106 王の矜持
副団長ズはそのまま騎士団に連れていかれた。一瞬、同じ組織の人間が連れて行っても有耶無耶になるだけじゃ無いかとも思ったが、騎士団長は真面目っぽいし、ぶっちゃけ有耶無耶になったところで実害は無い。
「そちらとしては不安に思うかも知れんが、我ら王国騎士団がきちんと対処する事を誓おう」
「別に今後、騎士団と関わる予定とか無いからどうでも良いよ。こんな事になった以上、もう城に来ることも無いし」
「それでは用がある時はこちらからお邪魔するとしよう」
騒ぎが収まったからか、奥の方に引っ張り込まれていた王様が出てきた。宰相らしき人も一緒だ。
現れてすぐに王様が頭を下げた。宰相さんも驚いた顔をしている。
「今回の件、こちらから呼んだにも関わらず、不快な思いをさせてしまった。心から謝罪する」
「王様がそんな簡単に頭下げていいの?しかも、こんな訳の分からない小娘に」
一国のトップが自分に対して、頭を下げている事に驚きと戸惑いがあったが、なんとか顔に出さずに言葉を返した。
「それが国…ひいては民の為となるならば、頭ぐらいいくらでも下げよう。民、無くして国無し。国、無くして王無し。我が王家に伝わる初代国王の言葉だ」
「まぁ…言わんとしてる事は分かるけど…」
民のいない国は無いし、国が無いのに王がいる訳ない。そんな王がいれば、まさしく裸の王様状態だ。
宰相さんも言ってたが、きっと王様は国民に好かれている事だろう。
「分かるけど、簡単に頭は下げない方が良いよ。相手に下に見られるから」
「下げる相手くらい見定めるさ。お主の場合、下手に尊大な態度をとって国を出ていかれる方が怖い」
何でも今まで私が狩ってきた高レベルモンスター達の素材で、騎士団たちの装備やら国境を守る砦の防備を固めているらしい。
確かにそれは出ていかれるのは怖いな。他国、しかも隣国が自分たちと同じように装備を整える可能性がある訳だからね。
「時に、先ほど話していた勇者たちの話を聞かせてくれないか?」
「勇者?ああ、そろそろ帰ってくるんじゃない?多分」
正直、分析魔法で勇者たちのステータスが見れなかった。レベル的に負けている事は無いだろうが、恐らく異世界の人間って事で、魔法の対象外になっていると予想している。とはいえ、あそこまで潜れるんだから実力は十分だし、もう帰るって言ってたからそれほど時間をかけず帰ってくる事だろう。




