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色ボケ(:白)


View.メアリー



「あはは、ねぇシャル君。なんかノリで空中に凄い魔法の力場を作るのってどう思う?」

「ノリで作る事自体は悪くないだろう。戦闘中は気分が高揚するからな」

「でもさ。あれが恋を愛にするための乙女の純情、って言われたら?」

「私は世の乙女に対して今まで以上に優しくなるだろうな。恐怖で」

「あはは、だよね!」


 闘技場での模擬戦闘が区切りが出来、水分補給をしているクリームヒルトとシャル君が先程の魔法について、私に聞かせるためにワザとらしく感想を言い合っていました。

 ……確かにやりすぎた感は否めません。魔力のほとんどを使い果たしましたし、今は偶々他に闘技場利用者が居ないので(だから告白とかも大声で話してました)大丈夫でしたが、他に利用者がいれば迷惑をかけていたでしょう。居たら居たで大丈夫な魔法にはしていたとは思いますが。


「しかし、クリームヒルトの対応は見事だった。状況に対する判断と対応力は流石と言った所か。まさにクロの兄妹と思える――いや、この言い方は失礼か。クリームヒルト個人の力量が素晴らしいのだな」

「あはは、ありがとう! でも黒兄と繋がりを感じるというのは嬉しいから、別にその褒め方で大丈夫だよ。けど、シャル君も冷静に対応出来て凄かったよ! このままいけばクレール君を追い越すのも近いんじゃない?」

「いや、まだまだ父上には――待て、今父上の事をなんと呼んだ?」


 とはいえ、クリームヒルトとシャル君は互いが互いの全力を尽くして対応し、発動には至ってもそのまま受けても問題無い範囲まで威力を減衰させたのでそちらも凄いのですが。つまり……まだまだですね。彼女らが素晴らしい力量なのは分かっていますが、それを超えるためにも私ももっと頑張らねば……!


「つまり、なんだ。クリームヒルトは父上と仲が良いと?」

「うん。あっちもちゃん付けで呼んで、機会があれば個人的に手合わせするくらいにはね」

「父上が、ちゃん付け……!? い、いや、それよりも世間体的に学園生と個人的に会うのは……」

「あはは、大丈夫だよ。私の方が長く生きてるし、愛妻家で通っているクレール君に変な噂は立たないって」

「後者はともかく、前者はクリームヒルト、お前は長く生きていたとしても今は十六歳の女性なのだからそこの所に気をつけてくれ」

「はーい」


 しかしそれにしても、シャル君はなんだか柔らかくなりましたよね。

 今までは女生徒のファーストネームを呼ぶのを躊躇うくらいには、異性と接する時に何処となく固かったのにも関わらず、最近は自然と名前も呼びますし距離感も適切で、親しき相手には砕けた感じで接します。

 以前からその傾向はあったのですが、私に告白し、週の休み明けから顕著になっていきました。

 ……フッた私が言うのも変な話ですが、フラれた事で良い方向に行った、と言えるようです。


――私がフラれたら……あのように出来たのでしょうか。


 私は何度も告白され、お付き合いは出来ないとお断りをしてきました。

 中にはゲン担ぎ、度胸試しのように告白をして来る方々も居ましたが、中には本気で告白してくる方々もいて……こう言い方は良くないですが、対応に疲れる場面も多くありました。

 そんな私が想いを募らせる立場になり、もし告白をしてフラれた場合は……


――あ、駄目です。考えただけで胸が締め付けられます。


 一応は相手は好きだと宣言してくださっては居るのですが、私なりの恋愛方法が相手にとってプラスとなるかは分かりません。それでも私は頑張ろうとは思いますが、もしフラれたらと思うと――ああ、駄目です。マゼンタさんのようになってしまいそうです。

 このような想いをさせてきた事に罪悪感が湧きます。想像しただけで感じたくない事を、実際に行って現実に降りかかるのです。その辛さは尋常ではなく、立ち直っているシャル君は凄いとしか言いようが有りません。


「ねぇシャル君。メアリーちゃんがなんか面白いように表情を変化させて、よく分からない仕草してるけどなんだと思う?」

「恐らくは過去の所行を思い返し、自己嫌悪に至っているな」


 ですが罪悪感が湧いたからと言って今の私を止める事は出来ません。

 今の私はいうなれば恋に恋する乙女状態。恋をしたからには最高の自分で付き合うという状況になるように、何物にも負けずに恋にまい進するのです。行きます、恋の上り坂! まだ私は登り始めたばかりなのです!


「あのファインディングポーズはなんだと思う? なにと戦っているんだろうね」

「メアリーの善意や感情が明後日の方向を向いている時だな。だけど何故か上手くいく」

「あはは、変な方向を向いていてもいくんだね」

「何故かいく」


 勉学・運動・魔法・社会貢献、その他諸々。

 それらを磨き上げ、私は相手に「お前と一緒になれて良かった」と言えるように頑張るのです!

 あ、でもそれは頑張るとして、デートとか甘いやり取りとかしてみたいです。


「あ、そういえばシャル君。スカイちゃんのお見合い相手って分かった?」

「急に話を変えるな」

「だって今のメアリーちゃん、なんだか恋に恋する乙女状態で会話成り立ちそうにないし、今の内に別の事を聞こうかと」

「確かにそうだが……それと見合い、か。前も聞いた時思ったが、何故私に聞く?」

「え、幼馴染でしょ? なら分かるはず!」

「偶に思うのだが、クリームヒルトもメアリーも幼馴染をなにか勘違いしてないか?」


 例を挙げるとクロさんとヴァイオレットのような感じです。見ていると甘い空気に当てられるような甘いラブラブ感を自分も出してみたいです。

 大丈夫です、私は恋愛経験豊富(※漫画やゲーム)な女です。甘いシチュエーション作りなど容易いのです……!


「勘違いは良いとして……貴族の婚姻とは政治的繋がりを持つための重要な“仕事”だ」

「どしたの急に」

「貴族としてあり方の話だ。どのような相手であれ、仕事を邪魔するのは良くない事だ。そこを貴族であるクリームヒルトも理解しているな?」

「うん、分かってるよ。やらなくて良い仕事の場合はぶっ飛ばして無職にしろ、という事だね!」

「違う。……お前、分かっていて言っているな」

「半分は本音だけどね。シャル君だって思ってはいるでしょ?」

「……まったく、お前は鋭い時は本当に鋭いな」

「あはは、褒めてるの? けなしてるの?」

「大いに褒めている」

「なら良し!」


 恋人繋ぎをしたり、後ろから抱き着く……あすなろ抱き? とやらをして“あててんのよ”をしたり、お弁当を作って食べ合ったり、マフラーを編んで一緒にくるまったり、膝上に乗せたり、膝枕をしてあげたり!

 ああ、どれも良い感じです、良い感じですよ!


「……というか、わざわざそう言うという事は、あまりスカイちゃんの心情的に良くない相手なの? 好みから外れている、とか」

「ほう、恋愛の機微に鋭いな、クリームヒルト」

「それは?」

「けなしている」

「騎士としてそれで良いの!」

「友人としての軽口と思ってくれ。謝罪はする。すまない」

「あはは、許す!」


 ……ですが、こういった事は経験者に聞く方が良いかもしれませんね。

 私も経験豊富ですが、実体験で甘い事をしている相手に聞いた方が良いかもしれません。いきなり経験も無しに実行に走るという事は、料理で基本を守らずにアレンジを加える様なものですからね……!


「ともかく、スカイの見合いの相手の家だが……オースティン家だ」

「……私の勘違いでなければ、侯爵家で、長子の名前がアッシュって言わない?」

「言う」

「言うんだね」

「ちなみに言うと、見合いの場所のセッティングはハートフィールド家がするそうだ」

「なんで」

「知らん」

「…………」

「…………」


 ああ、それと自然あふれる場所でのんびりデートと言うのも良いですね。

 シキとか温泉がありますし、のんびりと時間が流れる中、壁越しに話をしながら月を見上げるシチュエーションとか良さそうです。

 と、いう訳で。


「アッシュ君とスカイがシキで見合いをするという事なんですか、シャル君?」

「メアリー、お前話を聞いていたのか」

「色ボケしているだけと思いましたか?」

「思った」


 シャル君、フラれてから物を言うようになりましたよね。まぁ良いですが。


「実際私は色ボケしてますからね、恋に恋する乙女状態ですから!」

「ねぇシャル君。今のメアリーちゃんも好きだと言える?」

「言える事は言えるが、言えるだけだ」

「複雑そうだね!」


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