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謎の現象(:淡黄)


View.クリームヒルト



 スカイちゃんが政略結婚をするかもしれないという話を聞き、私は恵まれていると思った。

 その日の夜に貴族の結婚を部屋で考え、流通に関する事が多いフォーサイス家……というかエクル兄さんは、政略結婚を私に望まない事というのは特別な事なのだと改めて認識したのである。


――ティー君、か。


 その際に()()()思い浮かんだティー君に対し、もう少し積極的にいっても良いのではないかと()()()思った。

 悪くない――いや、良いと思っている相手の好意に対し、応える事くらいは良いのではないか。

 良い相手と思う相手に思われるのはそう簡単でなく、貴重で価値のある事なのだから。

 私も分からないながらも少しは前に進んでも良いのではないかと、そう、思ったのである。


「と、いう訳でこちらが身体どころか記憶も若返ったヴァーミリオン殿下達だ。どうにかして戻る手段を考えたいから、協力よろしく!」

『ちょっと待って!?』


 そしてそんな事を思った矢先に、謎の現象が起きた。

 今日学園でヴァーミリオン君とシルバ君が急に休み、不思議に思っているとアプリコットちゃんとグレイ君も休みだと聞いた。あと生徒会長さんは休みなのか認識出来ないだけなのかは怪しかったけど、生徒会長さんも休みだった。

 なにかあったのかと不安に思いつつ、ノワール学園長に、


『生徒会メンバーは放課後に外出準備をして校門前に集合だ。なにがあろうと集まり、他の生徒に知られないようにする事。ああ、格好は学園制服のままでな』


 と、集まるように告げられた。

 やはりなにかあったのかと思いつつ、不安がっていたティー君とフューシャちゃんの手を繋ぎつつ校門前に行くと、休んだメンバーとメアリーちゃんを除く生徒会メンバーが居た。そしてなにがあったのだろうかと話し合っていると、謎の美少女が現れたのである。

 私達の同じ年齢程度で、学園制服を身に着けた太腿が眩しく綺麗な女性。何処かで見た覚えがあると思っていると、シャル君が、


『は、母さん!?』

『おお、一目で分かるとは流石我が息子!』


 と、一目で彼女がヴェールさんだと見抜いていた。普段は“母”か“母上”と呼ぶのに対し、母さんと言った辺りは動揺を隠せなかったのだろうか。

 とはいえ、母が若返った上に学園制服を着て居たら混乱もするだろう。事実未だにシャル君は帯刀している刀を持つ手が震えている。実の母の学園制服姿という、なんだか危うい響きの状況が起きた上に、若返っていればさもありなんである。


『さぁ、呼び出したのは他でもない、重要な事があるからだ』

『え、ヤングヴェールさんが呼び出したんですか?』

『その言い方やめてくれ。ともかく、着いて来てくれ。ああ、それとメアリー君は後で来るらしい』


 言われた通りに着いて行き、ハクが居る研究施設へと裏門から入った。なんでもトップであるヴェールさんが使える魔法陣を使用した極秘な門らしい。

 そのような門を使うという事はなにか知られたくない事があるのだと私達は覚悟し、とある研究室に入り、ガラス越しの部屋の中に居たのは――寝ている、今日休んだ生徒会メンバーと何処か似ている十に満たない子供達であった。

 そんな子達を見て、言われたのが先程のヤングヴェールさんの発言。待って欲しいというのも無理はないと思う。


「か――母上。まさか若返りの魔法を開発し、その弊害で彼らを……自首してください。息子として付き合いますから……」

「はは、息子が母をどのように思っているか知りたいね。罪を犯している事に疑いは無いのかな」

「私的には母が学園制服を着ているという時点で犯罪を感じるんです」

「ノワール学園長に会いに学園に行くのに、目立たないように着ただけだよ。それを犯罪だなんて言わないでくれ息子よ」


 本当にそれだけなのだろうか。わりとノリノリで着ているような気もするけど。


「シャル、ヴェールさんに失礼」

「そうは言うがな、スカイ。こう、複雑な心境がだな」

「元々若々しい御方だし、理由は分からないけど若返って似合っているから良いの。ですよね、ヴェールさん」

「はは、ありがとうスカイ君。だけどまぁ、副所長に言われて着たのは良いんだけど……似合う似合わない以前に、無理をしているんじゃないかと自分で思うから複雑ではあるんだけどね」

「そ、そうですか」


 ……いや、アレは開き直っている感じだ。副所長さんとやらが誰かは知らないけど、言いくるめられて着て、物凄く視線を感じて羞恥を感じたけど一周回って開き直っている。多分精神性は前のままだから、元の年齢で制服を着ている感覚が――あれ?


「ヴェールさん、認識的には元の研究総括者で、大魔導士(アークウィザード)ではあるの?」


 ふと会話をしていて気になった事があった。私達は身体は若返ったけれど、よく知っているヴェールさんとの会話をしていた。だけどさっきは確か……


「……? それは……どういう意味なの……クリームちゃん……?」

「ほら、さっきそっちに居る子達は“記憶も若返った”って言っていたけど、もし若返ったというのが身体の年齢通りになったとしたら、同じく若返ったヴェールさんもシャル君を息子とは認識しないんじゃないかな、って」

「あ……確かに……」


 とはいえ、これはあくまでも私の予想だ。

 記憶はそのままで、学習機能とか感覚が身体と同じような脳に若返ったとかという表現ならば私の発言は的外れである。


「そこに気付くとは流石だね。そう、私は身体だけが若返った。けれど彼らは記憶も……より適切に表現するなら、“その頃に戻った”という方が正しいかもしれない」


 しかしヴェールさんは私の言葉に同意し、ガラス越しの寝ている子達を見た。

 なにやら難しそうな表情で寝るヴァーミリオン殿下。

 怯えるように丸まって寝ているグレイ君。

 なにかに警戒をし、杖を持ったまま寝ているアプリコットちゃん。

 怯えながら警戒するように、三角座りで眠るシルバ君。

 生徒会長さんは……あ、居た。普通に安らかに寝ている。

 ……なんとなくだけど、私の知っている彼らとは違うと感じる寝方だ。


「彼らが若返った理由はよく分からなくてね。どうにかして解明したいんだけど、あまり公にも出来なくて、関われる相手も少ない。そして私と副所長は昨日から一睡もしていない」


 彼らを見つつ、私達に告げて来るヴェールさん。

 ……なんとなくだけど、嫌な予感がする。


「あの、もしかして母上。私達に……」

「うん、この子達の子守をお願い。その間に私と副所長は寝る。もとい解明のために寝る」

「俺達を呼んだ理由それか!?」


 やはりというか、なんと言うか。ヴェールさんは私達に彼らの面倒を見ろというようだ。

 いや、うん。友達が大変な事になっているし、協力を出来るのならするけど、何故子守なのだろうか。研究とかじゃ無いのだろうか。


「母上、協力するのは大丈夫ですが、もっと別の――」

「頼む。本当に眠いんだ。身体は若返っているけど、さらに体力のある上色々抱えているあの子達のヤンチャぶりに振り回された挙句、この情報を両陛下に伝えたらコーラル王妃がやって来て、ヴァーミリオン殿下に拒否された王妃の対応とかしていて本当に疲れたんだ。やっと寝てくれたけど、いつ起きるかも分からないし、対応出来るヒトが居ないと休めないし……お願いだから少しだけでも、寝かせてくれ」

「わ、分かりました……」


 ……うん、ヴェールさんは本当に眠そうだ。そのくらいはしてあげようと、鬼気迫るヴェールさんを見て、その場に居た生徒会メンバーは思ったのであった。







~その頃のシキのとある場所~



「シアン先輩、私首都に行って来る」

「待ちなさいマーちゃん。行かせる訳ないでしょう」

「お願い行かせて! どうしても、どうしても行かなくちゃいけない気がするの! 具体的には愛する息子がとても良い状況になっていて、愛でなきゃいけない状況な気がするの!」

「そんな“気がする”だけで行かせる訳ないでしょう。……大体、マーちゃん一応移動制限かかっているんだから空間歪曲石は使えないし、そもそも王都にも入れないんじゃない?」

「そこは全力をもって密入する。私の全力を舐めないで欲しい」

「よし、絶対に行かせない!」


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