144 再依頼
教会が新しく稼働し始めてから数日、前と変わらず近隣の人たちは来てくれている。ついでにマリーの像の杖を改造し、教会内を範囲にしたキュアオールを発動する魔導具にした。その為、体調不良の人などが来ては勝手に治るという現象が発生し、街中でも教会の事を噂する声が聞こえるようになった。
しかも、ベネッサたちの人柄もあってか、野菜や売れ残りの品などを持ってきてくれたりする人もいる。良い傾向だ。
そんなある日、国王から通信が入った。
『久しいな』
「そうだね。でも、勇者はこっちいないよ?てか、色んな所に派遣してるの国でしょ?知ってるでしょ」
『いや、今回はお主に用だ。ベルガが依頼を出したいらしい』
「…ベルガって誰だっけ?」
『冒険者ギルドのグランドマスターだ…。名前くらい覚えておけ』
「覚えてなくても困らないしね。基本、マルセアで生活してるし」
たまに転移でマリーナに魚介類を仕入れに行くが、それ以外はマルセアかその周辺で足りる。
肉はウルフ系やボア系が豊富だし、ちょっと奥まで行けば蛇系の魔物もいる。野菜は割と売ってるし、自分の家の庭でも育てている。薬草を教会に任せた為、庭の薬草は少量を残し、すべて野菜に変えた。
「まぁいいや。勇者居ないし、子供らも毎日やってる訳じゃないからね。今から行ってみるよ」
『今から?そうだな、急を要する依頼なら早い方が良いだろう。今から出ればお主なら2日もあれば着くであろう』
「いや、王都近くまで転移で行くから、30分もあれば着くよ」
『転移?はっはっは、アレはお伽噺にしか出てこない伝説の魔法であろう』
「あれ?言ってなかったっけ?」
よくよく思い返してみると、グラマスには素性を言ったが、国王には詳しく話してない気がする。まぁ知られても困る事ではない。私との関係性を考えれば、他言もしないだろうし。
「まぁ良いや。早めに行くとだけ言っといて」
『おい、待て…。さっきのは冗談ではな』
面倒になったので会話中だったが切って、準備に取り掛かった。と言っても、さほど用意する物は無いが…。せいぜい服を着替える程度だ。
その後、適当に王都近くの目立たなそうな所に転移して、王都に入った。コレ、ある意味面倒ではあるな。ゲームの時は街中の広場に転移出来たし、街に入るのに通行の許可なんて取らなかったし。
街に入り、冒険者ギルドにやってきた。受付嬢にグラマスの所まで案内してもらって部屋に入った。
「久しぶり。依頼なんだって?」
「…随分早い到着だな」
「え?そう?」
「ああ。国王に話を通したのが1時間程前だからな」
「…ああ、そんな事もあるよね」
「返答になっていないんだが?」
そりゃ連絡入れて1時間で来られたら早いと思うわ。普通なら馬車で1週間くらいらしいし。
その後、前の説明に加え、転移について説明した事でなんとか理解を得られた。




