夜の相談? 男性陣_2
「ええと、つまりヴァイオレットさん達が旅の一座の女の子に夜の相手をして貰うという話がある、と?」
「そういう事だ」
「……なるほど」
言葉だけ聞けば女性が女性の相手をするという、俺の生きていた前世の日本だとデリケートな話題ではある。が、今回はそういう類の話ではなく、なんとなく別の意味であるという事は分かっている。
「どどどっどど、どういううううううう」
「落ち着けスノー。震えて訳が分からなくなっているぞ」
「―――――」
「震えが止まって無の境地になったな、コイツ」
「ハッハー、神父様はこの手には初心だからな!」
「お前はもう少し初心になって欲しいがな」
「え。初心な俺を見たいのかアイボリー。申し訳ない、それは無理な話なんだ。無垢ではない俺の心に嘘は吐けない」
「急に真面目になるな」
そしてこちらは突然の嫁(予定)の突然の情報に戸惑いを隠せないでいる神父様と、それを宥めている(?)アイボリー達。神父様は多分俺が一瞬よぎった内容の方に勘違いをしているのだろう。
「クロ、お前は慌てないんだな。愛する妻が浮気……のような事をするかもしれない情報を得たというのに」
「まぁなんとなく話の意味は分かるからな」
「ほう?」
これが男娼を買うとか言う話題であったら俺も神父様のように動揺したかもしれないが、流石に違うという事は分かっている。
「多分、経験豊富な相手に知識を学ぶとかそういうやつだろうな……」
「まぁそうだろうな」
この世界にはネットなどと言う便利な物はなく、基本的に知識は口伝か書物から得るものだ。前世の便利な時代と比べると圧倒的に知識を得る機会が少ないのである。
そして気軽に情報を得られた前世であっても百聞は一見に如かずという言葉がある様に、経験が豊富な相手の話にはタメになる事が多い。前世の情報に溢れた世界ですらそうならば、この世界で経験豊富な相手から直接話を聞けるというのはより貴重で大切な情報源と言えよう。
……まぁようするに一瞬頭がよぎったような、ヴァイオレットさんやシアン達が旅の一座の女生徒ホニャララする的な話では無いだろう。
「とはいえ別に慌てる様な話でもないが、どう扱うべきか悩む話でもあるんだよな」
「何故だ?」
「いや、だってな。知識を得ようとする理由を考えると、な」
嬉しいような、そんな事をしなくて言って良いものなのか、どうしようかと悩む話題である。
「そんなもん話を聞かずとも実体験で学ばせてやるよ! とか言ってやりゃいいだろう」
「ハッハー、確かにそれで充分ヴァイオレット嬢は喜びそうだな!」
「お前ら夫婦は防御が弱いから、攻めれば大抵解決するもんな」
「やかましいぞデリカシーが無いおっさん共かお前らは!!」
アイボリーは面倒そうに、カーキーは相変わらず、レインボーさんは「若いって良いな!」的な感じに言ってきた。なんか否定し辛くて返す言葉に困るが、余計なお世話だよコンチクショウ!
「というか、レインボーさんは良いんですか、大事な妻がそういう所に行くのは」
「俺がしょっちゅうお前らに“隣町の繁華街行こうぜ!”とか誘っているようなだらしない男なのに、妻を見咎められると思ってるのか」
「自覚あるならやめましょうよ」
「分かってはいる。分かってはいるけど……欲は出て来るし、それに怒って嫉妬するレモンの奴も可愛いんだ……!」
「おいアイボリー。俺は領主としてこの倒錯した愛の持ち主をギルドマスターとかの重要な役職に置いたままで良いと思うか?」
「そもそもレモンの奴もこの男のだらしなさも含めてこの男を好きという変わり者だから放っておけ」
「……それもそうか」
レモンさんは乙女思考ではあるけど、一途と言うかなんだかんだ尽くすタイプだし、レインボーさんもだらしはないがなんだかんだレモンさん第一だし……うん、放っておこう。愛の形は人それぞれだ。
「というか、神父様は放っておいていいのか? なんか脳が破壊されかかっているが」
「よく分からん状態だが、その状態になったら俺でも治せる自信は無いな……だが放っておけ。多分しばらくすれば立ち直ってシアンの所へ行って、愛を叫ぶだろうよ」
「……確かにそうだな。“行かないでくれ、夜の相手をするなら、俺が頑張るから!!”とか自爆しそうだ」
「だろう?」
「そこまで分かってるなら止めてやれよお前ら」
「断る。怪我でも無いアイツらのイチャイチャに巻き込まれてたまるか」
「同じくー。多分アレも愛の形の一つだし」
「お前は相変わらずだなアイボリー、クロ。という訳で一緒に旅の一座の女の子の所に行こうぜ!」
「そうだぜ、愛を感じようぜハッハー!」
『断る』
そんな男同士の馬鹿みたいな話をしつつ、もう少しだけ話すとその場は解散となった。
◆
解散する前に神父様は気を取り直したかのように元に戻った後フラフラと何処かへ行き、入れ違いに来たヴァイス君を悪い大人二人組が悪い大人な世界へと誘おうとしていたので成敗をした後に解散をした。
「で、お前はどうするんだクロ。旅の一座を見に行きはするのか?」
解散した後にアイボリーと一緒に歩きながら俺に聞いて来る。
見に行く、というのは大道芸と、レインボーさんの言っていたもう一つの話を監視するのか、という意味であろう。あるいはそこに先程のヴァイオレットさん達の事も混じっているかもしれないが。
「領主として監視や注意はするよ。まぁ、情報機関とかそういう類の可能性もあるしな」
「そうか。変に探りを入れて、お前の妻に勘違いされないようにな」
「分かっているよ。……あ」
「どうした?」
「いや、旅の一座の事をフォーンさん達に伝えなきゃいけないんだったのを思い出した」
「フォーン……ああ、何故か見失いやすいあの女か」
とても今更だが、なんで皆フォーンさんを見失うのだろうか。クリームヒルトもそうであるらしいし、なんであんな綺麗な女性を影が薄いなどと言うのだろう。けど何故かこの件に関してはブラウン君しか同意してくれないんだよな……ん?
「あれは……?」
「どうした、クロ。……ん、あれは……ブラウンか」
ブラウン君事を思い出していると、丁度そのブラウン君を見つけた。
どうやらいつものように寝ている訳でなく、なにかキョロキョロと辺りを見ているようだが……なにをしているのだろう。
――ついでにフォーンさんを見ていないか聞いてみるか。
なにをしているのか気になりつつ、彼ならフォーンさんを知っているかもしれないと思い話しかけようとすると。
「しょーかんに行くにはどうすればいいんだろう……」
そんな言葉が聞こえたのであった。
……どういう事!?




