147 研究者
適当に向かってくる魔物を狩りながら村の中にまで入っていった。目指しているのは村の中心にある広場だ。そこに反応が2つあり、1つは見た事も無いような反応だ。広場の見える通りまでやってきて、反応の正体を知った。
「悪趣味だね。吐き気がするよ」
「そうかね?なかなか悪くないと思うがね。元が醜い人間どもだと考えればなかなかのものだろう?」
一言で言うならば、巨大な肉塊だ。赤黒く脈動するその姿は巨大な心臓にも見える。さらに特徴的なのはそこから伸びる人間の部位だ。特に規則性も感じられないように腕や脚が生え。薄い膜に押し付けたようにそこかしこに人間の顔が浮き出ている。
そして、その肉塊のそばに立つ男が振り返った。浅黒い肌、真っ黒の髪、そして頭から生える角…魔族である。
「さて…。それで君は何者なのかな?周りは魔物共に守らせていたはずだが…」
「ただの冒険者だよ。この村に高レベルの魔物が現れたって聞いてね」
「ふむ…。それで魔物共は?」
「そこそこ良い素材にはなるんじゃない?全部、1撃だったけど」
「チッ…。さっさと素材にしておけば良かったか?」
「素材?あのまま使ってても十分でしょ?」
「私は研究者だ。色々やるが、専門は生物の強化や合成でね」
そう答えた男は確かに研究者っぽい白衣を着ている。返り血か何かで汚れているが…
「魔物共はテイマーからの借り物でな。研究材料にしたいとは思っていたのだがね」
「いっそ1匹にまとめてくれてれば、私も手間が少なくて良かったんだけどね」
「面白い事を言う小娘だ。それにあれらを軽くあしらう実力もある。良い実験材料になりそうだ」
「面白い事を言う魔族だね。あんたには無理よ。だって弱いもん」
研究者を自称している事から分かる様に恐らく戦闘はあまりしないのだろう。レベルは275と低い。ただ、隣の肉塊が気になる。天翔たちと違って、分析は発動しているが全ての項目が『???』と表示されている。単純にレベルが高いのか、この世界の理から外れた存在なのか…。
まぁ初見の相手と戦うようなものだ。子供たちにあれだけ教えといて、自分が出来ませんなんて言うつもりは無い。いつも通り、観察し、試し、結果を確認していくだけである。




