案内
時間は少し前へ遡る。
ホウが持ってるであろうピュンチュラのあれの匂いを辿り、中央へとたどり着いた。
「まさか中央に連れ込まれたとは思いもしなかったわ」
どうしよう。パスも何も持ってないし、かと言って上から入ると魔力がすっからかんになっちゃうし…。
考えた挙句、頑張って門にいる兵士を説得しようということになった。
ルイリは息を整え、門に向かって歩いた。
門には変わらず槍を持った兵士が二人立っていた。
その二人はルイリの完璧すぎる筋肉を見て一瞬動じたがそこは流石兵士なのだろう。すぐに戻りルイリに聞いた。
「お名前と、許可証を見せてください」
「ルイリ・エンジャー」
「許可証を」
ルイリは自身の名を名乗り許可証を出すそぶりをした。もちろんそんなものは持っていない。
「あれ、おっかしいな。すみません。どこかに落としてしまったみたいで」
えへへと笑いながら頭に手を置くルイリだが、想像してほしい。
筋肉の塊がそのような動作をしたところで可愛いわけがない。
兵士二人はこの筋肉の塊とどう接したらいいのかわからず、言葉を濁すしかなかった。
「申し訳ありませんが、許可証がないとここを通ることができない決まりでして」
そんなのわかってるわよ!と心中で思いつつどうしようかと必死で考えた。
ルイリはホウの匂いのほかに2つの匂いがあったことを思い出し、これならなんとかなるんじゃないかと切り出した。
「えーっと、多分数時間前ぐらいに全身黒っぽい人が運ばれてきたと思うんだけどそれは知ってますか」
兵士2人は顔を見合わせ答えた。
「ええ、知っています。それとあなたとどう関係があるのでしょうか」
片方の兵士が槍を少し動かした。
まずったかな、変に疑われてる気がしないでもないんだけど。
「知ってるなら話が早いわ。私はその人の家族で後で来いと2人に言われていたのよ」
「…そのような話は聞いていないのですが」
兵士たちが少し困惑してきたのをルイリは見逃さなかった。
「聞いていないの?まあその2人随分と適当そうだったから言ってないんじゃない」
「……わかりました。ご案内します」
兵士はもし何かあってもハンジュ様と、リュウ様が対処してくれるだろうと思った。
これは日頃の行いの結果である。