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自分に酔う余計なお世話だとしても(:白)


View.メアリー



「ところで、なにか話されていたのでしょうか?」


 私が話した事自体に後悔はないと開き直りつつ、相変わらず慣れない視線を浴びていると疑問顔でグレイ君が聞いてきました。

 そして同時に私達はどう話せば良いかと悩みます。グレイ君は言った事を素直に聞き過ぎる子なので、誤魔化す事は簡単でしょうが……


――クロさん達が困っているのなら力になりたいですし……


 もし彼の実家であるハートフィールド家になにかあったのならば見過ごす事は出来ません。

 私達は少なからずクロさん達にお世話にもなり、迷惑をかけた身。困窮しているというならば、力になるのが恩返しというものでしょう。


――ですが、いつも通り表情豊かですね。


 グレイ君は素直な子です。普段はその場に居るだけでその素直な表情を振りまき、周囲を明るくします。そして苦しい時は分かりやすいほどに表情の豊かさが消えるので、なにかを耐え忍ぶ時はとても分かりやすいのです。

 ですが今のグレイ君は先程の入室の挨拶も含めいつも通り明るく振舞っています。とてもクロさん達が財政難で、アプリコットが政略結婚をしようとしている状況には見えません。


「グレイ君……聞きたい事があるのだけど……」

「はい、なんでしょうフューシャちゃん?」

「アプリコットちゃん……ハートフィールド家の……結婚……ええと……」


 すると人前では殿下呼びですが、生徒会やプライベートではちゃん付けという極秘恋愛をしているかのように仲の良いフューシャ殿下が代表して聞くようです。……先程の呟きを聞くと不安ですが、適任と言えるでしょう。

 ですが、口下手なフューシャ殿下はどう言えば良いか悩んでいるようです。ここはフォローをした方が良さそうです。


「? あ、もしかしてアプリコット様から話を聞いておられたのでしょうか?」


 しかしフォローをする前に、グレイ君が話の内容をくみ取ったようです。

 元の情報はともかく、グレイ君がその反応をするという事は、やはり政略結婚は事実……? ですが、明るく言うのには違和感があるような気もします。ともかく私達は続きの言葉を待ちます。


「結婚……するの……?」

「はい、我がハートフィールド家の結婚式です。そして二つの貴族である御両家が結ばれる、とてもめでたい日取りになるかと!」


 二つの貴族が結ばれる……やはり、他家との結婚……!

 い、いえ、まだです。まだ別の可能性があるはずです。例えば……そう、カナリアもハートフィールド家の一員ですし、良縁に恵まれて他の貴族と結婚するとか!


「ですが残念な事があるのです……私めはあのヴァージンロードを外から眺める立場になりそうなのです……」

「どういう事なの……?」

「アプリコット様が歩くのを眺めるだけになりそうなのです。役割上、それは外せませんから……」


 やはりアプリコットが結婚するのですね……!

 しかも眺めるだけに留まるという事は、やはりグレイ君が結婚する当事者ではない(年齢的に当たり前かもしれないですが)という事です。

 ですが何故そんなにも明るく振舞えているというのでしょう。


「ええと……どうして結婚を今……?」

「以前から決まっていた事ではあるのです。ただタイミングがいつになるかの話だったのですよ」


 もしかして、既に決まっていたから覚悟が決まっていたというのですか……!?

 なんと言う事でしょう。私達は今までグレイ君の事を分かりやすく、可愛い子だと思っていたのですが、こんなにも強い心を持っていたとは……!


「グレイ君は……それで良いの……? アプリコットちゃんも……結婚を……」

「? はい。寂しくはありますが、同時に喜ばしい事です。我がハートフィールド家がこれからも未来に向けて続いて行く事が出来るのですから。アプリコット様も結婚に喜ばしく思っていますし、私めもその様子を見て嬉しく思いました」


 アプリコットの結婚、つまり寝取られを嬉しく思うという事は……脳が破壊されるのをグレイ君は楽しんでいるというのですか!?


「そんなに……お金に困窮しているの……?」

「お金……そうですね。今回の結婚で金銭面な不安はいくらか解消されるでしょう。私財を投げうってでも無償で助けていましたからね……」


 クロさん、そんな苦しい状況なのに私達に勘付かれないように振舞っていたのですね……!

 そしてアプリコットも救うために前向きな姿勢のようです。これはあまり部外者がでしゃばる訳にはいかないかもしれません。


――ですが、やはり納得はいきません。


 例え余計なお世話であろうとも、正しい事と思いこんで救う自分に酔っていると言われようとも構いません。

 当事者が納得していようとも、アプリコットがグレイ君と相思相愛なのは事実です。その仲を引き裂くなどあってはならぬ事です。

 綺麗事であろうとも、好きな者同士で結ばれるのが一番です。私だってヴァーミ――


――……今、妙な事を考えそうになったような気がします。


 ……私の妙な考えはともかく、クロさんやヴァイオレットだって政略結婚を望まぬはずです。もしかしたらヴァイオレットの実家が関わった結果であり、どうしようもなくて苦悩した結果の答えかもしれませんが、私達が出来る事があり、助ける事が出来るのであればやはり手伝いたく思います。

 アプリコットとグレイ君。クロさんとヴァイオレット。幸せに過ごし、見ていると「ああなりたい」と思うような関係性を、壊れるのは我慢なりませんから。


――皆さんも、似たような意見のようですね。


 この場に居るグレイ君以外の様子を見ると、エクルさんとアッシュ君が目が合って同意するように頷き。シャル君は自らの武器に手をやって戦う意志を示していました。


「グレイ君……!」

「え、フューシャちゃん、どうされました?」


 そしてフューシャ殿下は先程呟いていたように、助けられるのならば助けたいという意志に変わりはないように見えます。

 実際に今も感極まってグレイ君の手を取ろうとしつつ、その想いを伝えようとして――


「私は……わっ……!?」

「!? 危ないです!」


 なにかに引っ掛かったのか、滑ったのか、フューシャ殿下が体勢を崩します。

 それをグレイ君が支えようとして――一緒に転びます。


「大丈夫ですか!?」


 私達は二人に駆け寄り、無事かどうかを確認しようとして……


大丈夫です(ふぁいひょうふへふ)ちょっと(ひょっほ)苦しいですが(ふふひいへふは)


 ……転んだ状態でフューシャ殿下の大きなお胸に顔を埋める、グレイ君を見ました。しかも何故かフューシャ殿下の制服の一部が乱れて一部は露出した状態で顔に当たっています。


――……これがラッキースケベイ……ト〇ブル状態……!


 と、そんな事を思っている場合じゃありません。大丈夫とは言いますが、何処か打っていないかを確認するために早く起こした方が良いでしょう。


「グレイ君……私の下で……働かない……? 大丈夫……快適な生活を保証するよ……!」


 え、このままの状態で勧誘を始めましたよフューシャ殿下。


備考 グレイ語意訳


二つの貴族である御両家が結ばれる

神父様は貴族だから、私の両親と神父様とシアン様が二つ同時に結婚式が行われる場合には二つの貴族が結ばれるよ。



ヴァージンロードをアプリコット様が歩くのを眺めるだけになりそうなのです。

母上と一緒に付き添いで歩くのがアプリコット様になりそうだよ。



寂しくはありますが、同時に喜ばしい事です。

一緒に歩けないのは残念だけど、未来への幸福の象徴であるドレス姿を着て歩く母上を外から眺められるのが嬉しいよ。



今回の結婚で金銭面な不安はいくらか解消されるでしょう。私財を投げうってでも無償で助けていましたからね……

神父様は人を救うために無償で助けるし金銭面に疎いから、そこの所がしっかりしているシアン様と夫婦になれば、金銭面に不安はなくなると思うよ。


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