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追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活   作者: ヒーター
25章:ちょっと違うメンバーのシキでの小話
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黒のとある仕事_3


 とりあえず女性を安静にさせた後、医者に診てもらうためにシキへと走った。しかしアイボリーはおらず、その際に偶然エメラルドと会ったので、エメラルドを担ぎながら(足が遅いため)温泉に向かった。


「気を失っているだけで問題はない。いずれ目を覚ますだろう……が」

「が、なんだ?」

「領主、お前は裸の女と縁がある運命の元にでも生まれているのか」

「変な運命を俺に与えないでくれエメラルド」


 とりあえず女性は問題は無かったのだが、最近俺の周囲の事を思いエメラルドは侮蔑……ではなく、同情の視線を送って来た。

 自分で言うのも変な話ではあるが、確かに俺の周囲の状況はなんか……うん、女性であればワザとやっているのではないかと軽蔑されてもおかしくない気はする。エメラルドはその辺りは興味ないので、ある意味ではこの視線はありがたい。


「あまり妻を悲しませるなよ」

「分かってる。……分かってはいるが、どうしようもないだろう、これは」

「そうだな。女湯だからと遠慮して見捨てる方が軽蔑はするだろう。しかし、どうしようもなくともフォローくらいは入れておけ」


 そう言いつつエメラルドは女性の状態を改めて確認をしていた。

 ……そうだな。エメラルドの言うように、どうしようもなく、不可抗力であろうともこの状況はキチンと報告しておこう。やましい事は無いのだから堂々と言い、それでいてフォロー……他の女性の裸体を見てしまった事は謝っておこう。

 しかし……


「エメラルド、変わったな」

「急にどうした」

「今までであればそういった事は“そういった事はよく分からんからお前らでどうにかしろ”とか言ってたのに。アドバイスもするなんてな」


 多少は気を使う事はあったが、今までのエメラルドの気の使い方とは少し違う気がした。

 すると俺の問いに対し、エメラルドはこちらを見ずに頬を掻きながら答える。


「あー……どこぞの第二王女の影響だ。アイツ、私の気付きにくい所で私を楽しませる事をしていたからな」

「首都でのデートか?」

「そうだ。……いや、デートとは少し違うが……ともかく、それを改めて思うと私は子供な気がしてな。少しは考えるようにした、というだけだ」

「ほう」


 首都での一戦を行った後のスカーレット殿下との首都観光(デート)以降違う雰囲気は感じられたが、結構精神的にも変わってきているんだな、エメラルドのやつ。

 成長が良いか悪いかは……どうだろう。気を使えるのは良い傾向だとは思うが、これで気を使い過ぎると悪い方向にも行く気がする。


「エメラルド。考えて気を使うが、毒の摂取は止めないんだろう?」

「? 当たり前だろう。それとこれとは話が別だ。……何故そんな馬鹿な事を?」

「いや、それを聞いて安心したよ」

「?? 変な領主だな」


 良かった、いつも通りの毒好き(エメラルド)だ。なんというか、子供とか大人とか考えて、“今まで”を冷めた目で見て違う所まで気を使おうとする可能性がある気がしたが、杞憂だったようである。それもそれで悪くは無いのだが、多分そういった姿はグリーンさんもスカーレット殿下も望まないだろうからな。多分成長を喜ばしくは思っても、何処かで悲しむと思う。……いや、毒を摂取して興奮するのは止めて欲しいんだけどね。ただ今までを否定するのは悲しく思ったのである。


「私の事は良い。それで、この女はどうするんだ。全裸のまま運ぶのか。そしてシキの奴らに“あらあら、領主ちゃんってばまた新しい裸の女の子連れてるわね”“それで奥さんを嫉妬させてラブラブになる算段ねぇ”という会話をさせるのか」

「例え運んだとしてもその会話がない事を願うが……」


 でもそうで無いとしたら俺が変態で変質者になってしまうな。複雑な気分である。というか俺ってそんな風に思われてるのだろうか。


「エメラルドが服を着せて、その後運ぶよ。丁度着ていただろう服とか荷物はそこにあるしな」


 ちなみにだが、女性はタオルで大事な所を隠して寝かせてある状態だ。そして俺は彼女が大丈夫と分かって以降は見ないように彼女から背を向けている状態である。

 なのでエメラルドが脱衣所にある服を着せてあげて、俺が運ぶか……誰か女性を運べる力を持つ女性を呼んで運んで貰うとしよう。モモさんとかが良いかもしれない。ただ、運んだ後に問題があるのである。


「分かった。そして領主邸に運ぶんだな」

「いや、それは……どうしようか」

「? ああ、今は見合いの連中などの来客が居るのだったか。だから避けた方が良い、という事か?」

「それもあるんだが、彼女を運ぶのはな……」

「む、知っているのかこの女を。シキの領民ではないと思うが……そしてその言い方だと問題がある様に見えるが?」

「あるんだよ」


 この女性を俺は知っている。先程は見た事は無いと思ったが、あくまでもシキでは見た事の無い女性というだけであった。

 そしてこの女性を見たのは一度だけ。しかも精神的に追い詰められて割とやつれた時であり、精神的にも俺を敵としてしか見ていない危ない状態だった。今は落ち着いて、俺にも謝罪をしたいと言っているとは聞いてはいたのだが……まさかこんな風に再会するとはな。


「彼女の名前はオール。オール・ランドルフだ」

「……ランドルフ? それはもしかして……」

「ああ。……カーマインの妻の、オール嬢だよ」


 聡明叡智、プライドが高く気難しい、帝国の誉れ高き黄水晶(シトリン)

 様々な噂が飛び交う、優秀であるという話があると同時に性格の難しさがあげられるような女性。

 彼女は――間違いなく俺を憎んでいる、オール嬢、その人である。


「ふへへ……透明人間になれないかな……そうすれば無防備に温泉に入る男の声を、堂々と仕切りの向こうから聞く事が出来るのに……声だけで妄想して楽しみたいのに……ふへへへへへ」


 ……うん。なにを言っているのだろうこの女性は。そして透明人間になってもあくまでも聞くだけなんだな。


「なぁ領主。本当にこの女がオーロラとやらであっているのか?」

「オールな。……多分」

「この思春期の男みたいな妄想を呟く女が、か?」

「……俺に聞かないでくれよ」


 髪が以前と違ってお風呂に入る用だし、以前と違って元気そうだから雰囲気は違うが、多分オール嬢だと思う。……うん、多分。


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― 新着の感想 ―
[一言] あとシキに来てないランドルフは誰でしょう?…………レッド! わぁ、コンプリート間近だぁ(
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