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紫な式の部(:淡黄)


View.クリームヒルト



 グレイ君の面倒は、お絵かきで仲良く話せているフューシャちゃんに任せ、私はティー君の所に近付いた。

 出来る限りバレないようにしつつ、どのような様子かを確認する。


「やった、はじめて上手くいったー!」

「いきましたね。流石、上手ですねフォーンちゃん。ですが、はじめてなのですか?」

「あ……うん。私、影が薄いらしくて、独りで遊ぶ事が多かったから……相手が居なくて……」


 キャンパス一万尺の手遊び(この世界のア〇プス一万尺の手遊びようなもの)を最後まで完遂し、両手ハイタッチを交わすティー君達。仲が良くて羨ましい限りである。

 そしてどうやら生徒会長さんの影の薄さは子供の時から変わり無かったようだ。……子供の時から影が薄くて独りで遊ぶ事が多かったって、寂しいと言うか孤独と言うか。私の自ら距離を置いたものとは違うので、辛かったのではないだろうか。


「そうなんですね。じゃあ、今まで出来なかった分を私と一緒にやりましょうか」


 ティー君はフォーンちゃんの言葉を否定する事無く、今を楽しもうと提案する。

 なんというか、天然タラシの素養がありそうだね、ティー君。ある意味王子様らしいと言えなくもない。


「……! うん!」


 そしてティー君の笑顔に、前髪で目は隠れてはいるけれど笑顔になるフォーンちゃん。

 ……元に戻った時にこの事が影響してティー君に惚れるとかないよね? 最近生徒会長さんが悩んでいたような恋の相手との間に揺れ動くとかないよね?


「あ……でも、私の目だけはあまり見ないようにしてください。目は……見られるのが、恥ずかしいので」

「はい。そのようにしますよ」

「ありがとうございます。……ところでお聞きしたいのですが」

「なんです?」

「最近、好きな相手と――」


 私が心配になりつつも、会話を続けるティー君達。見ている限りでは問題なさそうである。

 そして今はフォーンちゃんの好きな相手について話している。その好きな相手というのが当時好きな相手の事かは分からないけれど、好きな相手の事から発展してなにやら貴族としての結婚の意味などを話しているようだ。

 問題無さそうに、仲良く――


「…………」


 ……うん、上手くいっている所に私が出ていく必要は無いか。

 私は貴族の結婚は分からないので口を出せないし、絡む必要もないだろう。

 他の子の所の手伝いに行っても良いけど、今は気持ちを落ち着けるためにいったん外に出るとしよう。邪魔しないよう、バレずに外へ……って。


――なんの気持ちを落ち着かせようとしてるんだろう。


 ……まぁ、良いか。ともかく一旦部屋を出るとしよう。


「……そうですね。最初は政略であっても後から愛を深める事は可能でしょう。ですが私も好きな相手と結ばれるのが一番と思い――」


 出る前にティー君の声が聞こえて来たけれど、最後まで聞く前にこの部屋から出て行った。何処となくその言葉にはティー君の政略結婚に対するスタンス……いや、スカイちゃんの事に関して語っている気がしたけれど、語られている訳でも無い私が聞くのも野暮というものだろう。


「……ふぅ」


 ……さて、どうしようか。部屋の外に出たのは良いけれど、トイレとか物を持ってくるとか、どうしても出る必要があって出た訳では無い。なにをすれば良いだろう。

 そう思いつつ私は外から中の部屋を覗き見る。

 この部屋は外からは部屋の様子が見えるのだけど、内からは見る事が出来ないマジックミラー仕様(科学仕様ではなく、魔法でそうなっているらしい)のため、私が覗いているのは中からは分からない。分からないからどうという事は無いのだけど、それが今はなんとなくありがたかった。


「……楽しそう」


 声は聞こえない。けれど、部屋を見てそんな感想が浮かび上がって来る。

 昔を思い出したかのように、悪友のような雰囲気を出しているヴァーミリオン殿下達。

 可愛い服を着て優しい笑みを浮かべている姿は、凛々しい普段とは違う母性を感じさせるスカイちゃん達。

 一緒にお絵描きをする様子は「本当はこうしたかった」という昔の心情(ねがい)を表しているようなフューシャちゃん達。

 談義をする姿は演技などではなく、己があり方を示す事が出来ているかのようなエクル兄さん達。

 見ていると■■な■■が湧くバーガンティー殿下達。


「家族、か」


 言いたい事を言い合える兄弟。

 子供の面倒を見るのが好きな母。

 好きな事を教える年の離れた姉弟。

 自分らしく居られる尊敬し合う従兄妹。

 血の繋がりは無くとも“家族”なお兄さん。


「…………黒兄」


 ふと、黒兄を思い出す。私にとって“仲の良い家族”と言えば黒兄だ。

 エクル兄さんも家族であり兄ではあり、仲良く出来ているとは思うけどまだなり立てである。

 だけどどちらも共通しているのは、私は受け入れられた故に手に入れた家族という事だ。

 黒兄もエクル兄さんも、私を受け入れてくれたから家族になれた。

 ……自ら家族となろうとした、この身体と血の繋がった、知らない弟か妹が出来そうなあの人たちとは家族にはなれなかった。


「……あはは、こんな光景の中に、居る事が出来れば良いのにな」


 今朝、自ら行動をし、気持ちに応えてあげようとした私。

 今まで行動して来なかったのは私が臆病だからに他ならない。


――メアリーちゃんが居なくても、私はカサスの主人公(ヒロイン)にはなれそうにないや。


 例え私がカサスの主人公(ヒロイン)としての立場になったとしても、メアリーちゃんがおらず舞台が整えられていたとしても。

 今部屋の中で生まれているような光景を私の行動で生み出す事は出来ないのだと、臆病な私は思うのであった。


「クリームヒルト?」

「あれ、メアリーちゃん?」


 私らしくも無いセンチメンタルな状態になっていると、声をかけられた。

 声の方向を見るとメアリーちゃんが居た。どうやら今この研究室に辿り着いたようである。


「学園長先生に言われて事情を聞かれずこの部屋に来たのですが……なにがあったのですか? ……もしやヴァーミリオン君と関係が……?」


 昨日私の発言に考えたまま寮に帰り、今日はヴァーミリオン殿下が居ない事が気になっていつもの切れが無かったメアリーちゃんである。事実すぐ見る事の出来る部屋の中を見ずに、私に答えを求めている時点で何処かいつものメアリーちゃんらしくないと言えよう。


――どう反応するかな?


 さて、メアリーちゃんはこの皆が若返った問い状況を目の当たりにしてどのような反応を示すだろうか。


「あはは、ま、部屋の中の様子を見れば分かるよ」

「部屋ですか? 一体なにが……」


 驚愕するだろうか。可愛いと愛でるだろうか。あるいは母性を発揮し、後から羞恥に悶えるくらいヴァーミリオン殿下を抱きしめたり甘やかしたりするかもしれない。その答えが今、明らかになるだろう。


「こ、これは……!?」


 お、やっぱり最初は驚くみたいだ。事情を聞いていなかったようだし、当然と言えば当然か。

 さてここからの第一声はどういった反応を――


「光源氏計画……!?」

「あはは、その反応はどうなんだろうね」


 でも言いたい事は分からないでもない。


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