城壁
「一体何やったんや、あのトバッチリオン。急に突っ込んできやがって」
「まあ鳥類の考えることなんてわからんよ」
何があったのかというと、ハンジュがホウの後頭部を殴ろうと、殴り潰そうとした時上空から尋常ではない勢いでトバッチリオンが飛来してきて、
ホウの後頭部に直撃し、そのままどこかへ飛んで行ったのだ。
直撃したはずなのだがなぜかたんこぶだけが出来ただけであった。
ハンジュも目の前を通り過ぎるまで反応が出来ないぐらい速いスピードであったのに。
「まあなんや、運が良かったんやろ。ハンジュも手汚さずに済んで良かったんちゃうん」
「確かに抵抗しない人を殺すんもあれやからな」
リュウはニコニコしながらハンジュに近づいて言った。
「なあ、ハンジュ。うちに謝ること、あるんちゃうの」
変わらずの笑顔で、不気味なほどの張り付いた笑顔で続けた。
「あん時、もうやめやって止めたよなぁ。なんで無理やり続けようとするかな。あんたはすぐに頭に血ぃのぼって揉め事起こすんやから。あのなんやようわからん奴とも喧嘩せーへんかったらみつかることもなかったんやし。いっつもうちの言うこと聞かんと突っ走るし、なんでかな。あんたってそんな子やなかったはずやねんけど」
片手を頰において全くもうと言う感じで首を横に降りながらぐちぐちと言うのに対して
「いつ俺の親になったんやお前は」
と、ため息をつきながら冷静に突っ込むハンジュ。
「ため息ついてんちゃうぞ、おどれ。うちは真剣に怒っとんやで」
「んならいちいちツッコミどころをつくんなや。わけわからんねん」
「なんや!うちのことアホや言うんか!」
「いや、別になんも言うてへんやん」
「相手する気あらへんやろ!」
「それ言うてもうたらもう自分、ボケてますって言うてるのと一緒やで」
「違うわ!」
側から見れば口喧嘩しているように見えるが、基本的にこの二人は普段からこのようなノリなのである。
「まあそれはおいといて、早よ行こ。もうすぐ中央やしね」
「どの口が言うか…」
プロッグを抜けて、森を抜けた後ついに中央が見えてきた。
中央とは前にも説明したが、陸地続きの子の真ん中に位置するため中央と呼ばれているのである。
出入り口は一つしかなく、それ以外の場所は高さ10mの壁に覆われおり、周りには屈強な兵士たちが常時配備されており、侵入するのは困難である。
壁が低くないかと言われるかもしれないがその対策もきちんと出来ている。
壁がない周りには常時不可視の結界が張られており侵入者を感知できるようになっているだけでなく、その結界から中央へと入ったものは身体的ダメージはないのだが魔力を根こそぎ封印されてしまうのだ。何かしらの事故で上空から落下してしまいその結界を通ってしまった場合はその者が故意ではないと判断された場合に限り封印された魔力は返されるのである。
そんな厳重な中央に入れる人は、どこかの王族、貴族などの上級階級もちの人々と中央内で働いている人たち。
一般人は入場パスとなる許可書を持っていないと入れないのである。
また観光者にも人気があるためいつもなかは賑わっている。週に一回何かしらの行事があるぐらいに。
二人は門の前に着いた。
門の前には屈強そうな兵士が身長の倍ぐらいある槍を持って両端に立っていた。
「邪魔すんで」
ハンジュは臆することなく素通りしようとした。
それを兵士が通すわけがなく、ハンジュの前に槍を交差させた。
「ハンジュ様、IDをお願いします」
ハンジュはしかめっ面をして答えた。
「名前と顔一致してるんならIDもクソもないやろが」
「すいません。規則ですので」
「もー素直に出しいな。この時間がめんどくさいわ」
リュウは兵士にIDを出して門を通っていった。
続いてハンジュもめんどくさそうな顔をしながら渋々IDを出して門を通った。
「あ、そうそう。これあの酔っ払いに説明せなあかんからいつも会議するとこに置いといてくれ」
兵士に担いでいたホウを放り投げた。