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追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活   作者: ヒーター
25章:ちょっと違うメンバーのシキでの小話
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綺麗な観察_7(:透明)


View.クリア



 私が扉の中で数千年封印を施している間に、地上では多くの影響が及んでいた。

 私の魔力は龍脈を通して国中に広がり、大地に龍穴を多く作りだし、その穴を通じ、空間歪曲石とやらを使って空間を跳躍出来るようになった。

 同じように私の魔力を通じ、王族魔法なんていう、私でも魔法一歩手前と評せる代物を使うようになった。恐らく私の魔力との相性が良かったのだろう。


――あと、ちょっと違うけど各地で封印したモンスター達。


 そして私が王城で封印していたモンスターとは違う、私が自身の魔力の一端を使って封印していたモンスターが居る。

 私が倒しきる事は出来ない程の生命力を持ち、私の持つ力によって束縛と束縛中の弱体化を付与をした。ようは年月と共に弱っていく封印だ。本来は私が王城で封印していたモンスターを討伐してから討伐する予定だったのだが、結局は出来ずじまいで今に至る。


――そのせいで随分と迷惑をかけたな。


 例え私が居なくても一緒に戦った仲間とかが倒しきってくれる……と思っていたのだが、なんと倒されないまま現在に至っている。

 しかもこのシキに封印したモンスターも居るのだが……シキの封印モンスターも含め非常にややこしい事になっているのである。なにせ私の地上に溢れた魔力と悪しき実験のせいで私の封印は強くなったり弱くなったり、別の力と混ざって解くと全盛期に近い力で復活したりと――ようは複雑化している。今のままだと私が解いたり封印をしたりした所でどうにもならないそうだ(ヴェール君談)。

 そしてその中の複雑化の要因の一つが、


――封印したモンスターの起源の簒奪、か。


 である。

 例えば毒属性のヴェノムドラゴンが居たとして、その起源が【毒】とする。この起源が失われればヴェノムドラゴンはただのドラゴンとなる訳では無く、ヴェノムドラゴンという存在そのものが消失する。

 そしてある所に【武器創成】を起源とする敵が居て、私はそれを封印した。しかし年月を経て封印が弱まったのか、あるいはドッペルゲンガー……ハクと言う存在を入れたせいでトラブルが起きた。

 封印中に封印したモンスターの起源が失われ、その失われた起源を埋めるように私の封印の力が起源としてそのモンスターを埋めた。そして行き場の無くなった【武器創生】の起源が短刀として創出され、それを知らぬ者が持ち出して巡り巡ってスノーホワイト君の住んでいた街に流れ着いた。

 ……そして、モンスターの群れが襲い、短刀を手にしたモンスターが手に入れた武器を試すようにスノーホワイト君へと刺した。本来なら致命傷で死する運命だったのだが、死を埋めるように起源がスノーホワイト君に流れ込み、命を繋ぎ止めたのである。


――あくまで想像だけど。


 これはあくまで可能性の話であり、実際に起きた事かは分からない。だがおおよそそんな所だろう。

 いずれにしろスノーホワイト君が元を歪められて生きているのは確かであり。

 このシキに封印されているモンスターの封印解除の鍵となっているのは確かなのである。……恐らく彼がシキで死ぬか、扉の封印が弱まった状態で近付くとシキに封印されたモンスターが復活するだろう。私の封印起源と元の起源をダブルに従えた厄介な感じで復活する。場合によっては相殺して自滅するかもしれないが。

 ともかく彼は非常に危険な状態であり……私の不始末の被害者だ。


『あー……だからカサスで封印が解かれた時の被害者に居たのか……そしてあっさりと封印モンスターは討伐出来ていたのか……いや、何処まで設定があるんだ……?』

『クロ殿、そこは気にしても仕様がない。根拠のない予言のようなものだぞ』

『それっぽい事を言えば、それっぽい事が起きた時に“当たった!”というような感じですか?』

『そういう事だ。カサスとここは違う。……とはいえ参考程度には思った方が良いかもしれないが』

『ですね』


 ……そういえばこの事を話した時に気になる事が。

 私がスノーホワイト君について説明をクロ君達にもして、少しした後。私が居ない所で呟いていたクロ君とヴァイオレット君の会話は、どういう意味だったのだろうか。


――ともかく、彼は……


 スノーホワイト君は自覚がない。

 元の自分と違う事も。元から変えられてしまった事も。……なにかのキッカケで、あっさりと死ぬかもしれないという事も、知らないのだ。


「さぁ神父様、最後の一発行きますよ!」

「ああ。最後の一発は特大花火だ。大きく爆発した後、更に別れて連続で爆発する仕様だ。――行くぞ、点火!」

「神父様、早くこちらへ! ここからなら綺麗に見える場所ですよ!」

「今行く! …………よし、打ちあがって――」

「お、良い感じに上がって――」

「――わぁ、綺麗だよ――凄いよ、神父様、シアンお姉ちゃん!」

「ああ、綺麗だな。……本当に、綺麗だ。これを見ている皆が喜んでくれればいいのに――イタッ! な、なんだシアン。それにヴァイスも」

「もう、神父様はこういう時まで……」

「神父様、ここは他のヒトの事よりも、特等席で見られる自分達の事を喜び、楽しむべきですよ。シアンお姉ちゃんはそこを怒っているんです」

「あ。……ごめん」

「良いですよ。本気で怒っている訳でも無いですし、それが神父様らしいと思っていますから。ですが、そう思ったのは事実です」

「……そうだな。折角やり遂げたんだ。今この瞬間を喜ぶべきだな」

「そうですよ、神父さ――」

「あと、シアンお姉ちゃんは“花火よりシアンの方が綺麗だ!”と言って欲しかったんだと思います」

「スイ君!?」

「あ、すまない。花火より綺麗な事は当たり前すぎて、つい言うのを忘れていた!」

「神父様!?」

「花火より綺麗だぞ、シアン! シアンの輝く姿は今日上がった全ての花火より輝いている!」

「う、うぅ……」


 ……あのように楽しそうにしていても、彼は――


「それは余計なお世話というものだよ、クリア神」

「っ!?」


 私がそう思っていると、女の声がした。

 姿を消しているのにも関わらず、私が居る事を確信したかのように話しかけ、私に気付かれず接近できる存在などそうは居まい。

 現れたのは私が警戒している、マゼン――


「……なんで服を脱いでマントみたいに羽織ってるの」

「貴女に倣っているだけだよ。なにせ貴女様の信徒ですので」

「なるほど、余計なお世話だ」


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