寒さとは一体
「なあ、喧嘩なんてはよやめて、帰ろうや」
独特の発音、日本で言う関西弁に近い
ていうかまんま関西弁でフードをかぶっている女性だろうか、少ししか顔が見えていないため判別がつきにくい。
発言からするとどうやら中心で喧嘩をしている連れなのか、とてもめんどくさそうな顔をしてそう呟いていた。
「やかましい!こいつが喧嘩売ってきたんが悪いんや!もうちょいで終わるから待っとけ」
唐突に大きな声で中心から聞こえた。
さっきの呟きが聞こえていたのか?どんな聴力をしているんだ。
この罵声やら、歓声の中でどうやったら的確に一つののみを聴くことができるんだ。
おれはどんな奴か気になり、中心へと近づいた。
そこで見たものは、いや何も見えない。
小柄な男と、アメフト部のような体のがっしりした男というのがかろうじて見えた。
その二人が驚異のスピードで何かをしている。
おれはまったくもって何が起こっているかわからなかった。
「はよしねや」
小柄な男の方がそういったと思うと、急にアメフトが倒れた。
決着がついたのかやっとおれは小柄な男の姿を視認することができた。
「はあ、ここのやつにしてはやるやん。ええ線いっとったで」
「戦うの久方ぶりやから手加減の仕方わすれたんちゃう?」
「うわっ!」
いつの間にか後ろにいたフード野郎はなぜかおれをつかんで小柄な男の前へ連れて行こうとした。
「ちょっと、なにするんですか!」
「ええから、黙ってついてき」
男が、謎のフードに引っ張られている様はおかしいだろう。
「いや、離してくれませんか、何かしたら謝りますから」
「ええから、ついてき言うてるやん」
そう言ってフードから少しだけ見えた目はとてつもなく怒っているような、
もう蛇ににらまれたカエル状態になってしまう目を向けられたおれは即座に黙った
そいつは早足で小柄な男の方へと向かった。
「リュウ、だれやそれ」
リュウと呼ばれた性別不明のフード野郎は超不機嫌に答えた。
「あんたが喧嘩なんか始めるからなんか知らん奴に見つかってん」
ほんまいい加減にしてほしいわ、とぶつくさと言っている。
「いや見つかるって、隠れもしていないのにおかしいんじゃないですか」
「なに言うてるん君」
「何がでしょう」
「いやね、リュウが不可視の魔法つかっとたのになんで見えるわけないやん?」
「不可視...まさか!お風呂のぞけるんじゃ...できません、しません」
のぞくと言ったときリュウの目がまた射抜くようにおれを見たため全速力で否定した。
「ふむ、なかなかセンスあるな。とりあえず中央に連れて行くか」
「中央に行く予定やのに寄り道なんてするから厄介ごとに...カスハンジュめ」
「ぶつくさ言うな!不細工なるぞ!」
「ならんわ、アホ」
どうやら小柄な方がカスハンジュでフードがリュウという名前らしい。
「あの、カスハンジュさん、家に帰してくれませんかね」
するとなぜか二人が足を止めた。
いったい何事かとあたりをきょろきょろし、特に何もなさそうなので立ち止まった二人の方を見た。
リュウは肩を猛烈に震わしている、寒いのだろうか。
カスハンジュは髪の毛が逆立ち、揺れている。寒いのだろうか。