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心の栄養を摂りに行く一日_2(:透明)


View.クリア



――相変わらず美味しかったなぁ。……あれが生地の声に嬌声を香りとして感じた結果か……


 作る工程はともかく、相変わらずアンバーの作るパンは美味しい代物であった。

 サクッとした表面に、柔らかくモチっとした生地。バターを塗りこめば生地に吸い込まれ、生地とバターが互いを高めあう絶妙なハーモニー。

 私の時代と比べると食の方面で明確な発展が見られ、あまり他の食を経験していない私であるが、このパンは発展の中でもトップクラスに位置する代物であると理解できる代物である。……それだけに作る工程を知ってしまったので複雑な気分ではある。


――ま、見えない部分なんてそんなものなんだろうけど。


 とはいえ、別にそう珍しい事でも無いし非難する事でも無い。

 私が表では人々を安息や安心を与えるために清らかに振舞ってはいたが、戦いの場では敵と見做した相手を殺しきり禍根を残さぬように殺戮しきったように、見えない所でなにが起きていようと結果を享受する相手が気にする必要は無い事だ。過程が結果を将来的に害する事が無い限り、感謝はあっても非難をするのはお門違いという物であろう。むしろこの場合は性癖(とくぎ)を活かして美味しいパンを作れて凄いという物である。


「さぁて、何処かに良い恋力はないものかなぁー、っと」


 さて、朝のごはんもしっかり食べ、普段やっているお仕事……つまり、領主の仕事のお手伝いとか、教会の手伝い(大抵遠慮される)とか、冒険者としての仕事もとかも特にない。自由気ままに、戦いという私のアイデンティティからも離れ、恋力を探したりシキの領民と交流を深めに行くとしよう。


「だーれか恋力をー発していないかなーっと」


 まずは私が誰か恋力を発していないかと、姿を消しつつ上空からシキを見渡す。とはいえ、朝から恋力を発揮する人達はそう簡単に見つからないだろう――


「親父、足がそんなに強くないんだから無理をするな。薬草採りくらい私に出来るから安心しろ」

「ああ、それは分かるけどその手に持っているものはなにかなエメラルド」

「? 親父なら分かるだろう。毒草だ」

「ああ、分かっているから何故持っているか聞いている」

「食べるために――親父、足が悪いんだから無理をするな!」

「ああ、だったら無理をさせる様な行動をさせないで欲しい」


「今日は良い天気だ、そう思わないか妻よ」

「ええ、陽気でとても気持ちの良い日よりですね」

「こんな日は良い殺し愛が出来そうだな!」

「ええ、そうですね貴方! ……ですがその前に、今日のご飯の分の狩りをしておきましょうか」

「そうだな。食べたら存分に(あい)し合おうな!」

「ええ、気の行くまま(ころ)し合いましょう!」


「解体、良いよね」

「良い……」


「偶にさ、なにやってんだろう俺、って冷静になる時無いか?」

「偶にかよ、常になっとけよ。冷静になりつつそう思いながらも貫くから良いんだろう?」

「なるほど、そうか……じゃあ俺は冷静にマッサージへの愛を貫くとするよ。マッサージの感触最高だぜ」

「おう、その調子だ! ……だがいくら同性だからって女性の身体を堪能しまくるのはよせよ?」

「俺の堪能はイヤらしい意味じゃ無いから大丈夫だ」

「そういう問題じゃねぇんだよ」


「gob、Gob?」

「大丈夫ですよ。確かにお腹は重いですけど、貴方との愛があれば問題無いのです!」

「GOB……Gob!」

「朝からそんな事言うなんて……アップルグリーンは私を更に惚れさせてどうするんですか。ああ、もう大好きです!」


 ……うん、シキを甘く見ていた。

 朝とか深夜とか関係無い。シキは二十四時間変わらずシキという土地なのだと改めて認識した。自由に生きているようでなによりである。とはいえ、あの戦いに明け暮れた日々の結果として人々がこのように自由に振舞える事になったと言うならば、良い事なのかもしれないけど。


「相変わらず元気だね、皆は――お、あれは例の旅の一座……ではなくって、クロ君達のお姉さん達かな」


 私がシキの相変わらずさにほのぼのとしつつも、再び誰か恋力を発していないかと上空からシキを見渡しているとシキに近付く馬車の一団が見えた。初めは前々から聞いていた旅の一座かと思ったが、一座にしては規模が小さすぎるし、商人の類にしては妙な“気”を放っているように見える。


「……これは、また随分と困ったちゃんが来たみたいだ」


 そして馬車の中から溢れる、妙な気配は只者ではないという予感がヒシヒシと伝わって来る。……一人は前見た夢魔族の末裔の子だろうけど、もう一人は今まで私が相対してきた誰よりも死の特性を持っているように思える。


「さて、恋力を堪能する前に、彼女について警戒した方が良いかな?」


 そう思いつつ、私は彼女について観察する事にした。







「な、なんだこれは……下着でありパズル仕掛け、だと!? おもしろい、これを買わせて頂こう!」

「え、買うのですかクチナシ様!?」

「もちろんだ。性癖が暴走しているこのデザインは良いモノだぞ。フォーンもこの紐を解くと逆に脱げなくなるショーツはどうだ!」

「け、結構です」

「…………」


 そして観察の結果。

 私はシキに居るとテンションが高くなるナニカがあって、それを調べた方が良いのではないかと思うのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] とある料理漫画で鳥皮をパリパリに焼きながらもっと…もっと悲鳴を聞かせろ…と言っている人もいましたので割とあり得ますね!
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