130 戦場
だだっ広い荒野を埋め尽くさんばかりの影が蠢いている。
「なぁ…コレ…」
「全部、魔王軍だろうね。魔物が大半、ちょくちょく魔族が混じってる感じ。まぁ弱い奴だけど」
いったい何万という魔物を集めたのか…。これは確かにヤバいな。
「1発だけ手伝ってあげる。その後はよろしく」
「1発だけって…」
魔法を展開し、より多く敵を巻き込めるように敵の中心地を狙う。
魔物たちの下に巨大な魔法陣が浮かび上がり、巨大な炎の渦が敵を巻き込んだ。
「おお!凄いな!」
「彩音…。凄いとかってレベルじゃない…」
「こんな大規模な魔法を、あれだけ短時間で…。しかも無詠唱…」
火と風の複合魔法だ。風の『トルネード』という魔法に炎を混ぜただけであるが、意外に調整が難しかった。火が弱いと風で消えてしまい、逆に強すぎると強力な上昇気流が発生して、短い時間しか効果を発揮しない。
「まぁこれで6割くらいはいけるかな?」
これの1番の特徴は、風によって周囲の敵を吸い寄せる効果があるところである。周囲を巻き込み、範囲に入った敵は燃やし尽くす。死体処理も同時なので後が楽である。と言ってもゲームならばであるが…
「あ、やば」
咄嗟に魔法を止めて、様子を見る。地面が赤々と燃えている。
「おい!?アレじゃ戦えないだろうが!」
「てへっ」
声だけで特に悪びれた様子も無く言ってみる。高温になり過ぎて、地面がマグマと化していた。あれでは戦うどころか近付くことも出来ないだろう。
「水ぶっかけてみる?多分、水蒸気爆発起こるけど」
「…被害は?」
「専門じゃないから分からないよ。けど、たしか水から水蒸気って体積が1700倍とかって聞くし、この辺一帯は吹き飛ぶんじゃない?」
「死ぬだろうが!」
ちょっとした冗談じゃん。やったところで私は防げるけど、後がめんどくさい。
「とりあえず周囲凍らして、少しずつ温度下げるかな…」
直接ならば危険だが、周囲から冷やしていけば何とかなるだろう。氷が解けても、少しずつ蒸発するだろうから爆発はしないだろうし。
生き残ってるのは結構外周側だし、戦う分には問題無いだろう。きっと夏の甲子園のマウンドぐらいには暑いだろう。まぁ立ったこと無いからどんなもんか知らないけど。だって女だし。
どうでも良い情報ですが、私は中学、高校とソフトボール部でした。
高校の時はピッチャーでしたが、なかなか辛いものでした。
暑い中投げているというのに、後ろから飛んでくる野次、野次を飛ばした選手のエラー…
ふざけんな!、と心の中で叫んでました。口には出しません。チキンですもん…




