスヨ。――我が秘密機能ソノ三十六、必殺の――すごい釣竿!」

「おお、普通のすごい釣竿が指から出て来た!?」

「これぞワタシの隠された秘密機能デス!」

「既に隠されてもないし、秘密でも無いが凄いな!」

「エヘン! ところで、クチナシ君は釣竿がありマセンガ、どうやって捕るのデス?」

「うん? そりゃ潜って手づかみだが」

「手づかみ!?」


「音よ――俺に魚の居場所を教えてくれ――そこだぁ!!」

「香よ――私に魚の未来の挙動を教えて――そこだぁ!!」

「すげぇあの兄妹、なんかよく分からない方法で魚を銛で捕獲してやがる!」


「美しき全裸女よ。どちらが美しく魚を捕るか勝負しないか?」

「美しさは必要なのかな、それ」

「? むしろ何故不必要だと思うのかな?」

「ゴメン、その反応は予想外だった。で、なんで勝負をするの?」

「決まっている――美による、美のためだ」

「ゴメンよく分からない」


「親方、空から魚の軍団が!」

「よし、全て釣り上げて皆に振舞うぞ!」

『イエッサー!』


「ハッハーアイボリー、オーキッド。俺と賭けをしないか!」

「賭けだと? なにをすると言うんだ」

「おうとも、一番多く釣れた者が他の二名になにか命令をするというのはどうなんだぜ!」

「ククク、私は構わないが、常識の範囲内の命令で頼むよ」

「おうさ。俺が一位だったらお前達が今夜の相手をするか、良い子を紹介してもらうんだぜ!」

「よし、では俺が勝ったらお前らの特異体質を徹底的に調べさせろ。服を着る事も許さん」

「ククク……どっちも身の危険を感じるから勝たねばならないね……」

「オーキッドは勝ったらなにを命令するんだぜ?」

「私かい? 黒魔術の触媒に成人男性の○○と〇○○が必要だから、君達ので賄って貰おうかな」

『よし、負けられなくなってしまったな!』


「ねぇ神父君、シアン先輩。私達も賭けしない?」

「クリア教の教会関係者として賭けは推奨されないが……まぁ金銭が関与しない奴くらいなら良いだろうな」

「じゃあ――」

「性的な事も無しだよ、マーちゃん」

「やだ! 性的な事が良い!」

「まさかの強行!?」

「私が勝ったら神父君とシアン先輩にはこの川に一緒に入って貰って、そしてそのまま手を繋いで教会まで帰って貰う事を命令するよ!」

「!? ど、どういう意味だマゼンタ!?」

「下着が無い状態の私達が水にびしょ濡れというシチュがもうエッチィで美味しいんだよ! 私は二人には手を出せないから、二人をエッチィシチュにする事で満足するつもりだよ!」

「ど、どうするシアン。マゼンタがよく分からない方向に暴走し(めざめ)ているぞ!」

「じゃあ私が勝ったら神父様をお姫様抱っこして教会に帰るように命令します!」

「シアン!?」

「マーちゃんはこうなったらもう聞きません。だったら私達が勝って命令すれば万事解決ですよ!」

「そ、そうか、なるほど――待て、だとしてもシアンの命令はおかしくないか!?」

『では、勝負開始!』

「聞け、お前達!」


「親方、空から先程の逃した魚の軍団がリベンジに!」

「ははは、そちらから来るのなら都合がいい。全部撃ち落とす――もとい、釣り上げるぞ!」

『イエッサー!』


 ――別の頭痛の種から、目を逸らしていた。

 俺達は今、ある事がキッカケでシキからちょっと離れた場所にて釣りをしている訳であるのだが、どいつもこいつも好き勝手に釣りをしてるし、なんだかよく分からない賭けだったり、何故かモンスターではないのに空から来る魚を釣り上げていたり(?)、ヒャッハーしたりととにかく忙しい。


「わ、わ!? これ、引いてるの? 引いちゃってるの、それともまた根掛かり!?」

「落ち着いてヴァイスお兄ちゃんー。多分獲物だよー。エメラルドお姉ちゃんー」

「よし、私が網を用意するからブラウンは引っ張ってやってくれ」

「りょうかいー。フォーンお姉ちゃんもひっぱろ?」

「は、はい。ええと、つ、釣竿を持って一緒に引っ張れば――ええと上に引くのかな、横に引くのかな!?」

「おちついてー」


 せめてあそこにいる初心者組くらい微笑ましかったら良いのだが、どいつもこいつも……うん、皆自分らしく魚釣りが出来ていて偉いな! 領主としてとても嬉しいぞ!


「クロ殿、クロ殿ー。変な現実逃避をしていないで、戻って来てくれー」

「……ですね」


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