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声を聴く(:灰)


View.グレイ



 さて、先程説明した通り、この遺跡にはモンスターが湧く。

 地下奥深くに巣があってそこから湧いているとも、古代技術が集約された施設が奥地にまだあってそれが稼働し続けモンスターが作られているとも言われる禁止(みかい)区域。

 今回の調査はモンスターの調査も含まれるため、その禁止区域での調査になる訳である。

 すると当然調べるためにモンスターとの戦闘にもなる訳であり。


「【雷剣推進(ライトニングスラスト)ォ】! 行きましたよ、グレイ!」

「はい! アプリコット様直伝、廻れ転輪、【噴炎哨戒(ローカパーラ)ァ】! ――フューシャちゃん!」

「え……えと……! ラ……【花鳥風月(ランダムスロット)ぉ】……!」


 このように、私達は連携をしあってモンスターを倒していった。

 私達がモンスターを倒すと「おぉー!」と感嘆の声をあげて下さる班の他の皆様の声を受けつつ、周囲に他のモンスターが居ない事を確認する。


「では、皆さん。申し訳ないですが、このモンスター達の調査。及びサンプル採取お願いしますね」

『了解いたしました、バーガンティー殿下!』

「ティーで構いませんよ。私の方が後輩な訳ですし」


 そしてティー君は雷神剣を納め、他の班員の皆様にお願いをする。

 私達は戦闘面では力になれるが、モンスターの属性チェックやサンプル採取となるとあまり役には立てない。ので、こうして役割分担をしつつ遺跡の奥へと進んで行っていた。


「アッシュ様とシルバ様の方は大丈夫ですかね?」


 そして皆様が調査をしている最中に、周囲を警戒しながらティー君とフューシャちゃんに、別の場所を調査しているアッシュ様達の心配をした。

 御二人は努めていつもの様に振舞おうとはしているが、私でも分かるほどに精神が此処にあらずといった御様子だった。私としてはあの様子でモンスターと戦えるのかと心配になる。出来れば一緒の班で心配をしていたかったのだが。


「余計な心配をさせないように、と明確に私達を避けましたからね」

「うん……尤もな理由並べて……別の班にしたもんね……大丈夫かな……?」


 なんだか色んな言葉を並べて別の班になってしまったので、アッシュ様達の今の様子が分からない。御二人共優秀な方々なので下手はうたないと信じたいが……


「あの御二人……というより、メアリー様大好き生徒会のメンバーの方々は、割と公私混同しますからね。心配です」

「ああ、確かに。“公”をキチンと熟した上で“公”に“私”を侵食させていくという高度かつ文句を言いにくいやり方をするよな」

「ですです」

「……辛らつだね……二人共……」


 “私”は“公”の糧に。“公”は“私”のために。ある意味好きな相手のためならば当然とも言える行為ではあるのだけれど、メアリー様を好きな皆様はその度合いが強いと言うかなんと言うか、ともかく“私”を全力で“公”につぎ込んでくる。あの有様は私も見習いたいものである。


「それに御二人は――」

「ティー殿下、少々よろしいでしょうか!」

「ん? ああ、良いですよ。ちょっと失礼しますね」

「はい、いってらっしゃいませ」


 私達が会話をしていると、モンスターの調査を行っていた班の皆様がティー君を呼び、ティー君は呼ばれたヒトの元へと駆け寄っていった。どうやら雷属性のなにかについてティー君の知見を聞きたいようである。

 ……この程度の距離ならば、別に「生徒会のメンバーは二人以上で行動する事」から外れ無いだろうから大丈夫だろう。


――さて、フューシャちゃんとなにを話しましょうか。


 アッシュ様達の話の続きをしても良いけれど、今更どうしようもない事を話しても意味はない。ならば合流した時にどうするべきかを話しても良いけれど……


「しかし、フューシャちゃんも戦いに慣れてきましたね」

「うん……引きこもりではあったけど……元々……戦闘訓練は……してたからね……」

「ほほう、やはり王族特有の訓練……そう、幼少期から体一つでモンスターの居る森に放置し、死と隣り合わせでいるという訓練を……!?」

「それは流石に……しないかな……」

「ではどういった――」


 暗い話をしてもしようがないので、今の戦闘の感想でも言い合うとしよう。なにせ相手の心配ばかりで、私達の役割をこなせなかったら本末転倒なのだから。


「――という訳で、錬金魔法使いといえば“君のような勘のいいガキは嫌いだよ”という決め台詞があるようです」

「それ……なにか……違う気がする……」

「ですよね。クリームヒルトちゃんもメアリー様も子供が好きですからね」

「そういう訳でも……ないよ……」

「ではどういう――おや?」


 と、色々とフューシャちゃんと話していると、ふとある影が視界の端に見えた。

 それはこれから向かう方向ではあるのだが、事前情報とは違う穴がある場所。


「どうしたの……?」


 私の様子を見て不思議に思ったフューシャちゃんは、私が見ている方向と同じ方向を見た。


「あの穴の方になにか影が見えた気がしまして」


 私はフューシャちゃんの視線を誘導するように、先程見えた影の方を指をさしつつ、一言を言い。


「【戦争死神の箴言(Hávamál)】」


 その声を、聴いた。


備考 魔法

雷剣推進(ライトニングスラスト):雷神剣を使った雷攻撃。クリームヒルトと共同開発。バーガンティー曰く「一生大事にします!」

噴炎哨戒(ローカパーラ):アプリコット直伝の炎技。昔は草刈りに使用していたが、今では立派に攻撃魔法になった。「アプリコット様はこの技をフェンリルに使って撃退したのです! 私めもいつか追い付きます!」

花鳥風月(ランダムスロット):当たったモンスターに1~10段階のランダムな威力のダメージを与える。小さな魔力しか使わないので上手くいけば効率よく大ダメージを与えるが、安定しないので使う人は少ない。が、フューシャ持ち前の運で毎回大ダメージを与える模様。


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