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予想外の(:灰)


View.グレイ



 大砲魔物の群体は、一直線に私達に向かって来た。

 蜘蛛サイズの小さな魔物は素早く。だが攻撃をする際には止まってこちらを攻撃してくる。攻撃の際にはアクセサリーのように付いている複数の金属棒を筒状の頭部に装填し、一個に付き十回程度攻撃をしてくる。


「イタッ、アイタタタタタ!?」

「気を付けて、この攻撃防御魔法無しで当たり所が悪いと皮膚抉って来る!」


 その一発一発はただ当たるだけならば叩かれる程度の痛みだが、攻撃に転じようと防御魔法を切ると大いにダメージを受ける。それが数十体から連続で来るのだ。油断をすれば私達の班はすぐに瓦解するダメージを受けるだろう。


「ええい、めっちゃ攻撃してくるのに油断すると他が攻めて来るぞ!」


 しかし防御だけしている訳にもいかず、素早くこちらに向かってくるモンスターも居る。一定の距離があっても威力が大きいのだ。あの数に近寄られて攻撃をされようものなら大怪我――下手をすれば死亡する可能性もある。


「くそっ、全然怯まないな、やり辛い!」

「キチンと仕留めきって! 動けない状態でも頭が動けば攻撃はして来るから!」


 さらに一番やり辛いのが、生物モンスターと違って相手が怯まないのだ。生物モンスターなら少なからずある“周囲の状況に合わせて怯えや激昂がある”といった動きが無い。

 死亡――停止寸前まで命令に対する最適解をこなすように向かってくるのだ。私達が培ってきた戦闘経験がまるで活きて来ない。


「そっち、まだ動いている!」

「え、しまっ――」


 今も足が全てもげて仕留めたと思った大砲魔物が、頭だけを動かし攻撃をしようとして来る。


「【雷神(ライド)走れ(オン)雷光(ボルテージ)】!!」


 しかし、その攻撃が私達の所へと届く事は無い。相手が攻撃をする前にティー君が私達を球状に覆う雷魔法を唱え、防御と同時に攻撃を仕掛ける事で周囲一帯の仕留め損なった大砲魔物も含めて一掃する。


「攻撃は基本私が請け負います! 皆さんは一番大きな奴を警戒しつつ、補助をお願いします!」

『了解!』


 私達は誰一人として戦線を離脱する程の怪我を負わずにいられるのは、ティー君が居るお陰である。

 大砲魔物には雷魔法が有効らしく、雷魔法のエキスパートであり、雷神剣を有するティー君は一騎当千の活躍を見せていた。私やフューシャちゃんも攻撃と補助に参加はしているが、ティー君と比べると全然である。

 まぁ、そこは良い。私が活躍しようとしまいと、一番重要なのは皆さんでこの状況を切り抜ける事だ。


――出来るだけ数を減らしたいですね……!


 このまま引くと他のモンスターも含めあの魔物群を引き連れる形になるので、出来るだけ数を減らしてから切り抜けたい。

 そしてこの調子で行けば、あのゆっくりとこちらにやってくる大きな大砲魔物を倒せば、一旦引ける程度には数を減らせるだろう――ん?


――あれは……!?


 ふと、ある小さな大砲魔物達の一部が違う動きを見せていた。

 こちらに向かってくるか攻撃をするかの二択であった小さな大砲魔物の一部が、こちらに向かう事無く一カ所に集まり始めたのである。


「ティー君、大きな魔物の近くに、変な動きをしています!」

「分かってる、攻撃するからグレイはその間に他の魔物を攻撃!」

「了解です!」


 なにをするかは分からない。だが、なにかする前に仕留めきる。

 ティー君も同意見のようで、剣を集まり出した場所へと向け。


「【雷魔法射出ライトニング・ショット】!」


 そして上級魔法レベルの雷魔法を放った。あの威力なら集まった魔物ごと屠る事が出来るだろう。


「――防がれた!?」


 しかし、その集まった魔物を守るかのように、別の大砲魔物が壁になる様に立ち塞がった。

 明確な意志を持つかのように、向こうがするこれからの行為を邪魔されないためのように。


「な、なにあれ!?」

「ボールみたいに集まってる……!?」

「え、なに、転がるの!?」


 そして他を犠牲にしてまで集まる事を止めない大砲魔物は、集まって球状になった。ファイアレッド先輩様が仰ったように、まるでそのまま転がってくるようだ。確かにあのまま転がって来れば、中心の大砲魔物は仕留めきれずにこちらまで来る可能性が大いにあるだろう。


「来るぞ――……来るぞ?」


 だが、そんな考えを余所に球状になった大砲魔物はこちらに来る事なく、私達の方とは逆方向――最も大きな大砲魔物へと向かって行った。


「は?」

「跳ねた?」


 そしてぴょーんと、大いに跳ねると、最も大きな大砲魔物の筒の穴の中に入り――


『そう攻撃してくるの!!?』


 ――そのまま、大砲魔物が大砲魔物を発射してきた。

 まさに予想外。奇想天外。

 そうとしか言いようがない攻撃に皆様が戸惑いつつ、球が私達の所に飛んでくる!


「【極・防壁魔法(ライト・ヴァジュラ)】!!」


 しかし間一髪、私達に当たる寸前にフューシャちゃんが唱えた全体防御魔法が唱えられ、私達を覆った。


「皆……大丈夫……!?」

「は、はい。ありがとうございます、フューシャ殿下!」

「危なかった。……本当に、危なかった。ありがとうございます、フューシャ殿下……!」


 相手の攻撃は凄まじい物であった。覆った事により直撃は免れたが、あのまま直撃を受ければただでは済まさなかっただろうと言うのが分かる。なにせ余波だけで周囲の地面や壁を抉り、他の大砲魔物も屠られているのだ。フューシャちゃんが居なければ、私達は壊滅していた可能性もある。


「良かった……守るために学んできた事……役に立った……!」


 フューシャちゃんは過去の歩みが上手く昇華した事に喜びつつ、すぐに次の攻撃に向けて注意をする。


「――よくも皆様を危険な目に!」

「――絶対に許しません!」


 だがその注意が活かされる事は無い。私とティー君が今放てる最大威力の魔法の準備をしていたからだ。

 先程までは次々と来る大砲魔物と、大きな大砲魔物に注意を払っていたため様子見牽制だったが、相手の動きが分かり余波で吹き飛んだせいで向こうの攻撃まで間が空いた以上は、もう待つ必要など無い。


「【河ノ果テノ星(アケルナル)】!!」

「【   (アシャ)】!!」


 ティー君は王族の雷魔法。私はアプリコット様から教わった魔法を唱えた。

 どちらも詠唱破棄のため本来の出力と比べると劣った物ではあるのだが――


「文字化ã‘!?!?」


 それでも、魔物群を滅するには、充分な威力の魔法であった。

 謎の聞き慣れない、耳を塞ぎたくなるような異音を放ちつつ、魔物群は魔法に飲まれていくのであった。







「うわー……こりゃ凄い」

「私達が防御魔法に専念しても意味ないレベルの威力だなぁ、これ」

「というか大丈夫かな。後で遺跡破壊されたとかで、私達弁償喰らったりしない?」

「素直に言えば大丈夫だろう。駄目でも全員で連帯保証するしかないな」

「だよねー」


 戦闘後、班の皆様は私達が放った魔法の痕とモンスターの残骸を見ながら感心したり、これからの事について考えていた。

 ……弁償か。出来れば私の今までの従者のお給金や冒険者の貯蓄で賄えれば良いのですが。


「い、いえ。もしそうなったら全責任は私が負います。大丈夫です、第四王子として私財は充分にありますから!」

「いえ、連帯責任ですよ」

「ティー殿下が居なければ私達どうなったか分からないんですから、さらに責任なんて負わせられません」

「はい、おんぶに抱っこで逃げる先輩ではありたくないので」

「で、ですが私が後先考えず魔法を――」

『先輩の言う事は聞く!』

「は、はい分かりました先輩方!」


 おお、ティー君が押されている。というより先輩方がとても強いと言った方が正しいかもしれない。

 私も親しみを込めて接してはいるが、第四王子である存在にあのような態度で居られるとは。私的には好ましい先輩方である。


「しかし、なんだったのでしょうね、このモンスター達は」

「うん……見た事無い……モンスターだったね……」


 それにしても、このモンスターは何処から来て、どういった存在だったのだろうか。

 遺跡の発生源として噂されている、古代技術が眠る施設から出て来たのだろうか。……もしこのモンスター達が未確認のモンスターならば、これも兆候の一つなのだろうか。


――あの声も気になりますし……


 それにこのモンスター達が現れる前に聞こえた声も気になる。

 男性か女性かは分からないが、あの声は確かに聞こえて――


「……まったく、折角真の生物を送り出したというのに、子供(ガキ)共に殺されるとはね」


 その声を聞き、今まで何処か気の抜けていた皆様は瞬時に戦闘態勢へと移行した。

 声がしたのはモンスターがやって来ていた穴の方からであり、台詞はまるで事情を知っているかのような内容であった。今まで居なかった第三者である事を踏まえても、さらなる戦闘を警戒するには充分だ。


「まぁ良い。こんにちは、愚かな蠅共。気分は如何かな?」


 そして私達が声をした方に居たのは、私達の全く知らない白衣の女性であった。


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