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姉弟喧嘩?_3


 とりあえずタイムをした後、ヴァイオレットさんにクチナシ義姉さんを教会の中に連れて行って貰い、レモンさんに替えの下着を用意して貰って着替えて貰った。マゼンタさんには「せっかくのチャンスを何故フイにしたの?」とは聞かれたが、流石にあのような状況を聞いてそのまま戦うほど俺は人間は出来ていない。俺の心はヴァイオレットさん一筋ではあるが、綺麗な御方の大事な箇所が見えても平然とはしていられないのである。なにせトウメイさんも今もちょっと困るし。なので「チャンスではなく、ただキチンとした装備で戦いたかっただけですよ」とだけ言っておいた。


「あははは、行くよ神父君! やるなら本気で行くよ!」

「勿論だ、マゼンタ――やるからには勝たせて貰う!」


 そして現在、先に神父様とマゼンタさん(ヴァイス君の頼みでズボンに変更)の戦いをしている訳であるが……相変わらず凄い戦いだ。

 神父様は得意の【創造魔法(クリエーション)】で。

 マゼンタさんはあらゆる属性の魔法を駆使し。

 両者共派手にかつ見応えのある戦いを繰り広げている。


――なんというか、見ていて楽しいと思える戦いだな。


 両者共素早く動き回って魔法をぶつけあって、回避して防御して紙一重に攻撃を交わし攻防を繰り広げる。

 ……なんというか、俺がこの世界を受け入れ始めた頃に夢見た“魔法使いの喧嘩”を体現しているような戦いである。羨ましいなぁ。


――ギャラリーも増えたな。


 俺が夢見たような戦いは他の皆にとっても見応えのあるモノらしく、ギャラリーも増えてワイワイと盛り上がっている。戦いの理由は知らずとも、戦っている二人はシキでも信用の出来る二人であるので安心して見られる面白い戦い、といった所か。

 気持ちは分かるが、この後戦う身としては派手さで負けて地味といわれなきゃ良いのだが。


「ほう、あの神父は【創造魔法】の使い手か。しかも相当な使い手のようだな」

「あ、クチナシ義姉様」


 そんな自分の戦いをちょっと不安に思いつつ、俺もギャラリーの一人として戦い観戦を楽しんでいると着替えたであろうクチナシ義姉さんが話しかけて来た。……着替えたよな? うん、着替えたという事にしておこう。

 後ろに居るヴァイオレットさんがなんか疲れた表情をしているが……うん、今はあまり聞かないでおこう。


「様はいらんよ、義弟(おとうと)よ」

「はぁ、ではクチナシ義姉さんでよろしいでしょうか」

「さんも……いや、妻もさん付けで呼んでいたな。その呼び方で良いか」


 クチナシ義姉さんは呼び方に関して納得をすると、少し間を開けた場所に立って戦いの観戦をし始める。


――……なんだろう。綺麗以外に懐かしいと思えるな。


 クチナシ義姉さんはヴァイオレットさんと同様に立ち居振る舞いが綺麗なのだが、何処か軍人然とした力強さがある。そして何故か懐かしいと思える。なんというか俺が一度過去に経験をした、二度と経験したくない強烈な“何か”を彼女は纏っている気がするのである。

 けれど“それ”は今のクチナシ義姉さんは弱まっているようにも思えるし……ううん、なんだろう。自分で思っていてもよく分からない事を思っているな。


「どうした、義弟よ。やはり開放的な下着の方が良かっただろうか?」


 と、いけない、見ていたのが気づかれたか。その誤解は流石に勘弁願いたいし、本音を言うにしても自分でも理解出来ていない事を言う訳にはいかないし、適当に誤魔化しておこう。


「これから戦う相手の観察をしていたんですよ。立ち方一つでも分かる事がありますからね」

「なにか分かったのか?」

「強いという事が分かりましたよ。軍人然とした強さを感じました」

「ほう、他には感じなかったか?」

「他ですか? 他は……」

「例えば、前世で経験した死を感じさせる、などだ」

「それは――」


 そうか、それだ。

 クチナシ義姉さんからは俺が覚えていないが確かに経験をした死の気配が感じられるんだ。説明は難しいのだが、強大な力がクチナシ義姉さんには内包されており、それを心の何処かで感じ取ってしまっている、とでも言うべきか。

 なるほど、だから懐かしく感じたのか。それが分かれば俺の感覚も納得だが……


「誰から聞きました?」


 ……納得だが、その話題をするには何処まで話せば良いかを問わねばならない。

 幸い皆戦いに夢中で俺達の話を聞くのはこの場に居る俺とヴァイオレットさんだけではあるが、何故今その情報を俺に出して来たのかは聞かないと駄目な内容だ。


「質問に質問で返して悪いが、クロ君の前世の話は何処まで知られている?」

「人それぞれ、とだけ。信じて貰えそうな友人にだけなんで、数は多くありませんし、知っている度合いも変わります。この場に居るギャラリーでは戦っている人達くらいしか知らないので、あまりその話は大声では言えません」

「そうか」


 例えばアイボリーやオーキッドなどは俺が前世を持っているという事は話してある。しかしヴァイオレットさん達のようにあの乙女ゲーム(カサス)の事までは知っていない。前世の概念があるこの国の宗教観ならば前世はともかく、ゲームだのシナリオだのは言った所で説明が難しいからである。

 なのでゲームの事をクチナシ義姉さんが知っているのかを知りたい所だが……


「誰から聞いたという訳でも無い。正確には日本という国について知る機会が有ったのだが、それは君達四名を通じて知った、というだけの話だ」

「王族魔法でも使われたので?」

「ほう、王族魔法はそのような力があるのか?」

「詳細は知りませんが、そういった馬鹿が一人いたもので」


 カーマインの奴は結局どうやって俺の前世とかゲームについて知っていたかは分からない。そもそもハッタリで知っているように見せかけただけだったかもしれないが、その真実を知る気は無い。なにせアイツに聞こうとしたら「知りたいか? そんなに俺の秘密を知りたいか? んん?」などと殴りたくなる顔(殴った)で煽って来たので聞かずにいたのである。

 ……アイツの事はともかく、クチナシ義姉さんの言い方だとカーマインのやり方とは違いそうだ。


「もしかしたら私が知り得たのは王族魔法が関与しているかもしれないが、私は真実は分からんよ」

「そうなのですか?」

「そうだ。私はよく分からないままお前達に四名の過去を知ったが、その知った理由を……真実を知る男を、結局私は“知る”事が出来なかったからな」


 そう言いながらクチナシ義姉さんは戦いを……正確には戦う神父様を見ながら、何処か寂しそうに呟いた。

 その表情は何処か後悔とも寂しさとも取れるような、軍人然とした彼女の中に見える少女のような幼さであった。


「……生憎と俺は自分の前世の死因を覚えていないんですよ」


 初めは警戒心を抱いて受け答えをしていた俺であったが、その表情に気が削がれたのか少し気持ちを落ち着かせて俺が最初にされた質問に答えた。


「そうなのか?」

「ええ、前世の妹の話から垣間見える事を予想するに事故死のようなのですが、どうもハッキリとは。ショックから守るための自己防衛のようなものかもしれません」


 有名デザイナーから話があり、浮かれ気分でフランスに行った。というようなことまでは覚えているのだが、それだけだ。その時の俺は身体は健康であったし、(ビャク)を残して自殺するとも思えないから多分事故死だ。

 まぁ思い出せないというならば特に思い出そうとも思わない事でもある。けれどクチナシ義姉さんに対して懐かしさを覚える辺り、何処かで死に関して覚えているのかもしれないが。


――いや、そもそもクチナシ義姉さんにそんなものを感じるなんて失礼だな。


 女性に対してというか、人に対して相対していると死を感じるなんて失礼な話だ。確かに先程戦いを挑む前は身構えるほどの強敵の圧を感じたが、それでも死を感じるなんて失礼な話であり――


「なんだ、つまらないな」


 ――そして俺の顔をいつの間にか正面から覗き込んだクチナシ義姉さんに、今まで以上の“死”を感じた。


「……つまらない、とは」


 それでも俺は冷静に対応をし、見返すように見ながら言葉を返す。


「生者は如何なる理由があろうとも、臨死はあっても本物の死を体験する事は出来ない。だが貴公達は生者でありながら死を知っている存在だ」

「であるにも関わらず、俺が死を覚えていないのをつまらない、と?」

「ああ、そうだ」

「そうですか。ご期待に沿えず申し訳ございません。ではそのように思って頂ければ構いませんよ」

「言い返さないのか?」

「貴女がそう思うのならば貴女の中では俺はそうなんでしょう。それを否定する程、貴女は俺にとって重要な場所には居ないので」

「ほう、それは言い返す気概も無いほどの弱い心を誤魔化すための方便ではないのか?」

「はは、自分に自信があるのなら、誇りを侮辱された事に腹を立てろと言いたいのですね。ですがご安心を。こちらはつまらないと言われて腹を立てていますよ。ですが、それだけです」

「お前の人生を侮辱した私を殴ろうとは思わないのか?」

「生憎とその予定は無いですね。言葉に対して殴れば俺の負けですから」

「相手が反撃という選択肢を取る可能性を考えずに私が侮辱したとでも?」

「仮にその覚悟を持っていても、俺の誇りはこの程度で暴力に訴えて手放すほど安い物じゃ無いので」

「それは――」

「そこまでにしてもらおうか」


 売り言葉に買い言葉。

 明確に喧嘩を売りに来ているクチナシ義姉さんとの会話は、ヴァイオレットさんが中に入る事によって中断された。


「両者共、なにかお互いに思う所はあるかもしれないが、これ以上の話は見過ごせない」

「ヴァイオレット、悪いがこの件に関しては――」

「聞け、変な下着趣味の義理の姉」

「……変な下着ではない。誘惑用の素晴らしい下着だ。多分」


 どんな下着だったのだろう。あとこう言っては悪いけど、シキに唯一ある服屋で買った下着だと素晴らしいという事は無いと思います。どちらかというと独特、という評価が似合う物になると思います。


「どうやら二人共身体を動かさずにいて欲求不満のようだ。やるならそちらで解消して貰おう」

「……そうか。愛すべき義理の妹の頼みならそうしようか」

「クロ殿も良いな?」

「俺も構いませんよ」

「では、今回の件がここまで。どうやら前の戦いも終わったようであるし、それぞれ準備をして貰おうか」

「……了解した。では、良い試合をしようじゃないか、義弟よ」

「ええ、こちらこそ」


 クチナシ義姉さんはそう言うと、俺達に背を向けてそのまま去っていった。恐らく前の二人の戦いの場所へ行き、健闘を讃えた後そのままそこで待つつもりなんだろう。


「ありがとうございます、ヴァイオレットさん」


 俺もそのまま行きたい所だが、その前にヴァイオレットさんに感謝をしておかないとな。あのまま会話を続けたらなにが起こっていたか分からないし。


「いや、構わない。あのまま行けば良くない雰囲気になりそうだったから止めただけだ。むしろ止めるのが遅くなってすまない」

「いえ、そのような事は。……ですが、なんだったんでしょうね」

「分からないが、クチナシ義姉様なりの考えがあったのだろう。……それについては、戦いが終わってから聞くのが良いのではないか?」

「そうですね、そうします。勝って話を聞こうと思います」

「ふふ、そうか。頑張ってくれ」

「はい。……ところで、変な下着ってどんなものだったんです?」

「色っぽいのだが、脱がすのにギミックが必要でパズルを解く必要がある下着だ」

「……なんです、それ」

「……私に聞かないでくれ」


備考 クロの前世の死因

フランスでの事故死であり、特に死に関して特別な理由がある訳では無いのであしからず。

ちなみに他の前世持ちの前世の死因は以下の通りである。

メアリー:病死

エクル:事故死

クリームヒルト:餓死


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― 新着の感想 ―
[一言] つまり誘惑しつつ脱がせるのに焦らしを混える下着……? せ、性癖が暴走してやがる?!(白目)
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