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恋力_5(:純白)


View.ヴァイス



 恋のような愛のような、深いような浅いようなキスの話を一通り聞き終わった後僕は教会の前にカーキーさんと座りながら話し込んでいた。


「やっぱりこれは、ヒトによって正解がある、なんてありきたりな答えが正解でしょうか」

「ハッハー、多くの答えに当てはまるからありきたりになるもんだからな」


 いつの間にかカーキーさんが買っていた飲み物を飲みつつ、そんな当たり障りのない答えを得たという会話をする。

 とはいえ、当たり障りのないからといって無駄だったという訳では無い。今まで「こういう御方だ」と思っていたヒトの知らなかった一面を知る事も出来たし、僕とは違う価値観を知る事も出来た。

 なにも知らずにこの結論を得ていれば、この恋話巡回前のままの煮え切らない自分であっただろう。だが知るという有意義な時間を過ごしてからのこの結論には、前とは違う価値があると僕は思う。


――とはいえ、たった一日。しかも時間的にはそんなにないけどね。


 ……まぁ聞いたと言ってもほんの少しの時間だけだ。そんなんで答えを得た気になっていては色んなヒトに笑われてしまうだろうが、それでも今までの僕よりはマシなのだと思う。


「というより、シキに来る前のここ数年より、今日一日の話を聞いて得た経験の方が多い気がします」


 なにせシキに来る前は周囲も避けていたし、僕も避けていたのでほとんどヒトと話す機会が無かった。今日一日で得た話はシキに来る前の数年分はあるのではなかろうか。そう思う程なので、前の僕よりは遥かにマシなのである。……自分で言っておいて、情けないなぁ、僕。


「ハッハー、それは良かった。そしてこれからもっと多くの経験を得られるなんて幸せ者だな、ヴァイス!」

「はい、そうですね」


 そしてこのような経験を得られたのもカーキーさんのお陰であろう。

 会話を斬り込み、盛り上げ、大事な所はキチンと僕に質問をさせて答えを聞かせるという気遣いを見せてくれたから短い時間で多くの話を聞く事が出来たのだ。本当に彼には感謝しないとね。

 お礼になにかを返したいけど、言った所で「抱かせろ!」というように返されると思う。多分本気半分、「気にしなくて良いぜ!」という気遣い半分の返答があるのが目に見える。


「……それにしても。シキに来てから色んなヒトにお世話になりっぱなしです」

「ほう、そうなのか?」

「ええ。クロさん、シアンお姉ちゃん、スノーホワイト神父様、エメラルドちゃんにブラウン君にロボちゃんに、アイボリーさんに、そして今まさにお世話になっているカーキーさん。そして……」


 そして……マゼンタちゃん。

 様々な時と場所で僕はお世話になっている。

 誰も僕の外見で差別する事なく、受け入れてくれている。

 そして恵まれた環境だからこそ――


「色んなヒトに恵まれて、こんなに幸せだから、恋とかキスとかに迷えるのかもしれませんね」


 今までの僕だったら“そんな事”と切り捨てたか、考える余裕も無かったのに今こうして迷えるのは、僕が恵まれて幸せだからこそなのだろう。

 ならばそんな事に迷って心が右往左往するのは贅沢という話かもしれないが……


「ハッハー、どんどん迷うと良いぜ。大いに迷って得た答えの愛だからこそ、それは自分にとって素晴らしい愛となるんだぜ。だから大いに迷え少年よ!」

「はは、ありがとうございます、カーキーさん!」


 ……けれど、こうして迷うのも悪くはないと思う自分も居る。

 お兄さんのように笑うヒトと一緒に色んな方々の話を聞き。

 聞いた話は決して僕にはマネが出来る訳でもないし、自分の答えとしてはなにかが違うと思う話だったとしても。

 いつかは内容を忘れたり、細かな所は間違った内容として記憶してしまうような時間だとしても。

 この時間も決して無駄ではなかったと言えるような、幸せな結論をこのシキで見つけていきたいと、僕は思うのである。


――そして今の僕に出来る事と言えば……


 そのためにまず、僕がしないといけない事がある。

 それは……


「……何故、姉である私の名前が出ないんだ……何故だ、何故なんだ愛するヴァイス……!」


 ……とりあえず、恋とかキスとかに迷う前に。

 僕にとって大事なシュバルツお姉ちゃんと話し合う所から始めていこうと思う。


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