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影の薄い少女の受難_1(:明茶)


View.フォーン



 フォックス家の長子、フォーン・フォックスである私は現在ある悩みを抱えています。


 一つは激務であった生徒会長を交代するにあたり、最後の仕事となる会長指名をどうすれば良いかという事。

 そしてもう一つは、私の種族についてです。

 私は一応【人族】という扱いにはなっていますが、実際は歴史の闇に葬られた種族である【夢魔族(サキュバス)】という種族です。これはフォックス家自体が夢魔族の一族、という訳ではありません。父も母も妹弟も夢魔族ではなく、私だけが先祖返りで夢魔族なのです。

 この夢魔族の特徴に関してはわずかながら夢魔族の力を有していた曾祖母から聞いてはいたのですが、曾祖母自身も大きな力を持っていた訳では無いので私のような【目を見た者を夢の中に放り込み、精を奪う】などという目の力などの詳細までは知らずにいました。そのため私は曾祖母から定期的に襲い来る性衝動と、目の力を出来るだけ抑える術だけを聞いていたのです。

 ……あくまでも、出来るだけです。

 目を間近で見れば強制的に能力が発動してしまうという術を抑える手段はずっと分からずにいました。なにせ私の種族は歴史上存在しないのですから、どれだけ調べても分からないのです。


――最近はどうにか出来初めはしてますし、受け入れられてきてはいますが。


 私はただ増していく力に怯えながら今まで生きて来ましたが、最近は【サキュバス】という名に聞き覚えがあるクロさん達や、偏見を持たずに接してくれる皆さんのお陰でどうにか目の力とも上手く折り合いがつき始めています。まだ封じるには時間がかかりそうですが。


――でも、なんでブラウン君だけには効かないのでしょう。


 別に効いて欲しい訳では無いのですが、対策を持って私の目を見たメアリー君ですら私の力は発動されて、夢の中に入って私は発情するというような事が起きたのにも関わらず、ブラウン君だけには効いていないのです。

 彼だけは間近で見ても、ずっと見続けても「フォーンお姉ちゃんの目、きれいだね!」と無邪気に笑うだけで、能力も発動せずに私も発情せずにいる事が出来るのです。

 その無邪気に褒めてくれる表情がとても可愛らしく、子供なんだなと思うと同時に男の子さを感じさせる笑顔が私の心を能力とは違う意味で――


――コホン。これ以上は話が逸れますね。


 ……ともかく、話は逸れたが私の現在の悩みは私の種族についてです。

 ついこの間、私の種族が歴史の闇に葬られた原因とも言える原種に会ったのですが、その時気になる事を言われたのです。

 私は目の事を聞いた所、


『それを封じる術は知らない。なにせ必要無いもの! というか相手を惚れさせることも出来る目を封じるなんてとんでもない!』


 などと返されたので、もしかしたらと思っていた私は落ち込んだのですが、例外として効かない相手が居る事を名前を伏せつつ説明するとこう返されたのです。


『え。あー……その現象かぁ。一応聞くけどその相手は以前からの知り合い? あ、違う、初対面? あぁそうかぁ。…………うん、ムカついて来た。え、なんで急にって? うっさい昔の嫌な奴を思い出しただけだから貴女には関係無いの! え、心当たりがあるなら教えろって? ヤダ、知りたかったらショーカンとやらの従業員の恋愛話でも聞いて来れば分かるんじゃない!? 知らんけどね!』


 ……と、何故かキレられたのです。

 その後私はしつこく食い下がったのですが、結局は「ショーカンでの話を聞いてきて、私に教えてくれたら理由を教えん事も無い」などという話に落ち着きました。

 私はどうしようかと悩んだのですが、今現在居るシキに丁度そういった団体が来るそうなので、折角なら話を聞いてみようという事になったのです。


――その前に、何故か女性陣で一緒に旅の一座の場所に行って技術を学び合う。というよく分からない約束を結びましたが……


 ……その件に関しては置いておきましょう。多分なにかの勘違いでしょうから、約束の時間になれば解決するはずです。……多分。


「あ、確かこの前王都でもあったお仲間のフォーンちゃんと……わ、クチナシちゃんじゃーん。本当に居たんだね、ヤッホー!」

「!? ま、マゼンタ様!?」


 約束を取り付けた後、私はクチナシ様と共にシキの観光に戻ったのですが、するとシキでシスターをやっているマゼンタ様と出会いました。クチナシ様はまさかの出会い(と服装)に驚愕をしています。無理もないでしょうね。


――彼女が以前言っていた、夢魔族の特徴も……


 マゼンタ様も私と同じで夢魔族の先祖返りなのですが、彼女は私以上に夢魔族の事を知っていました。マゼンタ様の目と私の目は性質がやや違う(強制発動しない事や、夢に入り込み精を奪う力はマゼンタ様にはない)ので、私の目の力を抑える術を知ってはいませんでした。

 しかしそれとは別の、【夢魔族の女性】としての、必ず発現するある特徴を彼女は知っていました。

 それを聞いた瞬間、私はある決意をしたのですが……それは今は置いておきましょう。


「マゼンタ様……なのですよね」

「あははは、そうだよ!」

「確かにシキでシスターをやられているとは聞き及んではおりましたが……以前お会いした時より若返っておられるような……?」

「まぁ若いエネルギーを浴びているからね。若返りもするよ」

「なるほど」


 なるほど、じゃないですよクチナシ様。そしてマゼンタ様もなにを言っておられるのでしょう。


「つまりその格好(スリット)も若返りのための一種の服装だと?」

「え、これは可愛いからだけど?」

「え。……なるほど?」


 ……クチナシ様、もしかしなくとも深いスリットは別の意味で入れていると思ってましたね。先程までの会話の影響でそっちに思考が行っているのかもしれません。


「あ、そうだ二人共。噂に聞いたんだけど、旅の一座の夜のサービスを受けに行く、って本当?」

「受けに行く、というよりは聞きたい事がある、という感じですね」

「なるほどねー」


 そういえば先程「本当に」と言っていましたが、なにか私達の事を事前に聞いていたのでしょうか。

 しかしなんとなく言葉のニュアンスが私達の目的と違う気がするので、そこはキチンと否定しておかないといけません。


「でもおかしいな?」

「なにがでしょう?」


 すると私の答えを聞いたマゼンタ様は、腕を組みつつ疑問顔で言葉を続けた。


「私の聞いた限りだとフォーンちゃんとクチナシちゃんが店員として働き、今日一日で最高売り上げ記録を叩きだすと意気込んでいると聞いたんだけど、気のせいだったかな……?」

「なんですそれ!?」


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