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継章話_Side. Gardenia


継章話_Side. Gardenia



 これはこれは、愛する我が夫ではないか。

 みっともない姿だな。だが敗者には相応しい姿だろう?


 私か? 魔法を使わない私は封じた所で意味が無いと見逃されたよ。

 なにを言っている。私は嘘など吐いていないぞ。


 ……ああ、そうだとも。

 私は全力を以って少年達に戦いを挑んだ。

 殺す事に長けたこの手を殺す目的で使った。

 私が思う最強の存在に対してこの手を汚そうとしたんだ。


 だからこそ、なによりも今。

 私は今こうしているのも含め、私は完全に負けたんだ。


 確かに私はアナタの考えに同意した。

 アナタの中にあるのは人々への性悪説ではある。

 だが同時に人々の輝きを信じて疑わない賛美、失いたくないという想いだ。

 だからこそメアリー・スー達のような正義のヒーローに憧れたのだろう?

 私はその子供じみたアナタの思いを愛している。


 だが、うむ。しかし方法はいかんよ。

 世界に夢魔法を広げ混沌に沈ませるとか。

 封印されていたかつての罪を冠する魔王を蘇らせるとか。

 正義のヒーローの愛と勇気を感じたいとしても、もう少しまともな方法はあったと思うんだ。

 そうでなければ私は同意しつつも背後から刺そうとはせんよ。


 え、せっかくならめっちゃ強い魔王プレイをしたかった?

 男だったら思いっきり高い壁となって立ちふさがってみたかった?

 よし、一発殴らせろ。

 大丈夫。軽く殺せる一発だから。……チッ。


 ともかく、そんなだから私は裏切ろうとしたんだよ。

 なにせクロガネなんか蠅の集合体みたいになってたんだぞ。

 なんだアレ。なにをどうなったらあんな奇天烈な姿になるんだよ。


 …………。

 なるほど、あのクロガネの姿は予想外だったと。

 ならなんであの姿になった時アナタは計画通りかのように楽しそうに笑ったんだ?

 え、想いの強さがこうなるとは思えなくて、予想外過ぎてなんか笑ってしまった?

 これもまさに愛と勇気の賜物だなと思い嬉しかった?

 よし、やっぱり殴らせろ。……チッ、分かったよシャル坊。殴らんから抑えようとせんで良い。

 なんだ、アナタ。私に言いたい事でも?


 そうだ、確かに私はシルバ坊を利用しようとした。

 私ではアナタを抑えられない。

 力をつけたアナタは、私を歯牙にもかけずに計画を続行する。

 だけどシルバ坊の力を解放すれば抑えられると思った。

 ……暴走の果てに、私が死ぬ事になってもな。


 だが私は今、生きている。

 アッシュ坊に負け、シルバ坊に負け。今こうしてアナタと話している。

 この現状が私の敗北した証なんだよ。


 私の罪は大きい。

 だからこそ、生きて償えと許されてしまった。


 先程の事情を説明しただけだぞ?

 戦いを挑み利用しようとしたのは、夫を止めたかった。

 たったそれだけで、あの二人は私を許した。

 「他の皆さんが無事で、他の関係者が許したのならそれで構いません」とな。

 ……まぁ、何人か大怪我は負っているが、先程私が殴って治療したから大丈夫だろう。


 ともかく、信じられるか? あいつらは「結果的に僕は大丈夫だったしもう良い! よし、これで問題無し。後は自分で他の罪を頑張って償って!」と言ったんだ。

 馬鹿みたいな理論で子供過ぎる話だろう?

 色々と問題が残る綺麗事な話だ。


 ……けれど、私は負けたんだよ。

 その言葉を言われた時に、完膚なきまでにな。


 ……ああ、まったく。

 どっちが大人でどっちが子供なんだか。


 はは、確かに。

 今もなおメアリー・スーにアピールしたり牽制し合っているアイツらを見ていると、先程までの状況はなんだったと思う程に彼らは子供だな。

 メアリー・スーなどとてもではないが私より年上には思えん。


 ん、どうしたシャル坊。

 ……ああ、すまない。メアリー・スーに対してこの言い方は良くなかったな。

 彼女は今を生きる少女。それだけで充分だ。

 ああ、ところでクロガネはどうなったんだ?

 ここには居ないようだが、まさか……


 ……ん、そうか。

 スカイ嬢の言葉が通じたか。

 それは良かった。私ではどうにもならなかったからな。

 ……アイツは元々強かったのに。別の強さを求めてしまった事に気付けて良かった。

 ……最期に良い夢を見れて良かったよ。


 え、生きてる?

 堕天したけど愛を知ってメタモルフォーゼからの延命?

 この夢空間が覚める前に身体を再構成すればいけるだろうって?

 けどその時には裸になるから恥ずかしくてここには居ない?


 ……そうか、生きていて良かったよ。

 なんだシャル坊。私は照れてないぞ。

 照れて居ないとも。格好つけて黄昏たのを恥ずかしがっていない。本当だ。

 分かったならそれ以上の追及はするな。

 元々追及していない? よし、なら良い。


 そこでアナタが追及するな馬鹿夫!

 ええい笑うな、やっぱり殴るぞ!

 ……ああ、くそ。なんだこれ。


 私はもうこんな風にアナタと話せるなんて思えなかった。

 罪深い私達はそんな資格は無いのだと。

 ……例えいずれ起こる事を対処しただけとしても、愉快犯でやったんだ。

 私達には資格は無いんだ。

 ……無いんだよ。


 ……あの子が生きていれば、こんな風にはならなかったのかもしれないな。


 すまない、忘れてくれ。

 どんな理由があろうとも、私達は許される存在ではない。

 私達は私達の意志を持って罪を犯した。ただ、それだけだ。

 悪は悪らしく、罪を償うとしよう。


 もちろんアナタの分も償うぞ。私達は一蓮托生だからな。

 ちなみに「俺の分は不要だ」とか言ったら殴る。殴って死んだらその分私が生きて償う。OK? ……よし。


 ではそろそろ夢から覚める時だ、愛しの夫よ。

 この空間も終わり現実を見る時だ。


 若い者に愛と勇気を求めた分は、私達も敗者として愛と勇気を示さないとな。


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