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気になる要請(:黄褐)


View.エクル



「君達、随分と楽しそうだね」

「あ、フォーン会長」


 メアリー様の反撃に他の女性陣がダメージを受けていると、フォーンが何処か呆れたように生徒会室に入って来た。どうやら今日は生徒会室に居たのを気付かなかった、という事ではなかったようだ。


「なんの話をしていたのかな?」

「生徒会の女性陣はフューシャ殿下を除けば恋愛に日和っている、という話ですよ」

「……それ、私も含まれているのかな?」

「一応は。最近色々葛藤されているようですし」

「言い訳になるけど、一応言っておくね」

「はい、どうぞ?」

「私が日和らなかったら私は捕まるからね?」

『あー……』


 確かフォーンの好きかもしれないと葛藤している相手は、シキ在住のブラウンだったか。私が裏で手を引いていた時に、彼をどう無力化しようかと思ったような戦闘強者の褐色の少年だ。

 見た目は幼さが残りつつも、生徒会メンバーに居てもおかしくなさそうな外見ではあるが、実年齢は一桁という、手を出せば捕まってしまう相手である。……応援はしているが、難儀な相手を好きになったものである。


「さて、そんな恋愛に関しては男性陣に攻められるばかりで、攻めようとしてもそれ以上の好意を返されどうしたら良いか分からなくなる生徒会の皆に話がある」

『うぐ……』


 フォーン。あまり事実を言わないでやって欲しい。思い当たる節がありすぎて全員にダメージが行っているじゃないか。


「お話の前にちょっと言わせて頂くよ、フォーンくん」

「なにかなエクル君?」

「彼女らは意識的に攻めると弱いだけで、自分らしく無意識で行くとめっぽう強くて相手を魅了するんだよ! 特にメアリー様はね!」

「それは……フォローになっているのかな?」

「天然って言っているだけだからフォローではないよ。ただ言いたかっただけさ」

「エクルさん……」


 彼女らは意識すると滅法弱くなるタイプの天然だ。

 メアリー様は自然に振舞うと多くの者を魅了し、意識すると明後日の方向へ暴走する。

 クリームヒルトは意識すると……というよりは、経験が無いのでどうすれば良いかが分からないだけだ。多分今の相手に対して学べば強くなるとは思う。今は弱いが。

 アプリコットは普段通り振舞えば意中の相手は大いに喜ぶが、喜ばせようとすると普段通り振舞えない。

 スカイは根が真面目なので行こうとすると極端に走るタイプである。とはいえ、この中ではまだ攻めは強いが。


「あはは、エクル兄がまた変な暴走をしてるね」

「アプリコット、アレって私も当てはまるんでしょうか」

「スカイ先輩はどうであろうな。そもそも我はアレが当てはまると認めたくない」

「あはは、私だって」

「私だって認めたくないです」

「私もです」

「メアリーちゃんはね……」

「メアリー先輩はなぁ……」

「メアリーは……」

「なんです、皆さん私にだけ厳しくないですか!?」


 ……まぁ、どう思うかは人それぞれであるけどね。ちなみに私はそれなりに女性の扱いは慣れている方である。絶賛苦しませている最中だけど、多分慣れている。


「で、ごめん。話を逸らしてしまったね。続きをどうぞ」

「うん、生徒会の皆に連絡なんだけど。今度の課外学習に関して緊急要請があったんだ」

「緊急要請……とは、穏やかではありませんね」


 アゼリア学園には何度か課外学習がある。

 前世の【火輪(かりん)が差す頃に、朱に染まる】でいう所の絆イベントのようなものなのだが、この課外学習には生徒会が多く関わっている。

 例えば課外学習先。当然学習する地にいきなり学園生が行く訳にはいかないので、事前連絡が必要になる。その連絡、そして学園生の宿泊先の確保。さらに確保をしても学習をしなければならないので、学習先に学園生が行っても問題無いレベル(モンスターの強さなど)の学習先があるか。さらには多くの学園生が居るので、レベルに応じた振り分けも必要になる。

 という、ハッキリ言って「そんなこと生徒にやらせるなよ、教師がやれ!」という内容が生徒会の業務であるのである。一応教師もある程度手伝いはするのだが、これは本当に生徒にやらせる事なのだろうか、という業務が生徒会にはあるのである。

 ちなみにメアリー様にその事を言った所「え、生徒会って大抵の学園の実権を握っているのでは?」と返された。……私が知らないだけで、前世でも案外そうだったのかもしれない。


「緊急要請とは、来て欲しいという要望でもあったのですか?」


 と、それより今は緊急要請だ。

 アゼリア学園生は優秀であり、それでいて軍部や騎士団ほどの依頼料や煩わしさはない。そして冒険者よりは身元に保証がある。なので重大では無くとも気になる事が有り、集団が必要な依頼がある場合に学園に要請がある。去年で言えばシキだろうか。アレは第二王子が関与していたためやや違うかもしれないが。


「うーん、ちょっと違うかな。来て欲しいというのは確かなんだけど、来るメンバーの指示があった感じでね」

「誰々が来て欲しいーってやつみたいな感じなの、生徒会長さん?」

「クリームヒルト君の言う感じだね」

「でもそういうのってあまり通らないんじゃなかったけ? よく分からないけど、特定の貴族を狙われないようにー、とかそんな感じで」

「うん、通常ならね。だけど依頼元と指定メンバーの内容がどうも妙な感じで」

「妙?」


 そう言いながらフォーンは手元の資料に目をやる。

 髪で隠れた目がそこに書いてある文字を読み、改めて見てよく分かっていないような表情になる。


「どんな内容なんです?」


 そしてメアリー様が問いかけると、フォーンは顔をあげ。


「指定メンバーが“メアリー・スー。クリームヒルト・ネフライト。エクル・フォーサイス。クロ・ハートフィールド。に関わりがある者”で、依頼元が……“ライラック・バレンタイン”なんだよ」


 と、告げたのであった。


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