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添い寝をするかされるか


 俺のなにかが起こるフラグのような思考はきっと気のせいだ。だって来客という時点でなにかが起こる事は確定しているんだ。フラグを立てるまでも無くなにかが起きてしまうんだ。だからきっと気のせいである。……あれ、なんだか本末転倒な気がするな。……気のせいだろう、多分。


「ところで、神父様の調子はどうだ?」


 俺達家族の事はともかくとして、ここ最近気になる事をシアンに聞いてみた。

 内容は神父様の状態というか、容態というか……ともかく神父様に変わった事は無いか。

 神父様の身体は少々特殊な状態に陥っているらしく、場合によっては死に至る可能性もあるとトウメイさんから聞いている。あくまでも場合によっては、ではあるし、今まで大丈夫ではあったが、聞いた以上はどうしても気になってしまうのである。

 この話はシアンにはしてある(マゼンタさんは自力で気付いていたらしい)のだが、神父様にはしていない。いつ話すかはシアンに任せてあり、まだ話してはいないようである。


「特に問題無し。色々観察したけど、特に変わりなく過ごせているよ」

「観察って、どんな風にだ?」

「遠くから眺めたり、近くで見たり、そして、」

「いつも通りの格好良い神父様、いや、毎日見てるけど日に日に格好良くなっている! ……か?」

「よく分かったね、イオちゃん!」

「似た実体験を得たからな」


 なるほど、つまり俺がヴァイオレットさんに感じているものと同じ感じか。……って、そうじゃない、ラブラブなのは良いが、今は別の――ん? ヴァイオレットさんも実体験という事はつまり……?


「まぁ、ともかく異常はないよ。マーちゃんにも聞いたけど、条件を満たさなきゃ普通に過ごせるし、生きていけるらしいから。いずれ機を見て話すつもりだよ、イオちゃん」

「マゼンタさんは反対しなかったか? 一度死に瀕した身体である事には触れない方が良いだろうからと、知っていても黙っていたようだが」

「私が決めた事なら尊重するってさ。それに、多分神父様も私と同じ感じだよ」

「……そうか。なら止めはしないさ」


 ちなみにだが、シアンは神父様の身体について聞いた時には、まず死の危険性に関してや体調不良が起きないかを不安そうに、トウメイさんに食ってかかる勢いで聞いたようである。

 だが条件(弱った状態で扉の中に入る)を満たさなければ大丈夫だと聞くと、心の底から安堵して「なら良いや」と、言った。一応数日観察するそうだが、それ以外は問題が起こらないように注視する、と言っただけであった。

 トウメイさんの、


『過去に死んでいたという事や、本質を変えられた事に思う所はないのか?』


 という問いに対しては、


『今を自分の意志で考え、過去の記憶を大事にして、未来を語れる。なら、神父様は私の大好きな今を生きるスノーホワイトという男性です』


 とシアンは答えた。

 本質が変容していようと、過去に死に瀕していようと。スノーホワイトという男性は今を生きている愛した男であると、シアンは語ったそうだ。

 あと、


『というか、そんな細かい事はどうでも良いです。神父様の素晴らしさの前では些事なのですよ!』


 とも語っていたようだ。

 その目を逸らしている訳でも無い、今の相手を愛している回答を聞き、答える様子を見て、トウメイさんはシアンの強さに敬意を表したそうである。自分がでしゃばる必要は無い。彼女に必要なのは救いや保護ではなく、協力か助力程度で良いのだと。

 そして神父様も同様に、例え思う所はあったとしても、今を生きる自分に嘘はないのだと考え、今まで通りに生きる事が出来る。と、シアンは思っているという事だ。好きな相手に対する信頼が大きくてなによりである。


「まぁいざとなれば、私がキスしたり抱き着いたりして、今を生きているという幸福を思い出させるから大丈夫!」

「良いのか、それで」

「甘いぞシアン。それだけでは隠れて落ち込む可能性もある」

「え、ヴァイオレットさん?」

「イオちゃん、じゃあどうすれば良いの?」

「決まっている、そういった悩みは夜、つまり暗闇になると不安が増えていく。だから神父様と一緒に――添い寝だ」

「なん……だと……!?」


 ……これ、放っておいて良いのだろうか。


「不安な時に誰かが傍に居るというのはありがたい事だ! 不安にならぬよう、神父様を幼子を抱きしめるようにしながら寝ると良いぞ!」

「で、でも付きまとって嫌がられでもしたら……!」

「好きでもない相手にやられたら嫌がられるだろうが、シアンは好かれている。ならば多少強引にでも傍に居るんだ。話を聞かなくても良い。ただ傍に居るというだけで、孤独な夜の寂しさは紛れるものだ!」

「な、なるほど! じゃあ多少強引にでも話した日の夜は、神父様の部屋に突撃する事にする!」

「うむ、それで良し!」


 ……まぁ言っている事は間違いではないだろうし、不安な夜に誰かが傍に居るという安心感があれば気も紛れるだろう。なにも言わずにおくか。


「よし、じゃあ今度ク――トウメイさんが泊まりに来た日にでも神父様に話してみる! そして安堵のそ、添い寝をする!」

「トウメイさんと一緒に説明するという事か?」

「うん、彼女もいれば説得力も増すだろうから。一応マーちゃんも呼ぼうかな、って思っているよ。スイ君は神父様に話した後で、かな」

「そうした方が良いだろうな。彼女らならば神父様の反応を見て、さらなる事に気付くかもしれないからな」


 確かに本質の観察眼に優れたトウメイさんや、あらゆる分野に優れたマゼンタさんが居れば心強いだろう。

 神父様も話を聞いて、過去になにか思い当たる節があればそこからなにか新たな考察に辿り着くかもしれないし、神父様がシキに居ても問題が起きないようにする糸口も見つかるかもしれない。そういった意味では説明の場に居た方が良いだろう。

 ……けど、神父様は全裸マントの女性と、ダブルスリットシスターに囲まれて自身の本質について聞かされるわけか。……大丈夫かな、色々と。


「まぁ、頑張れよシアン。神父様については俺も協力出来る事があれば協力する。解除とか封印は不得手だが、それなりに伝手はあるからな」

「うん、ありがとうクロ! イオちゃんもアドバイスありがとね。そっちも歓待準備頑張って! 怖いお兄さん相手でも、愛する相手が傍に居れば大丈夫!」

「互いにな。またなにか必要があれば頼むかもしれないから、よろしく頼む」

「オッケー! じゃ、私はウル君の絵画を浄化してくるから、バイバーイ!」

「ああ、またな」


 シアンは勢いよく手を振りながら、未来に対する希望を抱きながら浄化の仕事へと向かっていった。

 ちなみちウル君とはシキ在住の画家のウルトラマリンさんの事で、彼が書く15%の絵は怨念が籠り浄化しなければならない代物になるので、適切な処理が必要なのである。


「ところでヴァイオレットさん。シアンの奴、添い寝できると思います?」

「途中で恥ずかしがって、“よし、全員で突撃しよう!”となると思うな」

「なるほど。俺は勢いで行ったは良いけれど、段々と恥ずかしくなってきて逆にフォローされる、という状況になると思います」

「なるほど。それもあり得るな。ではどっちになるか賭けるか、クロ殿?」

「良いですけど、なにを賭けるんです?」

「私が当たっていたら私がクロ殿を抱いて眠り、クロ殿が当たっていたら私を抱いて眠る。で、どうだ」

「……良いですけど、それ、どちらもご褒美ですよね?」

「怖い兄が来る未来が不安なんだ。そんなご褒美があった方が、心の支えになるというものだ」

「……なるほど」


 では賭けを成立させるためにも、まずは怖い義兄さんが来た後も賭けの報酬を万全に貰えるように頑張らないとな。


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― 新着の感想 ―
[一言] イチャつくことは確定してるんだな
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