イベント
それからおれは外に出るための準備をさせられた。
皮のブーツに、ポーチ。
それに切れ味がよさそうなナイフを腰のベルトに装着された。
なんでナイフなんかがいるのかを尋ねたところ
弱そうだからいろんな人に狙われそう。
だそうだ。さすがに男としてどうなの?と思いつつもこの世界自体初めてなので仕方がないと思う
ことにした。
「それじゃあ出てくる」
「夕方までよ!」
玄関から外へ出たおれは目を疑った。
集落だと聞いていたからスラム街の様なところを連想していたのだが
全然そうじゃない。
どこかの市場のように活気づいていて賑やかだ。
周りには肉や魚、野菜までもが売ってある。
中にはいったい何が材料なのかわからない得体のしれないものもあるんだが。
「おい!そこの兄ちゃん。見かけない顔だな~。
どこから来たんだ?」
そう言ってきたのは得体のしれないものを売っているところの
強面のおっさんだ。
下手に説明すると何をされるかわかったもんじゃないので、本当のことも踏まえつつ無難な回答をした。
「えっと、つい昨日からルイリの所に世話になっているんだ」
「ルイリってあのルイリか?」
「そんなにルイリっているものなんですか?」
「いや、そうじゃねえんだが...兄ちゃんも中々やるじゃねえか。あんな美人さんと一つ屋根の下なんてよ」
このおっさんはいったい何を言っているのだろうか。
筋肉の固まりがなぜ美人に分類されるのか。
このおっさんがただ単に筋肉好きなのか?
それとも筋肉がついている奴が美しい基準なのか?
後者が正解だったらおれは不細工の部類に入ることになりそうだ
「まあ確かに顔は美人ですが...」
「なに、一緒に暮らしているのならいずれわかるこった!
ところで兄ちゃん、これ食ってみるか?」
そう言って手渡されたものは
この世とは思えないモザイクをかけるか迷ってしまうほどの気持ち悪さを誇っていた。
「えっと、これ、なに」
「それはな、ピュンチュラの一物だ。これがまた珍味でなあ、うまいんだぞ」
一物と聞いた時点でおれは食べるのをやめた。
確かに香ばしい匂いはしていて食べられなくもないかな、とか思っていたのに台無しだ。
「そう、ですね。ルイリにお土産にします」
するとおっちゃんはみるみる笑顔になって
嬉しそうに言った。
「グル・バーンがそれを渡したと伝えてくれよ!忘れんじゃねえぞ」
「わかりました」
そしてそこを後にしたおれは、まだ見て回ろうと思い、ピュンチュラの一物をもって前へと進んだ。
賑やかな市場を歩いていくと、何やら人だかりができていた。
何の見世物をやっているのか気になったおれは見に行くことにした。
「すいません、何してるんですか」
「見てわかんねえの?今派手に喧嘩してる二人組に対して賭けが始まってるんだ」
「なるほど」
どうやらこの人だかりの中心で喧嘩が始まっているらしい。
おれはこの世界の喧嘩がどんなものか知りたくて気になり中心へと向かった。
近づくにつれて歓声、罵声が大きくなってきた。
「おら!いけ!」
「お前に賭けてるんだから負けんじゃねーぞー!!」
うるさい、非常にうるさい。
ここら一帯がパーティーの様だ。
呑んでいる奴もいれば、助兵衛なやつ、金を投げてるやつ、喧嘩に混ざろうとしているバカなやつ。
色々いる中でもひときわ目立っている奴がいた。