134 黒幕は…
目の前で横たわっているアレスから少し離れた場所に座る。
「はぁ…はぁ…。…ふぅー」
「随分、お疲れなようだな」
「当たり前でしょ?魔力ほとんど持ってかれるんだから…」
今の回復速度なら2~3分もすれば動けるくらいには回復するだろうが、それでも戦闘中に切れれば致命的だ。これはかつて対アレス用に考えた不意打ちコンボだ。ただ、前回は扱いが完璧じゃなかったから失敗した。ゴーレムの召喚、気配遮断、憑依召喚からの背後からの奇襲。今でこそギリギリで成功したが、前回の時は気配遮断は完璧じゃなかったし、憑依召喚も時間が短かった。おかげで影から出た所でボコボコにされたものだ。
「なぜ、私を殺さない?」
「魔力切れだって言ってるでしょ?」
「動く事ぐらいは出来るだろう。私はもはや動けん。止めぐらい刺せるぞ?」
死霊術によるアンデットは肉体の損傷率で動きが鈍くなる。腕や足では大した事は無いが、胸を貫いた状態なら動く事は難しいだろう。近くに術者がいれば回復も可能だが…
「あんたを動かしてる術者は?」
「それは…。…どうやらそれは喋れんようだ。言葉が出てこない」
「情報の秘匿はやってるか。まぁそんな事出来るやつ、そんなに多くないんだろうけどね」
少なくとも人間サイドにはいないだろう。という事は魔族サイドにいる何者か。アレスの状態を考えればレベルは500前後程だろう。
「他に術にかかってるヤツは?」
「知らないな。私が目覚めた時、周囲には誰もいなかった」
「は?術者は?」
「見ていない。だが、自分のなかで強者を斬るという思考だけが渦巻いていた。大分、自分の意思で動けるようにはなったが、今もそれは変わらん」
「遠隔で死霊術とか、無いわー。戦場とか最強じゃん」
後方の安全地帯から手駒を量産できる。それこそ敵も味方も死んだ人間ならば無差別に。
「そんな事が聞きたくて、生かしているのか?術者が近くにいれば私は復活するぞ?」
「近くには誰もいないよ。てか、流石にもう戦うのは勘弁。でもまぁ弱体化してるとは言え、やっと1本取ったんだから」
「やっと?前に会ったか?それならば覚えているはず…」
「1000年前。まだこの世界がゲームだった頃に」
「1000年前?ゲーム?お前は…うっ!?」
「アレス!?」
急に苦しみ始め、アレスの体が表面から溶ける様にボロボロになっていく。数秒程で完全に体は無くなり、私は1人その場に残された。
「…動かなくなって、負けたと判断したかな…。情報は少しでも漏らさない方が良いし、術を解いたか…」
頭ではそう理解出来ても、胸の内では複雑な思いが駆け回っている。
とりあえず、術者を見つけたらぶん殴る。そう心に誓い、少し休んだ後にマルセアに向けて歩き出した。
最近は随分と暑くなってきましたね。各所で30℃越えもあるようです。この時期に30℃って、夏はどうなるんでしょうね?
 




