利用していたのさ!(:黄褐)
View.エクル
スカイによる新たな共通点である“人タラシ”。確かに殿下だの公爵家の者だの、それぞれの方法で魅了しているのは確かである。
しかしメアリー様と我が妹はそれを認めるのが嫌だったのか、スカイとアプリコットに対し色々と言いだしている最中に件のヴァーミリオンとバーガンティーが現れ、互いに魅力について語り合って色々と生徒会は騒がしくなっていた。
メアリー様は小悪魔を目指すとは言っていたが、必死に自分は人タラシでは無いと言いつつ、ヴァーミリオンに魅力を語られるのは嬉し恥ずかしで複雑だったようである。
え、何故止めなかったのかだって? だって止めたら慌てふためくメアリー様を見る事が出来なくなるのだもの。止めるだなんてとんでもない。
「それで、実際顔の良さを利用して女の子を誑かしているのかな、エクル君は」
しかし今の私は、そんな慌てふためき可愛いメアリー様を眺める事はせずに、フォーンと共に生徒会室を離れていた。理由はどうやら件の要請についてノワール学園長と話し合いをしたいとの事であり、話すのに私が適任という事だ。
そして渋々ながらメアリー様と可愛い妹のためにも働こうと、フォーンと共に学園長室まで行く最中に、今の問いをかけられた。
「誑かす、と言うほどではないけれど、自身の顔が整っている自覚はあるからね。それを利用して女の子を誘惑をした事は確かにあるよ」
「わー、言うね」
「前世の女性が、外見で見惚れるような顔にデザインされた顔が、そのまま現実に来ている感じだし……というか、言い寄られてくることもあるのに自覚が無い方が嫌味ったらしいよ」
「確かにそうかもね。エクル君、入学当初から家柄抜きにしてもモテてたからなぁ」
「まぁね。さらには眼鏡にもこだわりぬいているし、モテるのは必然というものだよ!」
「……そこは重要?」
「え?」
「……なんでもない。眼鏡は良いよね」
「もちろんさ。フォーンくんはかけないのかな?」
「気分転換にかける時はあるけど……」
「良ければ十種くらいプレゼントするけど」
「……気持ちだけ受け取っておくよ」
「そうかい、残念だ」
前世から思っていた事ではあるが、眼鏡は素晴らしいものだ。
その人にあった眼鏡のフレームをつける事でイメージをがらりと変えるインパクトは――(略)――というわけで、前世でよくあった“眼鏡を外す事でイケメン、美少女に”というのは悪しき文化という他ないという事だ。特殊な目を封じるとかならまだ良いけど、眼鏡を拘束具扱いするなと大いに叫びたい。
「……で、話は戻すけど、この顔を利用して以前は誑かす……とまではいかずとも、色々誘惑していた事は事実だよ」
「へぇ、女遊びをした感じ?」
「そこまではしてないよ。互いに遊びならともかく、女を喰っては責任を取らない男なんてこの魔法でぶっ飛ばしたいくらい嫌いだよ。だから、しない」
「……なんか恨み強くない?」
「昔色々あってね」
私では無いのだが、前世の高校の友人が色々あったので遊んでは捨てる男はぶっ飛ばす。右ストレートで殴った後ぶっ飛ばす。具体的には私の魔法で一発した後公的機関に引き渡す。伯爵家の力を使えば魔法でぶっ飛ばそうと権力でもみ消せるからね!
「で、女の子に近付いて情報を得て、それを元手に流通に活かしたり、その情報自体を交渉に使ったりしていたんだよ」
「女の子を利用した訳だ」
「そういう事だね」
「認めるんだ」
「メアリー様とフォーサイス家……大切な人と家のために使える物を使った、と言えば聞こえは良いけど、そこは否定してはならないからね」
こちらが見返りで、アイドルのようなイケメン(とボイス)がサービスをするような事をして喜ばせていたとしても、利用はしていた。互いが互いの欲望を満たすためとはいえ、そこを否定して「利用するのは当然だ!」と言うのはなにかが違うだろう。キチンとそこは自覚して行動しておかないといけない。
「まぁ後はこの顔に興奮……もとい、好いている男性もサービスして利用した訳だし、女の子だけという訳では無いよ」
「……なにをしたの?」
「…………。よし、そろそろ学園長室に着くよ、フォーンくん!」
「待って、なにをしたのエクル君!?」
それはあまり思い出したくない事だ。
貴族の男性の中には、女性に言い寄られて女性に飽きたからと、男性に興味を持つ貴族も居て、その貴族にとっては私は意外といける、だそうだ。……多分、私が伯爵家じゃなくちゃ色々あったと思う。本当に伯爵家で良かった。お陰でちょっとしたことで済んだのだから。
「まぁまぁ、その件は後で話す事は無いとして」
「無いんだね」
「うん、無い。ともかく学園長室に入ろうか」
「……そうだね。――フォックス及びフォーサイス家長子、只今参りました。入ってもよろしいでしょうか」
話す内容は気になるが、それよりも今は用事を優先すべきだと判断したフォーンは気持ちを落ち着けた後、ノックをし名乗り上げた。
「ああ、来たか。入りたまえ」
「失礼します」
中から返事があり、私達は学園長室に入る。
さて、私もメアリー様と妹のために、まずは学園長から情報を得るとするか。
なにせノワール・アルベール学園長は美形が大好きな面食いだ。それを利用して学園長から得られる情報を得て――
「――これはこれは。お初にお目にかかるな、エクル・フォーサイス」
――多くの人と会うと、稀に他とは違う存在と会う事がある。
流通に多く関わるフォーサイス家の者として、多くの人と会い、多くの相手の能力を把握しようと努めて来た。
そして多くの相手と出会っていくと、明確に他とは違う存在と会う事がある。
例えばメアリー様のように才能に溢れて、前世の白様と同一人物だと分かったように。
例えばクリームヒルトやクロが本能を見せた時のように。
例えばマゼンタの才能が外れていると知った時のように。
「そして会うのは二度目か、フォーン・フォックス。久しいな」
私は今、“それ”を感じ取っていた。
相対すのは初めて。声を聴くのも、顔を見るのも初めて。
彼については、噂程度しか聞いた事が無い。
「ああ、すまない。こちらが名乗らずに、話すのはよくあるまい」
会って数秒、感じたのは一目で。
「俺の名はライラック・バレンタインだ。――どうかよろしく頼むよ、若き未来の希望達よ」
――この男は、敵に回してはならない存在だ。




