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何故(:朱)


View.ヴァーミリオン



 気が付くと何故か研究室の一室に居て。

 制服ではなく何故か六、七年前に着ていた服を着ており。

 シルバと共にメアリーの服の裾を何故か掴んでおり。

 そして目の前には何故か浮いた謎の全裸痴女が居た。


――なんだ、これは。


 “何故”が連続で続いたが、そう疑問視せざるを得ない状況だ。

 周囲に似たような状況の者達はおり(その者達も服はある程度大丈夫だった。あくまでもある程度だが)、同じように混乱した表情であった。

 グレイだけは何故か楽しんでいたが、なんだというのだろうか。


「ふふふ、私のお陰で治り、美しき私を拝謁出来た事を感謝するが良いぞお前達!」


 そしてあの女性は本当になんだったんだ。

 服を着ずに、裸体を晒し、浮きながらどうだと言わんばかりの顔でこちらを見下ろしてくる女性は誰だったんだ。

 後から言葉を振り返ると、俺達に起きた事を解決してくれた女性なのだろうが、それよりもあの裸体のインパクトが強すぎて訳分からないとしか言いようがない。


「そもそも元を辿れば、皆さんが若返ったのは貴女が原因な気もしますがね」

「……まぁな!」

「認めるんですね。ヴァーミリオン君。そしてシルバ君……興味が湧くのは分かりますがジッと見るのは……」


 そしてインパクトが強くてジッと見てしまっていた事を、何故か制服の裾を掴んでいたメアリーにとがめられた。

 今までのメアリーであれば「ふふ、男の子なんですね」的な反応をされていたはずなのだが、その時のメアリーはこちらをなんだか「見続けるのなら軽蔑します」とでも言わんばかりの表情でジーっと見てきた。……あの視線のメアリーは珍しいと言えよう。


「……あと、大丈夫であれば服を放してくださるとありがたいです」


 メアリーに言われたその時に、俺とシルバはメアリーの制服のスカートの端を掴んでいる事に気付いた。まるで幼き子供が親に甘える時に見せるかのような仕草をしている事に、俺とシルバは慌てて飛びのいたモノである。


「アプリコット様、アプリコット様。服が少々動きにくいですね」

「我と弟子はそこまでのようではあるがな。フォーンさんはなにやら危うい――む。フォーンさん、着痩せするタイプであったのか……」

「見ないでくれると嬉しいな……でもあの二人よりはマシなようだけど、なにが起きたんだろう……?」

「詳細は省くが、身体が昔に戻って急成長したと思うが良い。君達はあの二人と比べると、成長の幅が……うん、フォーン君、ごめんね。よもや君がそんなサイズだったとは。私の未熟さ故だね……」

「言わないでください……」


 そして飛びのいたと同時に、多少は着られるようになっていた服の一部のせいで動き辛くなってコケもした。どうやらある程度はヴェールさんの魔法かなにかである程度俺でも着られるようなサイズになっていたのだが、あくまでもある程度であるので、一番“幅”が大きかったらしい俺は服が危うかった。……破れなかったのは不幸中の幸いだろう。


――本当に、なんだったんだあれは。


 地下空間に踏み入れたまでは覚えている。そして眠ったかのように記憶が飛び、あの状況になったのだ。本当になんだと問い質したい。

 とはいえ、ヴェールさんから軽く説明は受けた。受けはしたのだが……


――若返った俺をメアリーに見られた……!?


 若返った時の記憶を俺は持っていない。持ってはいないが、今よりさらに未熟であった頃の俺をメアリーに見られたのは確かなようだ。絶対に変な目で見られただろう。若い頃の俺の事など、思い返すだけで頭が痛いのだから。

 とはいえ、ずっと現実逃避も出来ないので反応を確認しなければならない。ならないのだが、メアリーは俺が制服に着替えている内に謎の全裸女性について話があるとかで、クリームヒルトとエクルと共にヴェールさんの所に行ったため反応を確かめられない。これでは気が気ではないというものだ。


――この悩みを共有できる相手がいれば良いのだが……


 我ながら恥ずかしくもそう思うのだが、今の俺にはこの悩みを共有できる同じ症状だった相手が近くには居ない。

 後遺症が無いかを調べるという事で今は研究機関の一室で待機中の俺ではあるが、若返っていたメンバーそれぞれの理由で部屋から外れている(なお、若返っていたメンバー以外の生徒会メンバーは大体が帰っている)。

 グレイとアプリコットは今身体の様子を副所長に調べられている最中である。

 そしてシルバは、


「ともかく僕はハクの様子を見に行ってくるよ。アイツ、結構無理するからね」


 と言い、ハクが居る部屋へと様子を見に行っている。

 どうやらハクはあの後倒れ、しばらく気を失い、今も大事を取って研究機関の自室で眠っているようだ。それをシルバは心配し、率先して見にいったのである。相変わらず口では色々言うが、仲良くはやっているようである。

 そしてフォーン会長に関しては影が薄くて居るかどうか分からない、という事ではなく、トイレに行ったきり戻ってきていない。というよりは多分戻って来たくないのだろう。なにせ――


「あっれー、愚弟が生意気盛りに若返ったって聞いたからロイヤルな私が立場を分からせるために来たのに、もう戻ってるじゃん、残念ー」

「スカーレット、お前は素直に心配して来たと言えんのか。だが確かに残念だな。当時はオレも上手く心を通わせられなかったから、心を通わせれば弟の新たな発見が見られたかもしれないというのに……」

「コーラル。そんなにも怯える必要は無いぞ。……大丈夫だ。昔は昔、今は今だ。今は互いに歩み寄れているのだから、今を大事にすれば良い」

「そ、そうですねレッド。だけど……だけど! あまり接して来れなかった時代のヴァーミリオンも可愛がりたかった!」

「お母様……落ち着いて……あれ……ティー兄様……その手紙はなに……?」

「ええと、先程研究員の方から私宛に頂いたので中身を確認したのですが、中身はカーマイン兄様からで、“はは、少年時代は楽しんだかヴァーミリオン! もし記憶があるのならクロ・ハートフィールドにも試したいから、今度来ると良い!”……と書いてありまして。何故私にこのような……というか何故知って……?」

「……カーマイン兄様……なんか怖い……。あと多分……ヴァーミリオン兄様だと……すぐに読まないから……すぐ読むだろう……兄様を標的にしたのだと……思う」


 ……なにせ、フォーン会長が部屋を出た後、この厄介な家族が部屋へと訪れたのだから。

 俺が逆の立場であれば、部屋の様子を確認した後、このローズ姉さんとカーマイン兄さん以外の俺の親と兄弟が居る部屋の中に入るのは躊躇うに違いない。

 というか父上と母上まで何故来ているんだ。母上は俺が若返っている時も来たらしいが、何故来れているんだ。公務はどうした公務は。


「公務よりも愛する息子が大切だぞ」

「息子が生意気可愛い姿を写真――コホン。息子を心配するのは父として当然だ」


 ナチュラルに心を読むんじゃないこの親は。

 あと父上、その後ろに隠した道具はなんだ。まさか国王権限で古代技術の道具を持ちだして写真を納めに来たとかじゃないよな?


「ねぇねぇヴァーミリオン。もう一回若返らない?」

「若返ったらなにをする気です姉さん」

「姉に勝る弟など居ないんだよ」

「答えになってないが、なんとなく理解した。元からする気は無いが絶対にしない!」

「そう言うなヴァーミリオン。スカーレットはお前が心配で、話を聞いてすっ飛んで来たんだぞ?」

「それはありがたい事ですが、この対応は困るというものですよ。というかルーシュ兄さんも心配で来られたのですか?」

「当然だ。このような面白――コホン、おかしい状況を黙って見過ごせるか!」

「言い直した意味があるのか!?」


 くそ、この両親と兄と姉が面倒くさい。

 先程から言っているのも本音だろうから質が悪い。

 ……だが、変な後遺症が無いのかを見ている、というのもあるのだろう。それは家族が家族の一員を心配して見舞いに来るようなものだ。俺を心配して来てくれている、という点には感謝はしているし、嬉しくは思う。


――それはそれとして。


 とはいえ、早く公務の方に戻って欲しい。

 嬉しくは思っても、もはや今は変な方向に行っているので疲れてしまう。まぁ、多少は弁えてはいるかもしれないが。

 あと、これ以上ここに居ると別の問題がある。

 それは他の研究員が一室に王族が固まっているという扱いに困るという事ではなく。今の状況を考えるとそろそろ――


「……楽しそうですね、お父様達」


 ……そろそろ、ローズ姉さんが来るだろう、という事だ。


「何故揃いも揃って此処にいるのか……愚かな私にも教えて貰えますか? ふふ、まさかお父様達に限って、するべき事をせずにここに居る、なんて事は無いですよね? ……ねぇ?」


 その日、一瞬でこの場を黙らせてローズ姉さんを見て、俺は姉さんの凄みが今まで以上に成長しているのだと実感したのであった。


備考 ローズ第一王女

最近家族仲が仲良くなっているのは喜ばしく思っているが、同時に両親がよく分からない親子愛を行おうとしているので、よりしっかりするようになったようである。(※お陰で圧が鍛えられた)。


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