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異世界の女大賢者  作者: 山田 奏
第一章 新世界編
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29 激怒

翌朝、お婆ちゃんと共に冒険者ギルドに向かった。相手の出方が知りたいので、お婆ちゃんには私の情報をなるべく抑えるように頼んだ。

冒険者ギルドに着くと一人の女性が待っており、その人の案内で2階の部屋に通された。そこには4人の人物が待っていた。

受付嬢のライナさん、その隣に神経質そうな金髪の男、その向かいに50代程の白髪のマッチョなおっさん、その隣に30代後半~40代程の銀髪のおっさん。



「おう。久しぶりだな。アマンダの婆さん」


「まったく相変わらずだね。ベルガ」



お婆ちゃんはマッチョさんと知り合いの様だ。マッチョさんはこちらに視線を向けた。



「そっちの嬢ちゃんは?」


「まぁ関係者みたいなもんだよ」



その後、軽く自己紹介が始まった。とは言え、ほとんど私の為のようなものだった。マッチョさんはグランドマスターでベルガという名前で、お付きの人はレオンさんらしい。ライナさんの隣にいるのが、冒険者ギルドのギルマスでジェルス・カルーノという名前だそうだ。



「で、わざわざ集まって何を話すってんだい?」


「しらばっくれるな、婆さん。あんたのとこから出回ってる素材の件だ」


「別に商業ギルドが何を売ろうが勝手だろう?」


「問題は出所の方だ。冒険者ギルドには討伐の報告が上がってない。どこから仕入れてる?」


「仕入れに関しては言うつもりは無いね。商人にとっちゃ信用にも関わるしね」


「こちらとしても引けん。依頼が達成出来ず、この支部の信用が落ち始めてるんだ。せめてどこの誰が仕留めたのか教えては貰えないか?」


「それ、わざわざここでする話かい?商業ギルドでも良かったじゃないか」



そうお婆ちゃんが言うとベルガさんは黙った。

コレ、やっぱり私いらなかったよね?とか思っているとベルガさんが話を続けた。



「依頼がなかなか達成されないと報告を受け、この支部に人を派遣した。その際にそこの受付嬢が何か知って居そうだと報告を受けた」



視線を送りながらそう言った。ライナさんは顔色を悪くし、若干震えている。



「が、聞いても何も教えてくれず、ただ『言えない』とだけ。それで今回、ここでの話し合いにさせて貰った」



ライナさんはただ俯き、震えている。誓約書まで書かせたとは言え、もう冒険者を辞めた人間との約束を守っているとは…。流石に可哀想かな…。



「お婆ちゃんに素材を流してるのは私だよ」



ベルガさんに向かって言い放つ。ベルガさんがこちらを見て驚いている。



「本当か!?じゃあ、お嬢ちゃんが仕入れているんだな!?誰が魔物を狩ったのか教えてくれ!」


「それは…」


「ベルガ!!」



私だと言おうと思ったら、お婆ちゃんが怒鳴った。短い付き合いとは言え、こんなに怒りを(あらわ)にしたお婆ちゃんを見た事が無い。



「あんたには昔、教えたね!?商人にとって仕入れってのがどういう物か!」



仕入れ?そういや前に仕入れや流通ルートは飯のタネだって言ってたっけ?



「商人にとって仕入れ先や流通ルートってのは、あんたらにとって武器やスキルと同じだよ!他より良い物を!他にない物を!それを手に入れて商売するのが商人だ!」



その例えは言い得て妙だな。他に無い商品を揃える事が出来るのは大きなアドバンテージだ。確かに強力な武器になる。流通ルートもそうだ。バレれば途中で大金で買い占められたり、盗賊に襲われるかも知れない。戦闘に置き換えれば『私はココを攻撃しますよ』と教えているような物。来る場所を事前に知っていれば簡単に躱されるし防がれる。



「あんたは今!この娘に!敵か味方かも分からない奴を前にして武器を捨てろと言ったも同然なんだよ!あんたはそんな事すんのかい!?商人舐めんのもいい加減にしな!!」



顔を真っ赤にして怒りの言葉をぶつけるお婆ちゃんに驚きと同時に、うれしさがある。商人全体に言える事なのかも知れない。けど、こうして目の前で私を庇い、相手に怒りをぶつけてくれている。日本にいた時では考えられない事だ。


血の繋がった家族でさえそんな事は無かった。私が払ってくれると家をリフォームして請求書を送ってくる両親。ブランド物の服やバッグを買い漁り私に金をせびってくる姉。仕事が合わないから辞めたとか言って、仕事も探さずに金を借りに来る弟。

家族でさえあんななのに、他人の私にここまで力を貸してくれた。なんて優しい人だろう。



「もう良いよ、お婆ちゃん」



そう言って、お婆ちゃんに顔を向けた。もしかしたら私は今、生涯で初めての心からの笑顔になれているかも知れない。

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