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嵐の前の小休止


 二日目の夜は夢を見ることなくグッスリ眠れ、三日目は領主関連の仕事で忙殺された。

 ヴァイオレットさんとアンバーさんに今日に集中した無駄にある首都での手続きの手伝いをしてもらい。首都に来たので仕事をさせるのは忍びないと思い、グレイはアプリコットとバーントさんに任せ観光を。シアンは修道服(スリット無し)に着替えて学園祭で懺悔を聞く仕事をした。

 その合間に四日目(明日)試合(トーナメント)について確認を改めてしたが、シアンの言う通り俺は外部の者も参加できる試合に登録されていた。ギリギリの飛び入り参加も可能なので不参加も可能かどうか聞いてみたが、出来ないという回答が得られた。……まぁ俺が参加できるようにしたという事は、アレが仕組んだのだから拒否も出来ないのだろう。いっそ怪我でもして不参加を決め込みたかったのだが。


「ハートフィールドの小倅か。お前の参加は強制だ。明日には迎えがあるだろうな」


 などと今日の領主の仕事で、俺の事を嫌っていた学園の教員と話しをした時にそのように吐き捨てられた。

 相変わらずだなと思いつつ、何故そこまでして参加させたがるのだろうと不思議に思いつつ、回避できないのだと溜息を吐いた。まだタッグトーナメントでヴァイオレットさんやグレイと組むことにならなかっただけマシと思おう。……戦わせたくないのもあるけれど、魔法使ったら二人より弱いだろうからなぁ、俺。おんぶに抱っこ状態にならないだけマシと思おう。


「でさ、“神は貴方を救いません”って言いました! って報告したら司教に怒られた」

「神は見守るだけでなんでも救う訳では無いから自分自身の事は自分で決めるべきだ、という意味なのは分かるが、それはシアンさんを知っている私達だから分かる訳だからな。司教も怒るだろう」

「むー、でもさ。実際にあの子前向きになれてたよ? 珍しく本気で悩んでいる子だったし」

「確かに学園祭の見世物の懺悔に来る時点で、殆どが物珍しさで来るでしょうからね」

「アンちゃんもそう思うよね? まぁでも懺悔をする以上は真摯に嘘偽りなく答えてはいるよ。例えおっさんの性的なモノでも」

「えっ、答えるのですか?」

「懺悔とかなら答えるよ。違ったら潰す脅しをかけるけど」

『……なにを?』


「~♪」

「ご機嫌だな、弟子」

「ええ、父上母上には悪いですが、アプリコット様とバーント様と首都を周る事が出来て色々と新しいモノが見られて楽しかったですから!」

「グレイ君は本当に素直な子だね。……弾む声も素直で良いね」

「バーントさん。やはり貴方は我が弟子をどういう目で見ているかハッキリさせた方が良いな」

「恐らくグレイ君がアプリコットちゃんを。アプリコットちゃんがグレイ君を見ている感じで見ているよ?」

「いや、それは明らかに違う。師弟愛とバーントさんの興奮(エクスタシー)を同じにされては困る!」

「……ほう、成程。それは盲点だったな。そういう見方もあるのか」

「なんだその反応」


「…………」


 首都での色々な仕事を終わらせ、シアンのシスターとしての仕事や観光も区切りをつけ、明日からも色々とあるにも関わらず、夜になって今日の出来事を楽しそうに振り返っている皆を見ながらルームサービスの珈琲を飲む。……やっぱりグレイが淹れたのが一番美味いな。


「ズズー……フゥ、珈琲ハヤハリ脳ヲ活性化サセマスネ」


 俺の隣には一仕事終え一緒に珈琲を飲むロボが居る。麻薬組織を解体し、繁殖に入った巨木魔物(トレント)の群れを壊滅させ、その他色々終わらせて今こうして俺達のホテルに居る。ちなみに外見に関しては、クリームヒルトさんがアッシュに話を通すことによって、外装をデコレーションをしたら「ああ、1-(ルナ)組の宣伝ですね!」で通っているらしい。

 そして外装を纏ったままだがどうやって飲んでいるのかとかは気にしてはならない。多分失われた(ロスト)古代技術(テクノロジー)だ。大抵それで片が付く。


「話ハ聞キマシタヨ、試合ニ出ルラシイデスネ」

「ああ、そうだ」

「第二王子絡ミデスカ。色々ト大変デスネ」

「いやまぁ事実なんだけど……なんで分かるんだ」


 俺はまだ試合に出るはめになった、としか言っていないんだけどな。


次世代(エンシェント)戦闘員(アーティファクト)トシテノ、カンデス」

「なんぞそれ」


 そこは女のカンとかじゃないのか。

 ……まぁロボは俺がシキに来た理由も知っているし、招待状の事も考えれば直ぐに分かるか。

 アレの思惑はどうせ小さな嫌がらせに過ぎないだろう。とりあえず思いついたからやりました的な感じだ。しかし理由はどうあれ、参加しないといけないし嫌がらせになっているのも事実だ。

 ヴァイオレットさん達を……今俺が見ているこの空間の家族達の表情が曇らないように乗り越えなくては。只でさえさらには学園祭のパーティーにも招待されているわけなんだから。


「ソウイエバ聞イタノデスガ、ヴァイオレットクン達ニクロクンガ左遷サレタ理由ヲ教エテイナイソウデスネ」

「ん? まぁそうだな」


 珈琲をもう一口飲みながら明日に対して意気込んでいると、ロボが思い出したかのように俺に質問をして来た。


「何故ナノデス? 今更隠シテイル訳デモ無イデショウ?」


 別に話す機会が無かっただけで、話しても構わない事だ。シキに居る領民の殆どは知っているし、自分からも話している。だが、何故かは分からないけれど……


「なんか、ヴァイオレットさんに話そうとするとちょっと怖かったんだ」

「怖イ?」

「ああ、俺もよく分からないけど、話してしまって大丈夫なのかって思って」


 ハッキリとした理由は分からないけれど、ヴァイオレットさんに俺がシキに来た理由を聞かれなかった時、何故かホッとした。

 いずれ話すのだから、別にあの時話してしまえば良かったのに、自分の後ろ暗い事を話して嫌われるのではないかと不安になってしまった。……まぁ好きと言われて気が動転して話せなかったのもあるけれど。


「……ハァ、成程。ドウヤラ恋愛初心者ハココニモ居タンデスネ」


 ロボの呟きにどういう事だと尋ねたが、返答は返ってこなかった。


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