寒いね
「ちょ、カス、カスハンジュ、やばい」
「おい、リュウ黙れ。んで、お前誰の事カス言うてんねん」
何にもわからないおれは素直に答えた。
「カス?いやだって、カスハンジュさんはカスハンジュじゃあないですか」
沈黙。
木の葉のざわめきさえ聞こえないほどの異常な沈黙。
おれの目の前にいる人が、カスハンジュの周りで蜃気楼のようなものがある。寒いから温めたのだろうか。
「よし、殺そう」
「はい?」
突然思いっきり突っ込んできたのだ。
「ちょっと!カスハンジュさん!」
「おれはハンジュや阿呆!死ねや」
そんな無茶を素直に聞き入れるわけもない。
おれは全神経を集中して突撃してくるカスハンジュ、いや、ハンジュを待ち構えた。
「おら!」
ハンジュは掛け声とともに強烈な右フックをうってきた。
まあ、当たりたくないおれは屈みこんで必死によけた。
「変な除け方すんな!」
おれは何故よけることができた?
さっきまで目が追い付かないくらいの速さで喧嘩していた人の攻撃を...
まさか!
「手加減してくれてるんですか!?」
再び沈黙。
今度はおれの呼吸する音しか聞こえない。
「ほんま、死ねや」
追撃が来る!
そう思ったおれは反射的に目をつぶった。
「ハンジュ。やめときなよ」
リュウの声が聞こえたと同時に衝撃が来た。
そっと目を開けるとそこにはカスハンジュの放ったパンチを片手で止めているリュウがいた。
「何や、リュウ。邪魔すんなや」
「そもそもうちがハンジュにカスをつけて呼んだからこうなったんや。こいつは悪くないやん」
「せやけどな、腹立ったもんはしゃーないやん」
頭を掻きながらリュウに近づく。
「せやからな、リュウ。もう一度言うで」
「何や」
言い終わったと同時にハンジュがリュウの前から消えた。
「邪魔すんなや」
おれの後ろから暗く低い声が聞こえたと同時に後頭部に鈍い痛みが走り意識が飛んだ。