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心配をされて(:?)


View.?



 私はどうやら失恋したようである。

 ただ、失恋の自覚はあまり……というか、まったくない。

 どうやら私は恋をしていたらしい相手がいるそうなのだが、正直よく分からない。

 その相手を好きかどうかと問われれば間違いなく好きではあると迷わず答えるのだが、“異性として”好きかどうかと問われれば……異性という事は理解しているけれど、意識はしていない、というような存在だったのである。

 なのでその相手が好きな相手を見つけた際にも素直に祝ったし、以前から幸せになるべきだと思っていたので心の底から嬉しかった。これは見栄でもなんでもなく、今も心の底から二人が幸せな姿を見ると私も嬉しくなるほどだ。羨望はあっても嫉妬は無い、という感じである。


――というより、私は他者の幸せを羨んでも妬むほどの感情を有してはいないので微妙かもしれませんがね。


 私は今幸せだ。多くの友も居るし、好きな事に夢中で没頭出来る。

 料理を食べれば美味しいと感じるし、身体は自由に動かせるし、森の中で裸になり自然を感じる時など最高だ。

 こんな幸せになる方法を知っている私が、他者の幸せを妬むなんて事はまず無い。……それ故に、失恋しても妬む事は無く、悲しいという感情が湧かないだけなのかもしれないのだが。ようは恋に重きを置いてないだけかもしれない。


――恋。……恋、かぁ。


 最近というべきかは微妙だが、シキは割と恋の多い場所だ。

 割れ鍋に綴じ蓋、というのは失礼かもしれないが、我が強いが故に一度はまればとことんはまる、とでもいうのかもしれない。ともかく恋が多い。

 私が特に仲の良い間柄で恋をしている存在だと……先ほど挙げたオーキッド・■■■■■■と、ウツブシ・■■を除けばエメラルド・キャットだろうか。


 エメラルド・キャット。毒を性癖とした、あらゆる病気を治す万能薬を望む女の子。

 親であるグリーン・キャットは貴族であったのだが、色々あり現在は貴族ではない。事実、彼女自身は親が貴族である事も知らなかったほどだ。

 そんな彼女はかつて、母の死から目を逸らすために万能薬を求めたのだが、その際に倫理観が危うい事まで行いそうになり、踏み越える直前でアイボリー・アレクサンダーにより引き戻された過去を持つ。

 それ以降は毒を自ら摂取しては親を困らせる、別の意味で困った子になったのだが……これは怪我を見ては興奮し、誰よりも怪我の根絶を望むアイボリー・アレクサンダーの真似だ。

 幼子が憧れの年上お兄さん、お姉さんの真似をする現象、とでも言うべきか。彼女は怪我を治すアイボリー・アレクサンダーに対し見惚れ、結果として真似をし始めたのだろう。ただ、同時に引き戻された時に言われた言葉に「あの野郎、絶対に見返してやる!」と反発心を抱いていたので、真似は真似でも「怪我を見ては興奮して治す」が「毒を摂取して興奮して、この症状を抑える薬を開発する」、という方向に行ったようだが。

 そして彼女は多分、アイボリー・アレクサンダーに対する恋心は自覚していない。あくまでも腕は認めるうざったい喧嘩仲間、という感じだ。それ所か彼女は今、首都でのデートでスカーレット・ランドルフに見惚れてしまって気になっているようなので、それを恋心と名付けた場合には喧嘩仲間という認識からは外れる事は無いだろう。せいぜい「家族以外で最も自分らしく接する事が出来る異性の悪友」という感じかもしれない。


――ある意味、私と似ているのかな。


 私も恋心を抱いていたという相手の認識は、「血の繋がった家族以外で最も自分らしく接する事が出来る相手」だ。ようは距離感が近いけど、家族ではない。だけど家族。という感じである。

 ……まぁ、私の場合は親というか実家がかなりアレな所であったので、血の繋がった家族なんて次会った瞬間にレッツゴー&タックルを喰らわせてやるが。そして今後一生関わりたくはない。

 ともかく、彼女はある意味似ている所があるので、仲が良くなったのかもしれない。

 それと彼女は多分、もう少し経てばシキから居なくなると思う。何処かへ行く先が首都の研究室なのか、まだ見ぬ毒を求めての冒険かは分からないが、彼女はシキを出る筆頭だろう。……そうなると、少し寂しく感じるなぁ。


「オヤ、どうかしましタカ?」


 私がふと、仕事で外に行くと声をかけられた。

 この声はロボ、あるいはブロンド・フォン・アンガーミュラー。金色の髪と、左右違う瞳がとても綺麗な女の子だ。

 かつては帝国の貴族として生を受けたのだが、生まれた瞬間から顔と身体に呪いの痕があり、迫害された子だ。幼少期から貴族というよりは外に出さない、虐める対象としての使用人扱い……ようは「アイツならなにをしても良い」という子にするために育てた子だ。今は呪いと一緒に火傷の痕もあるのだが、この火傷の痕はその虐めの際に負った傷である。


――……本当に、あの時はなんだこの一家と思いましたね。


 ……とはいえ、私はなにも出来なかった訳であるのだけど。

 ともかく、そんな彼女は結局家を捨て、旅の先で謎の遺跡と謎の古代技術を発見。とりあえず装備してみたら、「なんかよく分からないけど強い力を手に入れたぜ!」という感じで今にいたっている子だ。何故今のような力を得ているのか、どういう仕組みなのかロボ自身も知らなかったりする。そのせいと言うべきなのか分からないが、定住場所を決めずに転々とした所を、「シキなら居ても目立たない!」という理由でシキに居るのである。ちなみにシキでも大いに目立っているのだが。

 ともかく、そんな彼女は最近良い仲になっているルーシュ・ランドルフと一緒に仲良く手を繋ぎながら(話しかける直前で離しはしていたが)、私を心配そうに声をかけてくれた。

 ……デート中なのに、何故私に声をかけたのだろう。


「ナニカ、心配事があるような顔をされてイタノデ」


 つまり、デート中であっても見逃せないほどに私は沈んでいたのか。これは悪い事をしたものだ。大丈夫だと伝えて、デートに戻って貰う事にしよう。


「悩みがあるようデシタラ、飛んでストレス発散しマスカ?」


 けれど意外にもさらに詰めて来た。そんなにも私は沈んでいたように見えたのだろうか。

 しかしデートよりも私を心配するとは……申し訳ないと思うと同時に、そこまで想ってくれる事を嬉しく思う。

 だが、心配は本当に無用なので、元気よく返事をするとしよう。ロボもそうだし、折角あんなに小さくて可愛かったルーシュ・ランドルフがデートをしているのだ。その邪魔をしてはいけない。

 だから私は――


「ねぇ、失恋ってどんな事だと思う?」


 つい、そんな質問をしてしまった。


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