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百話記念:あるいはこんな奴らのヘンテコ世界


※このお話は百話を記念した本編とはあまり関係のないお話です。

 キャラ崩壊もあるのでご注意ください。

 読み飛ばしても問題ありません。






















「おーほっほっほっほっほ! 今日もいい天気ですわぁ!」


 俺は飲もうとしていた珈琲を噴き出した。

 朝早く起き、冷えを感じたので自分で淹れてゆっくりと過ごそうと思った矢先に唐突に訳の分からない事態に襲われた。


「ヴァ、ヴァイオレットさん? 突然どうなさいました、そんな物語に出てくる悪役令嬢のテンプレ過ぎて逆に珍しくなって来たその口調は? っていうかその縦ロールなんですか」


 そう、突然ヴァイオレットさんがお嬢様のですわ口調で朝の挨拶(?)をして来たのだ。

 服装もいつもの落ち着いた服装とは違い、どこかのパーティーにでも行きそうなドレスだ。さらには髪型も縦ロールになっている。正直似合わない。


「あら、なにを仰いますの。(ワタクシ)はいつも通りですわ。クロさんこそおかしいですわよ」

「は、はぁ。クロさん……ですか」

「さぁ、今日もせっせと土いじりをして銭を稼ぐ愚民どもを嘲笑いに行ってきますわぁ!」

「悪趣味ですね!?」

「黙りなさい、私にはこんな田舎は似合わないのです。本当なら首都のパーティーで殿下と共に国母になるはずだったのに……! それもこれも甲斐性が無いのがいけないのですわよ!」

「えっ、ごめんなさい……」


 明らかにこの状況はおかしいのだが、声と顔自体は同じなのできつく言われると割とショックだ。というより殿下(王族)と比べられると甲斐性がないのは仕方ないと思うんです。でも甲斐性が無くてごめんなさい。苦労をさせないように頑張りたいのですが、つい頼ってしまうのです。


「いえ、失礼しましたわね。夫に対して言い過ぎましたわ」


 え、なにこれ。ツンデレ? 間違った意味でのツンデレなの?

 俺の理解が追い付かないまま、ヴァイオレットさん(?)は高笑いをする。

 もしかしてストレスにやられたのだろうか。どうにか理解しようとしていると、このような状況でグレイはどうしているのかとふと思い、グレイについて聞いてみた。


「あの子ならいつもの様に朝帰りですわね。またシキの女と仲良くやっているのでしょう」

「グレイが!?」


 あの性関連は前領主のせいで無意識に避けるようになっているグレイが女遊びをしているという。どうなっているんだ。しかも言い方からして前からそのような行為に走っているような言い方だ。

 女性と仲良くなること自体は構わないのだけど、そんな所構わず遊びまくるグレイとか嫌だ。


「まったく……この年で祖母になる勢いですわよ」

「マジすか……ええと、すいません。ちょっと俺も用事を思い出したので一緒に外に出ても良いですか」

「ええ、構いませんわよ。私の素晴らしさを引き立たせる役割を持たせて差し上げますわ!」

「は、はぁ。よろしくお願いします」







「神を……神を崇めるのです! 神さえ崇め奉れば力に頼らずとも私達を救ってくださるのです! 救いは寄付(気持ち)金額(大きさ)によって寵愛の量が変わるのです! さぁ、罪が許される免罪符を得るための寄付はこちらに……」

「シアンが普通の(貞淑な)修道服なのに金の亡者みたいなことを……!?」


 教会に行ってみるとシアンが大勢の信徒を集めて、奇跡のような後光を差しながら悪徳な事をしていた。あと男性が多いのは気のせいか。

 普段なら「金と塵は積もるほど汚い」と言ったり「えっ、見守るだけの神が私達救うはずないじゃん。祈るのは感謝の為だけで救って欲しいからじゃないよ」と言うシアンがせっせと金を集めていた。こんなシアンは嫌だ。


「スノーホワイト神父様ですの? あの人なら“私より強い奴に会いに行く”って言って旅立ちましたわよ。神父で他者を救うなんてやってらんねぇ、とも言ってましたわね」

「どこの格ゲーキャラですか」


 何故神父様が止めないかと聞いてみたら、神父様は己が肉体で強者に会いに外国に行ったらしい。

 あの救いの見返りについて「感謝の言葉が見返りだよ」という神父様が他者に対しての救いが自分の為になる訳がない、と言っていたらしい。


「い、いやあぁあああ!! 血、血が! 俺に怪我を見せないでくれぇええええ!」

「お前はなんで医者をやれてんだ!?」


 怪我を見ては興奮するアイボリーは怪我を見て恐れ慄いていた。怪我で興奮するのもアレだが、ここまで行くと医者なんて何故やれているのか疑問なレベルである。


「やぁクロクン! 今日は僕の実験に付き合ってくれないか! 丁度天使様を降臨する儀式を行うための生贄が必要なんだ! 頼むから死んでくれ!」

「えっ、誰この理不尽な事を平気で言う爽やかイケメン」

「なにを言うのです、オーキッドですわよ」

「え!?」


 あの善良な黒魔術師のオーキッドは白魔術を使う見た目は善良な存在になっていた。

 生贄なんて「そんなものを用意して得られる結果に価値などないよ」と言う高潔なオーキッドがえげつない事を普通に言ってきている。……そういえばこんな顔だったな。普段はなんか黒いオーラで輪郭がぼやけて良く見えなかったけど。


「ヤァクロクン! 今日モイイ天気デスネ!」

「ぶっ!? お前ロボか!? なんで全裸!? それにお前火傷と呪い痕はどうした!?」

「火傷? 呪イ? ハハッ、ナニヲ馬鹿ナ事ヲ。ワタシノ美シイ肢体ニ火傷ト呪イガアル訳ナイジャナイデスカ! トイウカロボッテナンデス?」

「そうですわよ、クロさん。ブロンドさんは他者に綺麗な肌を見られるのが大好きな変態ですわ」


 ロボ……ブロンドは他者に見られることが好きな変態になっていた。

 素顔とか身体を見られるのは恐怖していたはずなのに、なんかシュバルツさんのような変態になっていた。それとシュバルツさんの時もそうだったが、やっぱりこうも堂々としていると、ありがたみが無い。色々と。


「良いか、クロ坊。女は八十過ぎてからだ。それ以外は磨きもかかっていない刀剣を打つための素材となんら変わりはねぇんだよ」

「ちなみに少年(ショタ)好きに関してはどう思いますか?」

「好きにして良いとは思うが係わりは持ちたくねぇな」


 ブライさんは性格は殆ど変わりないが性癖が変わっていた。

 ある意味こちらの方が良いのだろうか。……いや、お婆さん相手に興奮する渋い中年というのも異様だな。なんか今にも使うと老化する剣とか作りそうだ。


「あのね、アプリコットはね。将来お花屋さんになりたいの。家を綺麗なお花で満たせば、お父さんやお母さんもアプリコットを迎えに来てくれるかもしれないでしょ?」

「ああ、うん。頑張ってねアプリコット。その願いが叶う事を応援しているよ」

「うん、ありがとうクロお兄ちゃん!」


 ゴスロリの服を着るお人形さんみたいなアプリコットの頭を撫でてあげると、「えへへー」と嬉しそうに照れていた。

 俺の知っているアプリコットであれば父と母なんて迎えに来た瞬間に魔法を喰らわせそうなのに、あざといほどに攻撃性が無くなっていた。だけどラフレシアとマンドラゴラの栽培は良くないと思う。


「おいこら領主この茸を喰らえ! 見るからに毒だが私が食べればどうなるか分からんからな。まずお前が喰って効能を確かめさせろ!」

「ふざけんなこの野郎!」


 エメラルドは他者で毒を実験する危うい存在になっていた。

 自分に実験するのもアレではあるが、他者に服用させて効能を確かめさせるとか最悪すぎる。なんか毒が回って死に至るまでの様子をずっと観察されそうな勢いだ。


「ハッハー! なにを言うんだクロ。男女は妄りに体の関係を持つモノではない。生涯この相手と決めた相手だけ添い遂げることが大切なんだ!」

「あれ、カーキーはこっちの方が良い気がする」


 うん、色情魔(こいつ)はこのままの方が良い気がする。


「くそっ、どうなっているんだ……!」

「クロさんこそどうなさったのです。普段のシキとなんら変わりはありませんわよ」


 こんなシキは嫌だ。

 確かに俺の知っているシキでの奇行に色々と悩まされることは多かったけれど、こんなシキは治められる自信がない。

 縦ロール高笑いお嬢様な嫁。十一にして女遊びに耽る息子。金と性の亡者の修道女。強さを求めて職務を放り出した神父様。血を少量見ると興奮(恐怖)して逃げる医者。白魔術師(不健全)。全裸闊歩系金髪美女。熟女狂い鍛冶師。少女のような夢を見る危険な花屋希望。他者で人体実験する薬剤師。まともな色情魔。

 もしかして俺の知っているあいつ等って、まだマシな範疇だったのか……!?

 だがこの場合正常なのはどちらなのだろう。この世界では俺が今までを記憶違いしているだけで、俺が異常なのではないのだろうか。


「いや、これは夢……?」


 そうだ、これは夢なんだろう。そうでなければ説明がつかない。

 もしかしたら並行世界的な場所に転生(転移?)したのかもしれないが、夢だ。夢に違いない。


「まさかまだ夢心地でいらっしゃいますの? まったく、不甲斐ない、もう少し貴族としての自覚を――」

「よし、ちょっくら飛び降りてきます。教会の頂上からなら大丈夫でしょう」

「ちょ、クロさん!? 何処に行くつもりですの!?」


 俺は静止するヴァイオレットさんを無視し、教会に向かって走っていく。

 つねるとかじゃ生温い。もっと強い衝撃が無ければこの悪夢からは冷められない。

 頭から飛び降りれば行けるはずだ!


「……あれ、■■■。何処に行くの?」

「あれ? ■■■■■■■■■。何故ここに?」

「何故って、そりゃ■■■の■だから、ここに居ても不思議ないでしょう? というよりなんでさん付け?」


 なんだか彼女の声が上手く聞き取れない。なんだろう、これ。

 もしかして夢から覚めかけているのだろうか。


「それに私はこの■■の■■■だったからね。変なことに巻き込まれる前にここに逃げて来たんじゃない」

「えっ、■■■って……」

「うん? 寝ぼけているの? じゃあちょっと目を覚ますために頬を――」







「――ロ殿! クロ殿!」

「――はっ!」


 目が覚めると、首都の宿泊施設の天井がまず目に入った。

 どうやら悪い夢を見ていたようである。

 傍らにはヴァイオレットさんとグレイ、そしてシアンが心配そうにこちらを覗き込んでいた。


「大丈夫でしょうか、私め達の部屋にまで唸る声が聞こえてきましたもので」

「うん、心配でイオちゃんと一緒に来たんだけど」


 どうやら隣の部屋のグレイと、同じく隣の部屋でシアンと同じ部屋に泊まっていたヴァイオレットさんの所まで俺の苦しむような声が聞こえて来たらしい。


「……良かった、夢か」

「夢? もしや首都に来た事でストレスが……?」

「ああ、いえ大丈夫ですよ。多分関係ありません」

「それなら良いが……」

「ええ、大丈夫です。……ごめんなさい、俺、頑張りますから。甲斐性があると言われるように頑張って、ヴァイオレットさんを縦ロールにはさせませんから……!」

「クロ殿、落ち着いて欲しい。訳の分からない事を言わないでくれ」


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