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翡翠色の魔法師  作者: さくらもち
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もう1人の少女

ジャンルが恋愛になってました。

恋愛要素はありません。ごめんなさい

「起きてください、お嬢様!」


メイド達の声があちらこちらから聞こえてくる。

窓からはキラリと光った太陽が、顔を覗かせている。今日は雲1つないとてもいい天気だ。


ガチャ


ドアが空いた。メイド達が入ってきて服を渡す。春らしい薄い緑色の服だった。スカートにはたくさんのフリルが着いており、何とも可愛らしい印象だ。


「早く着替えをしなさい。」


少女はなんでもやりたがる。貴族なんか関係ない自分のできることはなんでもやる。と言う、貴族としてはかなり珍しい性格でもあった。


「お嬢様。早く準備をしてください。すぐに馬車で出発なんですよ。分かってますか、1週間後には魔法師試験があるんですよ。」


メイド達の小言なんてもう、聞き飽きていた。そんな堅苦しい生活から抜けだせると考えただけで楽しくなってくる。


「私は自分でできますから、出ていってくださる?すぐに準備してむかいますわ。」


少女は1人では大きすぎる程のベットから出て、着替えをすませた。廊下に飾ってある壺や名画、さすが貴族と思わせる物が沢山あった。が、そんな物に興味はない。足早にエントランスに向かった。

エントランスには屋敷中のメイド達、庭師、警備員、まだまだたくさんの人がいた。


「「「行ってらっしゃいませお嬢様!」」」


たくさんの人に見送られ、少女は屋敷を出た。

少女は馬車の中の数人のメイド達と、執事と、朝食をとる。

王都は遠い。ゆっくり馬車を走らせた。




道中の事だった。道で1人の少女が倒れていた。

苦しそうにしていた。それを見つけた貴族の少女はかけよった。メイド達はそれをよく思っていないようだった。1人のメイドがかけよった。


「お嬢様、こんなに汚い子触れては行けません。それに服もボロボロです。ほっときましょう、そのうち勝手に死にますよ。」


鈍い音がした貴族の少女は涙を流していた。


「なんて事を言っているの。この子も、魔法師試験に向かっている途中なんですのよ。なんてこと言ってますの、あなたをここで馬車から下ろすこともできますのよ。」


この少女がメイド達に手を上げたのは今まで1度もなかった。


「ですが、こんな子、、、」


もう一度そのメイドを睨みつけると少女は有無を言わさず、倒れていた少女を抱きかかえ、馬車に戻った。


「じぃ、あなたはどう思いますの。」


「この子はかなり弱っています。身なりからしてこの子は奴隷だったのではないかと、、、この子は魔法師試験を受けに行く所だったのでしょう。奴隷であろうと12歳の子が魔法師試験を受けるのは義務、国のルールなんですね。ですので、お嬢様の気持ちは尊重したいと思います。ですが、いいんですね。」


「ええ、ここでこの子を見捨てたら今後絶対に、後悔する。そんな気がしますの。」


それからは、その子を連れて馬車で王都に行くことになった。

助けられた少女は徐々に回復して行ったがまだ目を覚まさない。

もう、王都につく。かなりよく見えてきた。その時だった。

大量の猪の軍団が迫って来たのだった。猪と言っても殺人猪と言われているほどの猪だった。


「どうしてですの、ここ最近は静かにしていたはずですわ。」


馬車のメイド達も執事のじぃでさえも、対応に困っていた。そんなことをしているうちに数匹が突っ込んできた。間一髪で当たらなかった物の少しでも遅れていたら殺人猪の餌食になっていただろう。

全力で馬車を走らせても、王都まで45分ある。そのあいだ持ちこたえなければ、行けない。


絶対絶命の状況だった。


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