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衝撃の事実(:紺)


View.シアン



「とりあえず、脱出ー。ふー、刺激的な時間だったね!」

「僕の大半は視界が無かったけどね。ある意味ではそれも刺激的だったけど」

「そうだね。じゃ、改めて見回り再開しますか!」

「了解――しました。行きましょう」

「ところでお勤め中のその敬語、いつでも止めて良いからね」

「その時が来ればそうします」


 大の大人が(エロ)について話すという、妙な部屋があった空き屋敷からなんとか脱出できた。見つからないようにこっそりと出たつもりではあるけれど、最後の方は私の動揺もあったので男性陣には気付かれていたような気もするが、こちらに害意が無いと分かったのかスルーしてくれたようだ。


――あれがイオちゃんのお兄さん、か。


 一応数日前に教会のキッチンを使いたいという事で会って会話はしたのだが、まぁ、なんと言うか……事前情報とはかなり違う男性であった。確かに見た目というか立ち居振る舞いは私が最大司教を見かけた時に感じたモノと同じ、“言葉では説明し辛い重厚さ”を感じられた。

 けれど話せばとても話しやすいヒトであったし、妻に対して不器用な……なんというか、「ああ、イオちゃんのお兄さんだ」と思わせる様な親しみやすさがあった。

 彼は心から妻であるラッキーちゃんに好きを伝えたい、不器用だが真っ直ぐな男性だと、私の勘も告げていた。


――でも、やっぱり公爵家の一員、だね。


 ……けど、同時に彼は公爵家、バレンタイン家の一員だと思わされた。

 彼は多分私達とは違う道筋が見ているヒトだ。正確には見えてしまっている、と言うべきかもしれないが。

 イオちゃんは彼を「見えていたと思っていた本当の感情も、見せられていた感情であった」というのも、多分彼が“出来てしまっていた”事であったのだろう。それが最善であるから、それ以外の選択肢を選べなくさせられていた、という所か。……恐らくバレンタイン家の教育がそうさせていたのだろう。


「どうかしましたか、シスター・シアン。なにか考え事でも?」


 ……まぁ、とはいっても、それも今はどうにかなっているようだが。クロ達夫婦の影響とでも言うべきか、今はああして、


「ううん、なんでもない。イオちゃんのお兄さん達がバカ夫婦やれていて良かったな、って思っただけ」


 と、思える様な振る舞いが出来ている。彼とイオちゃんの父に会った時に再び今の振る舞いを封印しないかは心配だけど……ま、そこは私が関与すべき事では無いだろう。夫婦の愛や家族愛が彼を支えると信じるとしよう。


「ああ、あの部屋に居たのはソルフェリノ様達だったんですね」

「そういえば知る前に塞いだんだっけ」

「はい。なんとなくそうなのかな、とは思ってはいましたがね。彼らが……」

「どうかした?」

「……いえ、去年の事を思い出しまして」


 去年というと、スイ君が帝国に居た頃の話だろうか。だが何故急にその事を思い出したのだろう。


「実は僕、彼のお兄さんと話した事がありまして」

「え、お兄さんって……イオちゃんのお兄さんでもある」

「はい、ライラック様です」


 それは意外というかなんと言うか。しかも“話した”とは、どういった状況だったのだろうか。


「大丈夫? もし、公爵家の威圧、的な事をしていたのなら、天罰が当たるように呪っとこうか?」

「シスターとして大丈夫なの、それ」

「大丈夫、今ならこっちにはその“天”そのものが居るからね。天罰も呪いもイニシアチブはこっちにあるんだよ……!」

「……ふふ、ありがとうシアンお姉ちゃん。だけど大丈夫だから――大丈夫ですから。変な事された訳じゃないよ」


 ありゃ、そうなのか。一応こっちの冗談は素直に受け取って貰えたようだけど、言い方からして本当になにかあった訳ではなさそうである。

 でも、だとすると何故スイ君と話したのだろう。綺麗な男の子だから、そっち系の趣味で興味を持った、とかかな。……イオちゃんのお兄さんだから無いと信じたいが、一応後でイオちゃんに確認しておこう。


「でも不思議な男性であった事は確かですね。ある意味では……クロさんみたいな感じです」

「というと?」

「なんといいますか、こんな私にも対等に――」

「やっふぅシアン先輩にヴァイス先輩!」

「――うわっ!?」


 と、スイ君がなにかを言おうとした所で、突然の乱入者が現れた。

 この声とテンションの高さは……


「び、びっくりした……急に抱き着いて来ないでください、シスター・マゼンタ」

「あははは、ごめんごめん!」


 やはりマーちゃんであった。いつもよりテンション高めで、スイ君に抱き着いて来て――あれ、そういえば彼女についてなにかあったような気がする。確かスイ君にこのまま会わせる訳にはいかないと思うような、なにかがあったはずだ。それを考える前に色々あって考えるのを忘れていたのだが……あれ、なんだっけ?


「確か今日は大切なヒトと会う、と仰っていませんでしたっけ」

「そうそう、それで一緒に温泉に行く途中に二人が見えたからね。紹介をしに来た訳なんだよ!」

「あ、そうなんですね。ええと、後ろに居る女性と……エメラルド?」

「うん、エメラルドも大切なヒトだけど、もう一人の茶色髪の子が私にとって特別で大切な子!」


 茶色髪……ああ、正体の防止用に髪色を魔法で変えているレットちゃんか。まぁシキではほとんどにはバレてはいるけど、冒険者とか行商人にバレたら色々面倒だし、しないよりはマシというやつだろう。


「ええと、シスター・マゼンタの……御親戚の御方でしょうか。はじめまして」


 あれ、そういえばスイ君とレットちゃんって初対面だったっけ。

 なら彼女が第二王女だと気付いたら驚くだろうな――あれ?


「ううん、親戚の子じゃなくって――」


 あ、そうか。私がなにを危惧していたかが今気づいた。私は――


「彼女は私の愛娘である、スカーレット! どう、そっくりでしょ!」

「――はい?」


 ……私は、スイ君がマーちゃんの本当の年齢を知らない事を忘れていたのだ。

 どう見ても二十歳は超えているレットちゃんを娘と紹介するマーちゃん。

 スイ君は紹介された後に二人を交互に見た後、


「……はい?」


 そのような反応しか出来ない程に、理解不能そうな反応をした。


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