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変わった理由を叫ぶ(:白)


View.メアリー



「どういう風の吹き回しなの、メアリーちゃん。昨日今日で変わり過ぎじゃない!」

「私を焚きつけた貴女が言いますか!」

「焚きつけたかもしれないけどさ。もっとゆっくり変わると思ったのに、大分変わったよ――ねっ【雷霆(らいてい)】!」

「っ、と、【不壊(コンゴウ)】!」


 若返り騒動が起きてから数日。

 放課後に闘技場にて模擬戦を行ってる最中、攻撃の手を緩めずにクリームヒルトは聞いてきます。


「ええ、変わりましたよ。これでも色々考えたんです!」

「あはは、その結果がいつもの天然あしらいじゃない、意識的なあしらいになる訳?」

「誰が天然ですか誰、がぁ! 【強化:脚(ブースト)】!」

「おっと。――あはは、メアリーちゃん以外に誰が居るの! この天然恋泥棒め!」

「断固抗議します!」


 天然扱いを否定する瞬間に渾身の一撃を放ちつつ、クリームヒルトに抗議をします。

 確かに今までの事を振り返ると偶然あしらっていた事はあるかもしれませんが、天然扱いは納得いきません。


「メアリーは天然な事は確かであろうな――【一閃・裏(イッセン)】」

「っと、危ない――シャル君まで言いますか!」

「言うぞ。惚れていた相手の魅力的であり治すべきとも思う事くらい俺でも言える――あと、頭上注意だ」

「へ――っ!?」


 スピードの上がった【一閃】の、時間差攻撃を含めた裏の攻撃を繰り出しながらシャル君は技を繰り出してきます。

 そして完全に避け切れたと思った技の、技後の硬直を狙おうと動こうとした瞬間に防御魔法を貫く頭部に衝撃が走ります。これは――私の動きを予想し“太刀を置いて”いたのですね!?


「自分は“誰か”に恋をしているくせに、ヒトに恋をさせる恋泥棒。うん、クリームヒルトの言葉は的を射ているな」

「――っ、ある意味では私を焚きつけたシャル君もそう言うんですね! 【圧壊(エンブ)】!」

「くっ!?」


 防御魔法は貫かれましたが、この程度では怯みません。

 私は天然という扱いへの抗議の思いの強さを表すために、拳を固めて最大威力でシャル君を殴りつけます。

 なにが天然ですか。私は今まで計算を持って人々に善い事をしようと頑張って来たのです。そして今回のあしらい――もとい、恋の駆け引きも今までのような計算した結果なのです。考え抜いた結果なのです。

 それはクリームヒルトからの「特定あの相手に良く思われたい」発言がキッカケなのは確かですが、それよりも前に――


「告白の時、私に恋をさせようとあんな事を言ったくせにです!」


 そう、シャル君の告白もキッカケの一つなのです。

 シャル君からの告白の際にもシャル君は私が恋をしていたと言い、その言葉でモヤモヤとしつつ悩んだ時もありました。

 あれはどう考えても私に恋を意識させようとしていたに違いありません。意識させる事で、今までなかった恋を芽生えさせようという策略だったのです!


「王城での一件以降見るからにヴァーミリオンを意識してしまい、避けていたくせに、なにを言うか【一閃】」

「あはは、好きだからこそ避けてしまう、好き避けっていうヤツだね【瞬雷(シュンラーイ)】!」

「言葉と物理で同時に最高速度で攻めて来ないでください!」

「それを捌くメアリーちゃんも流石だね!」


 ええいうるさいですよそうですよ避けていましたよ。

 ヴァーミリオン君に王城の一件、というよりは夢魔法の一件でマゼンタさんに言ったあの言葉のせいで意識してしまったんですよ。

 胸がドキドキしていましたんですよ。

 それだけならば今まで皆さんに強気で来られた時にも似たような経験はあったのですが、胸が不思議とモヤモヤしてどうしていいか分からなくなったんですよ。


「仕様がないじゃ無いですか初恋があんなものなんて知らなかったんですよ、なにをすれば良いか分からなくなったんですよ文句ありますか!」

「あはは、逆ギレ!」


 前世では痛いという感情が先行して恋なんて分かりませんでしたし、恋がなにかとサッパリだったんですよ! 憧れはしましたけど憧れで終わったんですよ!


「憧れは、理解から最も遠い感情なんですよ……!」

「え、五番隊隊長?」


 そして憧れが実体験へと降りかかり、未経験な事にどうしたらいいか分からなくなりました。だって恋が……恋があんなにも苦しくて、満たされると今までにない多幸感を得られるなんて知りませんでした!


「私の中でのこの気持ちが、恋なのだと名付けた時……私はこの気持ちを失いないたくないと思ったんです」


 中庭でクリームヒルトに「良く思われたいと思うから、そんな風に悩む」と言われたあの日の夜。私は部屋でグルグルと回る思考を落ち着かせようと必死でした。

 クリームヒルトに言われた言葉は私の中で何故か真実であると理解してしまっていたのですが、何故“そう”思ったかが分からなかったのです。

 そして悩んでいるとふと、シャル君に言われた「私は恋をしている」という言葉を思い出し、私のこの感情は恋ではないかと思うと、あらゆる事が納得出来てしまったのです。


「私はこの感情を――」


 恋と納得出来た後、私は不思議と冷静になれました。

 これが恋。私が動けなかったベッドの上で何度も夢を見て、持つ事が叶わなかった感情。

 そして夢見た感情が夢で無くなったのならば、後は私なりに成就させようと思ったのです。私なりにこの感情を、整理つけるためにも――だから。


「私はこの恋を愛に替えるためにも、私らしくやってみせますよ――行きます」

「へ?」

「え?」


 私は好きな相手に相応しい女になれるように、自分を鍛えるために一切妥協を許しません。

 そのためにまずは新たな魔法の登場です!


「【神々の凱旋(ラグナロォク)】!!」


 ふふふふふふふふ、私の全力を喰らうが良いです!


「あはは、加減してよメアリーちゃん!」


 大丈夫、護身符がありますから死にませんよ!


備考 技群

雷霆(らいてい)

クリームヒルトが使う雷魔法。直径五メートル程度電磁場を作り、覆うように雷の籠を作って中の相手に大ダメージ。多分雷魔法を専門とする相手が魔法陣とかを頑張ってようやく出来る魔法。


不壊(コンゴウ)

メアリーが使う防御魔法。身体を硬化し、防御力をあげる。防御力をあげる程動けなくなる代物……なのだが、メアリーはこれをスピードを落とす事無く防御力をあげる魔法に改良。簡単に言えば素早く動くスーパーアーマー状態。相手からすれば卑怯以外の何物でもない。


一閃・裏(イッセン)

シャトルーズが使うスピードが上がった居合切り。本来の刀から放たれる一太刀が相手を切り裂いた後、やや遅れて変則軌道を持った魔力による一太刀で切り裂く防御が困難な技。剣の技術だけの技ではないとか、複数回攻撃しているような物だから“一閃”ではないだろとか突っ込んではいけない。


“太刀を置いて”いた。

シャトルーズがメアリーの動きを予想し鞘で殴った。


圧壊(エンブ)

メアリーの使う身体強化を含む攻撃魔法。不壊(コンゴウ)で受け、行き場の無くなったダメージを身体強化に使って一撃を放つ。防御魔法で攻撃が効かない上に、攻撃に転嫁されるので相手にしたらたまったものでは無い。


瞬雷(シュンラーイ)

雷を足に纏わせスピードアップする身体強化魔法。足に雷を纏う以外は足を身体強化しているだけである。


神々の凱旋(ラグナロォク)

メアリーがノリで放った魔法。大層な名前が付いているが、実際に神が関与している訳では無い。ただ、相手が凡人ならば発動前段階の魔法を見ただけで色々諦める威力のようである。

※クリームヒルトとシャトルーズは大丈夫でした。


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