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幕間的なモノ:兄妹仲良く?_1


幕間的なモノ:兄妹仲良く?_1



 私ことヴァイオレット・ハートフィールドは現在、教会の調理場(キッチン)に立っている。

 ソルフェリノ兄様が来て三日、ムラサキお義姉ちゃんが来て二日。ムラサキお義姉ちゃんとシロガネの謎のバトル後、何故かクロ殿とソルフェリノ兄様が神父様達を巻き込んでバトルを繰り広げてから約一日半。昨日と今日の昼すぎまでは兄様達が今後の教育方針について話し合っていた。

 そして現在、兄様達の従者の半分は自由時間。半分は昨日と入れ替わりでこの屋敷で手伝いをこなし、数名はクロ殿の下で服飾・裁縫指導を受けている。

 どうやらクロ殿の前世の故郷の服と似た服を、直したりした事を見た者達がクロ殿の服飾の腕前に興味を持ったらしく、師事を受けているようだ。そしてムラサキお義姉ちゃんもその中の一人である。

 とはいえ、裁縫というよりは着こなしの方を学ぶためにクロ殿の所に居るようである。なんでもクロ殿としては基本知識として持っている、ワフクの美しい着こなし方がムラサキお義姉ちゃんにとっては知らない知識であるそうで、それに興味を覚えたようである。……それとは別に、あの大きな胸についての対処方法を学びたい、という気持ちがあったようでもあるが。


――しかし、ムラサキお義姉ちゃんは不思議そうな表情であったな……


 私としては裁縫も着こなしも知っていてもおかしくはないと思えるのだが、ムラサキお義姉ちゃんからすれば「え、なんでこの義弟ちゃんは異国の服に詳しいばかりか、女性の服とか胸の対処方法を知っているのだろう……?」という感じだ。不思議に思うのも無理はない。


――彼女らに関しては良いとして。


 不思議に思われては居るが、彼女らについてはまだ良い。

 話は逸れたが、今私は教会の調理場に立っているのである。

 ハートフィールド邸は現在普段の数倍の人数が滞在しており、いくら向こうの手伝いがあるとはいえ調理場はフル稼働する必要がある。そのため私のような料理は出来ても従者としての腕は低い私のような者が下手に手を出すと逆に迷惑がかかる。

 にも関わらず、私は現在調理場、しかも教会の調理場に立っている。その理由は……


「よし、早速料理を作るぞ妹よ! 兄妹初めての共同作業だな!」


 ……この、今までは血の繋がった兄とはいえ、怖い部分が多く会うたびに委縮していたソルフェリノ兄様が。

 ここ数日ですっかり恐怖心が薄れ戸惑いが先行するソルフェリノ兄様が、一緒に料理をしようと言いだしたからである。


「あの、ソルフェリノ兄様。失礼ながら料理の経験は?」

「学園での校外研修などで行った野外調理くらいだ」

「それなのに今日のご飯の料理を作る、と」

「そうだ。なにも知らずに食べたムラサキや従者達が“この美味しい物を旦那様が!?”というリアクションが取れる程のモノを作りたい」

「期待値が高すぎやしませんか」


 ……本当に、もう。このソルフェリノ兄様は本物のソルフェリノ兄様なのか。

 これだとまだゴルドやシュイ、イン辺りが姿形を変えて騙っている、と言われた方が納得する程の変わりぶりである。

 それほどまでに我が子の将来を危惧した、という事なのだろうが、変わりすぎやしないだろうか。もっと別の理由があったりしないだろうか。


「冗談だ。流石に舌の肥えているアイツらを誤魔化せるとは思えない。だが驚かせたいと思うのも事実だ」

「はぁ、そうですか。言っておきますが、クロ殿は食べ物を粗末にすると、とても怒りますよ」

「実に好ましい事だ。しかしそういう類ではない」

「となると……なにをされるのです?」


 奇抜な発想で驚かせる――例えば料理に魔法を仕込む、奇天烈な味にするなどといった事をすると思ったが、違うようだ。しかしそうなると驚かせるとはなにをするのだろう。


「デコレーションだ」

「つまり……味ではなく、見た目で楽しく驚く物にする、と」

「そうだ。そしてデコレーションするためのデザートは現在、シロガネがハートフィールド邸で作っている。もう少しで持ってくるだろう」


 兄様の突然の行動の被害者が既にもう居たのか。

 だが、アイデアとしては良いモノだ。料理において見た目は重要であるのだが、これは意外と難しい。私が料理を作り始めた頃は整えるだけでも苦労したモノだ。しかし基本となる料理(デザート)は他の者が作り、デコレーションをする程度ならば一から作るよりは遥かに簡単であり、相手の目に留まりやすい。料理をほとんどした事が無い兄様が、料理で驚かせるという点では良いと言えるだろう。だが……


「ソルフェリノ兄様。兄様より一年ほど早く料理を始めた者として、僭越ながら言わせて頂きます」

「許す。どうした」

「まず、この材料と道具を見る限り、兄様は飴細工のような、立体的な物を作り、デコレーションする予定ですね?」

「そうだな。出来れば俺とムラサキの特徴が出た人形のような物を作りたいと思っている」

「そうですか。……では、改めて言わせて頂きます」

「うむ」

「……料理がそんなにも簡単であったら苦労はしないのです。――夕食まで、泣きを見る覚悟で行きますよ」

「え」


 デコレーションが簡単であったら、苦労はしない。

 ちょっと頑張れば出来るだろう、で出来れば苦労しない。


 ――さて、兄妹初の共同作業は、兄様の作戦が上手くいくように鬼となるとしよう。


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