07 街へ
翌朝、野営の片付けを終えて街へ向かって出発した。夜の見張りに関しては年齢的なものや肉の件で免除された。仕事を辞めてから朝までログインしている事も多くあったので問題は無かったが…
「昨日はよく眠れたか?」
「ええ。それなりに」
正直、地面が固くあまり寝心地は良くなかったがそれなりに寝れたし、説明が面倒で街にもよらず遠くの村から旅をしている事にしてしまったので、こう言っておくのが無難だろう。
「そういえば、これから行く街ってどんな所なんですか?」
「うん?なんだ。知らないのか?」
「森の中から適当に街道に出てから道なりに歩いていただけだったので…」
「おいおい、危ないぞ。まぁそうだな…。街の名前はマルセアだ。特にこれと言った特産なんかは無いが、割と大きくて商人なんかも集まるから物は色々あるな。あと領主が住んでるぐらいか?」
「領主…。という事は貴族ですか?」
正直、異世界ものって領主ってあんまり印象良くないんだよね。と、そんな事を考えているのが顔に出ていたのかアランが笑って言った。
「ははは。そんな顔をするって事は貴族に良い印象は無さそうだな。まぁマルセアの領主は領民の事をちゃんと考える良い領主だって噂だ。俺も会った事は無いからあまり知らんがな」
まぁ当然だろう。冒険者やっててそんなに頻繁に貴族に会うなんて事は無いだろう。
「それならその街を拠点にでもしようかな」
「拠点?」
「お金も無いし、適当にお金を稼いで小さな家でも買って暮らそうかと…」
「おいおい、家ってかなり稼がないと駄目だぞ?薬代や武器のメンテナンスだって金が掛かる。数年程度じゃ買えないぞ?」
「基本、魔法を使うから武器のメンテナンスはあまり掛からないし、回復魔法があるから薬代もかからないよ」
「えっ!?リアちゃん魔術師なの!?しかも回復魔法とか超レアじゃん!」
アランとの会話にチャラ男ことリッツが割り込んできた。昨夜からグイグイ来るから若干ウザい。ちなみにおっぱいさんことレイファも妙に抱き着いてきたり、頭を撫でてきたりウザい。胸を乗せてくるんじゃない!
魔術師というのは魔法系の初期職だ。それから基本属性の火、水、風、土の4属性を一定レベル以上に上げて、プレイヤーレベル50以上で魔法士になる。更に光と闇の魔法を覚えて一定レベルに上げてプレイヤーレベル100以上で魔導士になる。正確にはレベルも職も更に上なのだが見た目年齢的に魔術師と思ったのだろう。
「まぁ、そんな所だよ」
「ねぇねぇ、俺らのパーティに入ったりしない?」
「入ったりしない。基本、1人が好きなんだよ」
「………」
リッツが入って騒がしくなった分、アランがなぜか静かになった。アランはその後もあまり喋らなくなった。