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脳筋っぽい戦略分析


 護身符、というものは一定以上のダメージを肩代わりするものだ。

 あくまでも“一定”を代わりに受けてくれるだけで、強い衝撃だと痛みもある。ただ怪我などはしないようには抑えられるらしいが。そしてこの護身符の効果が一定以上消費されるとこの試合では強制的に敗北扱いとなる。

 数年前までは一回戦の混戦を除き、あくまでも試合は決闘扱いという事で、効果が切れた後に敗北を認めることで敗北となっていたのだが、何処かの馬鹿がそれを悪用したので今では効果が切れたら強制的に敗北になる。まぁその馬鹿は俺なんだけど。


「しかし、随分と観客が居るものだ」


 ほぼ満員で盛り上がる観客席を眺めながら、柔軟をし小さく呟く。

 俺が以前出場した時は、朝早くという事と有名処が少ないという事で観客もあまりいなかったのだが、今日は夕方に差し掛かる時間で有名処も多いせいか盛り上がるに盛り上がっている。


 ――あ、ヴァイオレットさん達だ。


 腕を伸ばして肩甲骨辺りを解していると、視線の先でヴァイオレットさんとグレイがこちらに向かって手を振っているのが見えた。手を振るなんて少し意外だが、嬉しくはあったので俺も振り返した。

 よし、応援されているからには勝って良い所を見せたいな。


『賭けをしませんか?』


 ……それに、あのような賭けをしたのだから、負けてメアリーさんに報酬を渡さなくてはならないなんてことにならないようにしないと。

 まぁそれはそれとして、ヴァイオレットさん達にカッコいい所も見せたいのは確かだけど。そちらの方が重要かもしれない。


「――の名の元に、この試合は――」


 と、そろそろ試合が始まるな。

 この試合は決闘ですという誓いを立て、そろそろ審判が試合開始の合図を出す。

 俺は魔法に関しては他の参加者に比べると劣るし、ロボのような滅茶苦茶な(よくわからない)力を持っている訳でもない。

 ただ、身体能力に関しては他者より優れているという自覚はある。前世も含め喧嘩には慣れている方なのでそれを活かすしかない。対人に関しては久々なので勘を取り戻さなくてはいけないが。

 しかし身体能力だけに優れていても、魔法の前では一瞬の油断が文字通り命取りになるので開始直後から油断はできない。


「……――では、特別試合、第六試合開始!」


 開始の合図が為され、一斉に動き始める。

 詠唱を唱える者も居れば、スピード重視で威力が小さいが素早い魔法を放つ者も居る。

 俺の場合はまずは動き出さなくてはならない。

 魔法の対処方法は、魔法でこちらも攻撃し相殺するか、防護系魔法を展開させて防ぐのが基本だ。どちらもせずに受けてしまえば大きなダメージを負う。そのため戦いにおいては魔力や魔法の扱いの上手さが勝敗を分ける。シアンやシャトルーズだって脳筋ではあるが、戦いにおいては勝つために魔法を扱いもしている。

 だが俺の場合はどちらも対処としては力不足だ。多少相殺や防御が出来ても、雀の涙程度しか軽減できないため少ない魔力の無駄ですらある。

 ならば俺の場合はどうすれば良いのか?


 ――簡単な話だ、当たらなければ良い。


 動きを読み取り、魔力を感じ、仕草を見て魔法の範囲を読み取り――逃げる。

 流石に雷とか初速が早い光魔法は避けるのは困難だが、そこは無理矢理無駄に高い身体能力と、俺でもかけられる肉体強化(バフ)でどうにか避ける。

 ただそれだけの簡単な話だ。

 それでも当たってしまう時はある。さっきのアプリコットの不浄と浄化(プルガトリオ)みたいな範囲攻撃では完全に避け切るのは難しい。そんな時の対処方法も簡単だ。


 ――直撃さえ喰らわなきゃ良いし、我慢すればいいだけだ。


 今回は護身符があるためダメージは軽減されるが、ようは直撃を喰らわなければどうという事は無い。痛みはアドレナリンだかなんだかに頼って耐えればいい。それだけだ。

 後は適当に魔法の合間を掻い潜って、距離を詰めて、強化(バフ)と僅かに使える属性魔法を乗せた拳で――


「――ふっ!」

「グフッ!」


 殴る。

 そして、


「もう一発!」

「ガハッ!?」


 勢いを乗せた蹴りで止めを。

 ……よし、一人は倒せた。一応今回使用している護身符は一定以上ダメージを受けたら安全装置が働くけれど、この人の安全の為に少し外に置いておこう。

 倒した相手を担いで場内の外の方に置く。そして今の一連の動作は数秒程度とは言え、狙いを定められた可能性もある。改めて闘技場内に向き直り、状況を把握する。どうやら魔法の隙間を縫って攻撃したため、俺に魔法の対象を向けている者は居ないようだ。


「――さて、次」







「……速さもさることながら、護身符の容量を一撃で半分以上削り切っていますね。彼は魔法に関しては優れていないとの事でしたが……ふふ、もしかして肉体天与かもしれませんね、彼は」


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