31 終息
目の前の状況をどうするべきか?
ギルマスが強制退場になった直後、ベルガさんはこちらを向き深く頭を下げてきた。
「申し訳なかった」
「いやいや、頭を上げてください。ベルガさんが悪いわけでも無いですし、特に問題も無いですから」
お婆ちゃんの時は気にして無かったが、グランドマスターだなんて偉い人に頭を下げられると緊張する。元社会人としての習慣のような物か、長く人と接してなかった弊害か…
「いや冒険者ギルドが迷惑をかけたんだ。それを統括する身であれば当然だ。それと敬語も無理に使わなくて良い。アマンダの婆さんと喋ってる時が素だろう?」
「まぁ…そう言うなら…」
「何だい、ベルガ?孫に気兼ねなく喋ってもらえる婆の特権を奪う気かい?」
「いや、孫じゃないし…」
お婆ちゃんはからかう様に笑って言った。そう言われてちょっと嬉しい自分がいる。中身はアラサーなんだけど、肉体に精神が引っ張られてるんだろうか?
「いや、そういう訳ではないが…。それと嬢ちゃんが出した条件は、俺が引き継ごう。グランドマスターなら問題ない」
「?」
つい首をかしげてしまった。
「嬢ちゃんがギルドに出した3つの条件だ。あれはあった方が良いんだろ?」
「別にいらないよ」
「何!?じゃあ頼みたい依頼が…」
「だって冒険者じゃないし」
「えっ?」
ベルガさんの表情が固まった。
そもそも冒険者ギルドで登録したのは身分証とお金の為だ。実力的にそれが1番楽だと判断しての事だったが、今の生活でも問題無い。適当に狩りに出れば、お金と店の商品は手に入る。今まで通り適当に不便な事を楽にする魔導具を作って売ったり、家の庭で適当に野菜や薬草を育てる生活が出来る。
そもそも商業ギルドに素材を卸してるだけで、お金は溜まっていく一方なのだ。わざわざ冒険者として登録し直す必要が無い。
「じゃあ、国への所属……も興味は無いか…。もともと王族からの依頼も防いでたぐらいだしな」
「まぁね。てゆうかソレ、ベルガさんが気にする事なの?」
国への所属って事は、良くラノベで見る騎士団とか宮廷魔導士とかそんなものだろう。冒険者を束ねるグランドマスターには無縁ではないか?
「個人的な知り合いが何人かいてな。優秀な冒険者がいたらスカウトしてくれって頼まれてんだよ。まぁ自由な冒険者稼業から堅苦しい王城勤めに変わる訳だから誰も受けんがな。あっ」
ベルガさんが何かを思い出したように声を出した。
「そうだ!そうだよ!お前さん迷宮に興味はないか!?」
「迷宮?」
「ああ!迷宮とかダンジョンとか言われてるがどっちでも良い!あれは冒険者ギルドのカードじゃ無いと入れん!どうだ?」
「無いと言えば嘘になるけど…。私、仕事しないかもよ?」
「じゃあこうしよう。さっきの条件は当然受ける!仕事に関しても登録抹消の期限は無しだ!その代わり、たまに!たまーに!!俺たちの出す依頼を受けてもらいたい!どうだ?」
たしかランクごとに仕事をしない期間の長さで登録を消されるって話だったか…。お金の為に働くつもりだったから大して気にして無かったけど、店や趣味に時間を割けるし悪くない。依頼もたまにって言ってるけど、多分高ランクの依頼だろうから暇つぶしや商品の仕入れとしては悪くないかも知れない。迷宮にも入れるらしいし…
「分かった。口車に乗っておく。ただ、依頼があまりにも多かったら迷わず辞めるから」
「おう、それでいい。最近、たまに強い魔物が現れる事があってな。近くに対処できる奴がいない場合が多くなってな。いつ来るか分からん相手に高ランクの冒険者を拘束する訳にもいかなくてな。だがココなら最短3日あれば往復出来る。ちょいと特殊なやり方だがな」
特殊というのは召喚獣を用いたやり方らしい。ガルーダに籠を持たせ、更に強化魔法でガルーダを強化しての連続飛行らしい。もしかしたらユリナもこの方法だったのかも知れない。ちょっと面白い発想だ。ゲーム時代はそんなアイテムが無かったから出来なかったが、籠さえ作れば自分も出来るかも知れない。ゲーム時代の様に無理やり乗って落ちる心配もない。
新たな可能性を前に楽しくなるリアであった。




