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リクエスト話:カナリアルートif


 ※この話は活動報告にて募集いたしましたリクエスト話(ifなど)になります。細かな設定などに差異があるかもしれませんが、気にせずにお楽しみ頂ければ幸いです。


※このクロは「ヴァイオレットやスカイと会う事無いまま」シキで平凡(?)に過ごすクロです。

※グレイやアプリコットは学園に通わず、シアンと神父様は「仲は進展しているけど付き合ってはいない」状態です。


リクエスト内容「カナリアルートif」




「クロ(様)(さん)二十一歳の誕生日おめでとう!」

「これでクロ様も貴族の行き遅れの仲間入りですね!」

「そう落ち込むものでは無い。きっといつか運命の相手(オルフェウス)が導かれる事無きにしも非ずもがなである」

「大丈夫だって。クロが私より先に結婚する裏切者ではないっていう証明なだけだから!」

「お前ら祝っているのか馬鹿にしてんのかどっちだ。……まぁありがとな」


 この世に生を受けて二十一度目の誕生日を無事迎える事が出来た。

 ここ一年で俺が治めているシキでは第二王子が俺を愛すためにシキを滅ぼそうとしたり、王都の方では世界の破滅の危機っぽいことがあったらしいが、ともかく無事迎える事が出来た。


――しかし、二十一歳で行き遅れか。


 ルーシュ殿下やスカーレット殿下も陰では言われている内容ではあるが、慣れないな。

 前世の感覚で言えば大学に通っている最中か働き盛りな年齢であり、後七,八年結婚しなくてもおかしくはないので、あまり考えられない話ではある。

 しかしかなり珍しいという事でもないし、そんな事をわざわざ祝いに来てくれた友人達

が茶化して言う位なので切羽詰まっている訳でも無いが。そもそも俺より年上で結婚していない奴とかこの中にも何人も居るしな。


「クロはさ、結婚願望とかないの?」

「あるにはあるが……俺と結婚したがる御令嬢とか居ないだろうしな」

「令嬢……あ、そっか。クロって貴族だった」

「喧嘩売ってんなら買うぞ、来年には行き遅れ仲間のシスターめが」

「それまでには流石に神父様と結婚出来ている! ……と思う」

「頑張れよー」


 幸せな結婚生活を送りたい、と思いはするが、今は大分払拭されてき始めたとは言え俺の立場的に結婚してくれるような令嬢は居ないだろうし、今世と前世の影響であまり結婚生活に良いイメージが無いというのもある。

 余程魅力的な女性か、夫婦として安心できる女性が居れば良いのだが、そんな女性は滅多に居ないだろうし、居たとしても「俺なんかよりもっと相応しい相手が居るだろう」とか思ってしまうんだよな。


「……もういっそ強制的に婚姻でも決まらない限り、俺は独身のまま生きると思う」

「寂しい事を言ってるねー。ま、相手が決まったら言いなさい。教会で盛大に祝ってあげるから」

「ありがとよ。俺より息子の結婚式の方が早いかもしれないがな」


 まぁグレイという立派な息子も居るし、グレイなら立派な彼女(多分今も高笑いしている系中二病女子辺り)を連れて来る事だろう。それで充分なんかじゃないかとも思い始めてはいたりする。なんだか複雑な家庭になりそうだが、それはそれで幸せな家族になるだろうしな。


「あ、じゃあさ、クロ」

「ん、どうしたカナリア?」


 俺が誕生日祝いと言いながら俺を置いて屋敷で盛り上がる友人達をシアンと一緒に見つつ、将来の事を考えているとカナリアが話しかけてきた。


「私と結婚しよ?」

「良いぞ」


 話しかけてきたカナリアは結婚を申し込んで来たので、俺は承諾した。


「……え。リアちゃん、クロ。……今、なんて?」


 カナリアと結婚か。

 うん、それも良いな。というかそれが良いな。


「よし、シアン。明日から手続きを始めるから、教会の方での手続きよろしくな」

「……なんの?」

「俺とカナリアの結婚だが」

「……え。………………えっ!?」


 という事で、俺とカナリアは結婚する事になった。







「なんか皆に驚かれていたな」

「でも話していくにつれ納得されていったね」


 一昨日決めた結婚話。

 宿屋とか一昨日はどうしても外せない用事でシキに居なかった神父様とかに昨日報告した所、全員に「はぁ!?」と驚かれた。

 初めは驚かせるために嘘を吐いているのではないかと思われていたのだが、「別に嘘を言うつもりはないぞ」と俺とカナリアで言うと、段々と納得するような表情になっていく。と、報告した相手の反応は大体似たような感じであった。

 どうも付き合っていた素振りが無いのに急に結婚した事に驚かれるだけで、それ以降は「まぁお前達ならそうなってもおかしくはないかなぁ?」というような納得した感じになるようである。


「いやー、しかし屋敷に住む事になるのも久々だね!」

「まぁ結婚する訳だし、いきなり別居生活とか変だしな。……前みたいな事はするなよ?」

「ふふふ、保証しかねる!」

「おいコラ」


 カナリアは以前屋敷で従者として働いていたのだが、商売として始めるようになった趣味のキノコ栽培を屋敷でしていた所、何回もキノコを大量繁殖させたので別の所に住む事になった過去がある。

 今までは別の家でキノコを栽培しつつ、偶にヘルプで屋敷に掃除などをしに来るといった形であったのだが、今回結婚するにあたってカナリアは再び屋敷に住む事になったのである。……まぁ不安が無いかとは言えないが、それでも夫婦になったのだから一緒な所で過ごしたいからな。


「いやぁ、グレイ君も喜んでいたね! あれ、これからは息子と呼んだ方が良いのかな?」

「そこは名前呼びで良いと思うが。それよりカナリアは母と呼ばれる事に慣れろよ?」

「おー、私がお母さんかぁ。上手くやれると良いけど」

「まぁそこは変に気負わずにやってくれ。家族なんだし、互いが互いを支え合おうな」

「オッケー! ……あれ、それって今までとそう変わらなくない?」

「ん? ……確かにそうかもな」


 以前は俺とグレイ、アプリコットが屋敷に居る所にカナリアが入り、慣れない領主生活に四苦八苦しつつも互いが互いを支えた。

 今までも別々に住んでいたとはいえ支え合ったのは同じだし、今回はあの時と違ってアプリコットが居ないという違い以外にはそう変わらない気もする。


「まぁ、正式に夫婦になった訳だし、なにか変わるでしょ」

「そうだな。こういうのは“なにかしなければならない”なんてモノは無い訳だしな」

「そうそう、夫婦なんだから」

「うんうん、夫婦なんだからな」







「おーい、カナリア、朝ご飯が出来たからそろそろ起きろー」

「んー……今日のメニューはなにー」

「スクランブルエッグとパン」

「んー……スクランブルエッグ! ちゃんとトロトロ!?」

「トロトロだ。冷める前に早く起きて来いよー」

「はーい!」



「うきゃぁ!?」

「どうしたカナリア――ああ、説明は良い。大体察した」

「うぅぇ……キノコの反逆を受けて、まさか自爆をされるとは……うぅ、ベトベト……」

「想像と違う被害を受けていたが、まぁ後片付けはしておくから風呂入って来い」

「はぁい……あ、一緒に入る?」

「俺は良いからグレイと入ってくれ。丁度入る時間だったから。着替えも持っていく時にまだ入っていたら俺も入るかもしれんが」

「分かったよー。では悪いけどよろしくね、クロ。お詫びに夕食は豪華に作ってあげるから!」

「はいはい、楽しみにしてるから早く入って来い」



「見てください父上。母上が作った泡のワイバーンです!」

「ふふふ、エルフゆえの力作だよ! 凄いでしょ!」

「まさか俺もお風呂に入ったらお前達が泡でワイバーンを作っているとは思わなかったし、凄い力作で驚いているよ。というか身体は洗ったのか?」

「身体は洗ったけど、髪はまだ!」

「同じくです!」

「全くお前らは……俺がやるから、並んで座れ」

『はーい』



「はーい、じゃあ食器を洗うから、重ねてキッチンに持って来てね」

「洗うの手伝うよ」

「今日は私が当番なんだから、クロは休んでて」

「だが」

「だがもでもも無し。洗い終わったらデザートでも持っていくからグレイとゆっくり話していて。分かった?」

「分かったよ、カナリア。……皿割るなよ」

「鋭意努力する所存を検討する方向性で務めさせてもらうよ」

「不安だ」

「そういう事言うとデザートの量を減らすよ」

「くっ、デザートを人質にするとは卑怯なり……!」



「ふぅ、今日も平和なシキの一日だったね!」

「ロボがルーシュ殿下の愛に耐えきれず熱暴走して打ち上げ花火をあげた以外はな」

「それも平和の証拠ってやつだよ。……ふわぁ、ちょっと眠気が……」

「おーい、寝るならベッドでな?」

「分かってるー。クロも早く寝ようー……?」

「分かってるよ。俺も眠いしな。……じゃあ明かりを消すぞ?」

「うん、おやすみ……」

「はい、おやすみ」







 カナリアと結婚してから一ヶ月経った。

 まだまだ肌寒い中、新婚生活を謳歌している俺として思う事が一つある。


「なんかさ、夫婦になったというのに、今までとそう変わらない気がするんだよ。どう思うスノー、カーキー」

「俺にそれを聞くのか。……まぁ良いんじゃないか。それも一つの夫婦の形だろう。クロが敬語も使わず、自然体で接する事が出来るような自然な間柄、というのは幸せな生活だろう?」

「……まぁそれもそうか」

「ハッハー、なにを言っているんだぜクロ。前と違う決定的な事があるだろう?」

「前と違う?」

「そう、夫婦であるなら愛を確かめ合う、つまり毎日のように抱けるんだ! 夫婦になってこれ以上の変化という愛は無いぜハッハー!」

「おい、カーキー。そういう事はあまり言うものじゃない。クロも反応に困って――どうした、クロ。なにかに気付いたような表情になっているが」

「…………やべぇ、一緒には寝ているけど、自然に接し過ぎてそういう事一切してねぇや俺達……!」

『マジかよ』


 俺の告白に、神父様とカーキーは素のような声で驚きつつ、俺を見ていた。







「リアちゃん、クロとの新婚生活は幸せ?」

「うん、とってもね!」

「ふふ、前より良い笑顔をするようになったね、リアちゃん」

「そうかな?」

「うん、とってもね」


「それは多分クロが素敵な夫だからだね! 大好きなヒトと一緒に居るんだから、それは幸せになるってモノだよ!」


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