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心の栄養を摂りに行く一日_7(:透明)


「~♪」

「よく分からないが機嫌が良いなトウメイ。先程見たという新鮮な恋力とやらがそんなに良かったのか?」

「それもあるけど、別の気分の良い事を聞けたからね。心が潤ったという感じ」

「? そうか。だが狩りに行かなくても良いのか? まぁ夕食を一緒に取るというのならば話は別だが……」

「折角の兄弟の会話に入る気は無いよ。今一緒に屋敷に向かっているのは……女の子を夜道で一人で歩かせたら駄目だから同伴しているんだよ」

「夜と言うほどでもないし、自衛手段くらいは持っているのだが……」

「それでも、だよ。こうして全裸マントの女が隣に居れば美少女ヴァイオレットが夜道でも安心!」

「……そうだな。ありがとう」

「今“それは隣に居る奴が一番危ういのではないか”と思ったね」

「気のせいだ。その場合は私ではなくトウメイに不審者が近寄るのではないか、と思っただけだ」

「私に?」

「金色に近い髪に惹き込まれる透明な瞳。そしてダメージが一切無い白く綺麗な肌に整ったスタイル。不審者が寄る可能性があるとしたらトウメイのほうだろうな」

「そっかー私が襲われるかー。じゃあ私を一人にしないために貴女の屋敷まで護衛よろしく!」

「ふふ、了解だ。騎士(ナイト)としてその護衛を引き受けよう」

「ふふふ、くるしゅうない。……でも、まぁ私が襲われる事はないだろうけどね」

「? 何故だ。世の男性は放っておくまい」

「いや確かに私は美しい自信はあるよ。この美しき身体を晒すのは多くの男性女性問わずを魅了してやまないという自信がね」

「そ、そうか。ではなぜだ?」

「まず一つは、昔から私は(こう)だったのに、昔は“そのような劣情を抱けない”って裸体を見られながら言われたの。もうそりゃ年頃の健康的な男の子相手でもなかったの。ピクリとも反応していなかったわ!」

「それはいわゆる……整い過ぎて芸術品を見ているような感覚になる、という感じだろうか。シュバルツのような感じだ」

「そうかもね。あと襲われたとしても、襲われるのが完遂しないんじゃないかなと思う事が一つあってね」

「? それは……?」

「……私の身体さ、あらゆるものを弾いたり無効化(キャンセル)出来るのは知っているよね」

「ああ、オンオフが出来ないからそれで服も着れなくて――あ」

「そう、私を襲おうとした相手が、私に○○○で○○○をしようとした瞬間……下手したらソレが“パァン!”ってはじけ飛びそうな感じがするの」

「……はじけたとしても自業自得と言えるが、それはなんと言うか……」

「こっちは一切悪くなくても、嫌じゃないそれ。いや、試した事無いから本当になるか分からないよ。分からないんだけど、試す訳にもいかないし、実際に試したり襲われたりした所で……その仮定が立証されたらなんというか……ふっ。仮に私に愛する男が出来たとしても、好きな相手の大切な箇所を私は破壊してしまうぜ……」

「……まぁなんと言うか……一緒にオフにする方法を探そう。私で出来る事があれば協力するからな」

「ありがとう。そうしたら一緒に服を買いに行ってくれる?」

「もちろん行くぞ。楽しみにしている」

「うん、私も楽しみにしてる! ……ま、という訳で私自身は恋力を得る事が出来ない訳なんだよ。だからその分相手に求める訳。そして心を潤わせる!」

「? 何故トウメイは出来ないんだ?」

「? 今言ったでしょ。仮に恋をして……愛になったとしても、愛を紡ぎ合う時に相手を受け入れられない身体だからだよ。ヴァイオレットだってクロ君のクロ君を破壊した嫌でしょ?」

「クロ殿のクロ殿……? それはよく分からないが、別にそれが恋をしない理由にはなるまい」

「え?」

「トウメイの言う“その行為”自体は一種の恋の先にあるモノかもしれないが、それが全てではないだろう。トウメイの言う恋力というのは、最終的にそれに繋がる物しか存在しないのか?」

「え。…………え、違うの?」

「恋も色々ある様に、愛の結末も色々あるというだけだし、恋だけで終わる事が全てでもあるまい。自分には駄目だと諦めるのは早すぎると思うぞ?」

「…………」

「と、すまないな。トウメイの事情もあるのに説教をしてしまった」

「ううん、別に構わないよ。むしろ新しい価値観を知れてありがたいくらい」

「そうか? なら良かったが……説教をせぬよう気を付けよう」

「構わないって。…………」

「どうした、トウメイ。私の顔をジッと見て」

「別にー? ただヴァイオレットは色々と私に面白い価値観を教えてくれるなぁ、って思っただけ」

「そうなのか?」

「そうだよ。クリームヒルトに教えて貰った言葉風に言うと――おもしれ―女!」

「よく分からんがその評し方はやめてくれ」

「そう? ……ふふ、ヴァイオレット」

「なんだ?」

「ちょっと挑戦する気になったから、私をその気にさせた責任はとってね?」

「??」


備考 クリアにとっての恋や愛の価値観

恋には色々あるとは知っているのだが、死傷率が今より高く、寿命も短いクリアの時代だと最終的には子を成す事が好きな相手との愛の形となっていたため、若干現代と価値観がズレている。

ようするに多くの恋の果てにあるものは、どれであろうと子を成すような愛であると思っている。ので、愛に至れない自分では恋をする資格が無いと考えている。


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