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姉弟喧嘩?_4


 さて、戦う前に一悶着はあったものの、俺とクチナシ義姉さんの戦いの時間は近付いていた。今は先程の戦いで出来たクレーターの補修と、護身符に込める魔力の補充待ちの時間である。


「いやー、見ていて楽しい戦いだったな!」

「神父様もマゼンタさんも凄く魅せる戦い方だったよね!」

「結果的に神父様の負けではあったけど、護身符の耐久が切れただけだから本当に戦うとどっちが勝つか分からないよな」

「そうそう。というか神父様の戦い方って護身符有りだと負けやすいよね。ダメージを受けてでも特攻するタイプだし」

「けどそれで勝ってもシアンちゃんに怒られそうだよね」

「はは、確かに。自分の身を大事にして下さいーってな」


 そしていつの間にか出来たギャラリー達は先程の戦いについて感想を言い合い、盛り上がっていた。シキに居ると変態達の奇行で退屈はしなくはあるが、それはそれとしてこういった戦いを観戦する、というのは楽しい物なのだろう。前世で言う所の格闘技を見る感じだと思う。

 問題はあのザ・魔法の戦いみたいな戦いを見て盛り上がったこの場の中で、俺とクチナシ義姉さんはギャラリーの期待に応えられるような戦いを繰り広げられるかどうかが心配だが……まぁ、元々ギャラリーを楽しませるための戦いという訳でも無いし、自分なりに戦えるだけ戦おう。そもそも楽しませるための戦いを意識する程これからの戦いに余裕があるとは思えないし。


「ところで領主様の戦うあのカッコイイねーちゃんは誰だ? 軍人さん?」

「今日来たっていう旅の一座の女性じゃないのか?」

「いや、なんでもヴァイオレット様のお兄さんの嫁さんだってよ」

「なんでその二人が戦う事に……また領主様がなにかやったのか?」

「ああ、今度は義理の姉、という事か……戦って妙な展開になるのか」

「露出が激しい女性ばかりだったから、今度は……そういう事か」

『なるほどなぁ……』


 おいこらそこの親父共、変な風に納得するんじゃねぇ。確かにそれに準じたトラブルは起きそうだったが、未然に防いだしそもそも今までだってそんな妙な事は起きていない! ……あまり。


「御主人様、戦いの場の整備及び護身符の魔力充填が終わりました」


 と、妙な会話が聞こえたため集中が途切れたので戦いのために気合を入れ直そうとしていたら、バーントさんが護身符を渡してきながら準備完了の報告をしてくれた。

 報告を受けて戦いの場を見てみると……おお、凄いな。本当に綺麗に整備されている。流石はバーントさんとアンバーさんである。


「ありがとうございます、バーントさん。アンバーさんにも素晴しい腕前ですよと伝えてください」

「恐縮です。愚妹も喜ぶでしょう」

「しかし、すみません、屋敷での仕事があるのに通りかかったからとこのような事を頼んでしまって」

「いえ、御主人様の戦いの音を聞けるというのにそれを逃さない手は有りませんから!」

「俺が発する音ならなんでも良いんですか」


 なんかこれだと俺のダメージを受けて苦悶する声とかに対しても興奮しそうだな、バーントさん。……そうならないように願うのと、新しい扉を開かぬように出来るだけダメージを受けないように頑張るとしよう、うん。


「それでは、御健闘をお祈り申し上げます。素晴らしい音を期待しています」

「その言葉が無ければご期待に応えられたかもしれないんですがね」


 バーントさんはそう言うとヴァイオレットさんの所への傍へと向かって行った。

 ……よし、集中し直せ俺。今の会話は忘れて戦いをするんだ、俺。変態を喜ばせるとかいう思考は捨てるんだ。


「勝てば大好きなお嫁さんからご褒美がもらえる……そのままなし崩しにキスだって出来る……恋力を……恋力を放出できる……!」

「……一応聞きますが」

「消えている状態だから、反応すれば独り言扱いだろうね」

「了解しました。恋力を見たかったらとっとと離れてください」

「分かったよ、頑張ってね! そして恋力を捧げよ!」

「やかましい」


 くっ、全裸マントの女性が神のお告げのように耳元で囁くから集中が途切れた。確かにヴァイオレットさんに良い所は見せたいし、ご褒美のキスが貰えるためなら頑張れるが、今の調子だと雑念しか生まれない、集中だ、俺……!


「ああ、そうそう。今私は消えているから、別に誰かに言う訳でも無いんだけどさ」

「?」

「気をつけなさいよ。彼女、なにか別次元のような存在だからね」


 トウメイさんはそう言うと、ふわふわと浮いて教会の屋根の上へと移動し、屋根に座って観戦状態になった。上から見下ろす姿は、教会という場所だという事と、トウメイさんの元々持っている何処か浮世離れした雰囲気と相まってか何処か神秘さを感じる。


――別次元、か。


 トウメイさんの言いたい事はなんとなく分かるし、俺に忠告をしてきたのだろう。危険な存在、とまではいかないが、場合によっては危険を伴う事がある、と。


「ふぅ――…………よし」


 元々油断する気は無いが、トウメイさんのその言葉で途切れかけていた意識は再び集中する事が出来た。

 ……最初に言った恋力とやらも本音かもしれないけど、俺に集中させるために話しかけて来たのかもしれないな。後で感謝をするとしよう。


「クロさん、そしてクチナシ様。準備は良いですか?」


 集中が完了すると、審判役を務めるヴァイス君が俺達の名を呼ぶ。その言葉に呼応し、俺とクチナシ義姉さんは戦いの場所に出てから一定の距離を保ち立ち止まる。


「では、これから――」


 そしてヴァイス君は決闘の時に使用する決闘前の宣誓を言う。実際は決闘でもなんでも無いのだが、一応教会の前なので私闘ではなく決闘という由緒正しいものであるとしているのだろう。


「クロよ」


 そしてその文言中、クチナシ義姉さんは俺に声をかけて来た。


「遠慮はいらん。やるならば本気で来てくれ。そして私を満足させてくれよ?」

「ええ、本気でいかせてもらいますよ」


 そうしないと変なパズルの下着を解くというよく分からない状況になりそうだし、頑張ろう。


「では、両者共よろしいですね?」


 宣誓を言い終わり、ヴァイス君の確認に俺達は黙って頷いた。


「では――試合開始!」


 そして試合が開始されると同時に:


「――行くぞ」


 死が、目の前に迫って来ていた。


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