63 奴隷
リビングでダラダラと過ごしていた時、玉藻がおもむろに口を開いた。
「時にリアよ。この屋敷には使用人はおらんのかの?」
「ん?元々、私一人しかいなかったけど?」
「雇ったりはせんのか?」
「欲しいとは思ってたけど、特に困ってないからなぁ…」
元々、店の方が落ち着いたら人を雇おうとか考えていたけど、ゲームが現実になり魔法が自由度を増した事であまり困らなくなった。
適当に家の中を歩きつつ、風の魔法で埃を集める。そのまま、窓の外に放り出して火の魔法で焼却。その後、水の魔法で綺麗にして終了だ。水に振動のイメージを使えば、割と汚れた部分も簡単に落ちる事は店の清掃で確認済みだ。更に水はそのまま魔法で回収出来るので乾燥の時間もいらない。
とは言え、今回の様にちょっとした遠出の時や、来るか分からないが来客時には人がいた方が良いかも知れない。
「やっぱりいた方がいい?」
「ここまで大きいとむしろ普通はおるじゃろ。お主の力を借りたいと誰か来るやも知れんしの。それに儂も楽じゃ!」
「とは言え、知らない人に身の回りの世話ってのもなぁ…。私の性格的に敵作りやすいし、防犯面もあるし…」
「ふむ…。ならば奴隷はどうじゃ?奴隷ならば基本、主人に逆らえんしの。中には貴族の不興を買ったというだけで奴隷にされる者もおると聞く。他にも使用人としてのスキルは持っておる者はおるじゃろ」
「奴隷か…」
異世界物の定番と言えば定番だけど、まさか自分がその状況になるとは…。というか、元日本人としては人身売買の類は悪い事ってイメージなんだよね。
「奴隷ってどんなのがいるの?」
「多いのは犯罪奴隷と借金奴隷じゃな。あとは金が無くて身売りした者と戦争奴隷じゃ」
「借金奴隷と身売りの違いって何?あんまり変わらないんじゃない?」
「借金奴隷はそのまま、借金をして返せずに奴隷になる者じゃな。売値に返済されておらん分の金が上乗せされておる分高い。身売りは生活が苦しく自ら奴隷になった者じゃ。奴隷は一応最低限の食事などは出るからの。こちらは借金が無い分、価格としては適正な者が多いの」
「聞いといてなんだけど、何でそんなに詳しいの?」
「昔の知り合いに詳しいのがおっての。まぁさっき話したのも昔と変わっていなければじゃ」
「犯罪奴隷は論外だけど、借金とか身売りならまだマシかな…。見に行ってみようか…」
こうして玉藻の一言で、随分前に考えていた使用人を雇う事を検討した。まぁ魔法の練習がてら掃除してたけど、かなり上達したし他人に任せられるなら楽になるか…。ていうか玉藻、自分でやろうとか考えないのか。




