132 攻防
どれぐらいの時間が経っただろうか?森を駆け回り、リアは剣聖と剣を交えていた。
「ははは!この時代にもこれほどの強者がいたか!」
ステータスは明らかにこちらが上だ。更に技術も目の前の男に習った。だというのに、未だに決定打を与えるどころか、まともな攻撃も与えられていない。
木々を上手く使い、一瞬視界から外れるのが鬱陶しい。
「くっ!…何でその程度のステータスでそこまで速いの?」
「ステータスなんぞただの数字だ。遥か昔から培われてきた武の技術とは、いかに上手く体を扱えるか、いかに相手を効率良く倒すかを追求したものだ。そもそも武術とは力に乏しく、体の小さな者が強者に勝つために生み出した物。ただその本質を体現しているだけだ」
言っている事は分からなくは無い。相手の力を上手く流せば、力で劣っていてもダメージを負う事は無い。相手の弱点を上手く突けば、小さな力でもダメージを与えられる。それを追求し、効率化させたものが武術であると。
だが、あからさまな力の差の前には小手先の技は意味をなさない。小さな蟻1匹では像には勝てない。だからこそ、弱者は群れを形成するのだ。
「戦闘中に余計な思考は命取りだぞ?」
後ろから聞こえる声に咄嗟に反応し、剣聖の1撃を回避した。とは言え…
「腕1本か…。本当に上手く避けるものだ。頭から真っ二つにしようと思ったのだがな」
「…つっ!…師匠が良かったんじゃない?」
「お前の師か!これほどの実力者の師ならば、もっと楽しめそうだ!」
私の事に気付いてない?いや、1000年も経ってれば記憶も無くて当然か?それとも半端な死霊術で記憶が完璧じゃないのか?
「私の師匠、死んじゃっててね。あんたは戦えないかな?」
言葉を交わしながら、腕を治療する。魔法の発動はことごとく潰してきてたのに、治療はスルーか…。もしかして、長く楽しむ為に見逃した?
「それは残念だ。では、今を楽しむとしよう!」
記憶が曖昧で私の事を覚えていないなら、1つだけ相手にダメージを与えられる可能性がある。ぶっちゃけ今の状況でやるのは嫌なんだけどな。




